「万里たすけてピアス通らないしぬ」

 すぱーんと104号室のドアを開けると「あーはいはい」と万里が振り返る。十座は実家に帰省中だから、テーブルの方へ座り直す万里に突っ込む勢いで座って、握りしめてたピアスをテーブルに置いた。もうピアスなんて見たくない。万里の首元におでこを預けると、軽く叩くように万里の手がわたしの頭を撫でた。

「もうやだ」
「ゆらサンピアスくらいでほんとうける」
「いたくしないでね…」
「はいはいっと」

 元々髪は耳にかかってはいたけれど、改めて万里がわたしの左側の髪をかける。「何かしてれば?スマホいる?」差し出される万里のスマホに首を振る。

「そんなびびんなくても大丈夫だって言ってんのに」
「今日の万里はヘタクソかもしれないじゃん」
「はは、言うじゃん」

 わたしの肩を押して、万里の手が耳に触れる。痛がりのわたしが気にならないくらいの力で、そっとわたしのピアスの穴を確認する。きゅう、と目を瞑る。

「息止めんなって、子供じゃねんだから」

 言いしな、ちくっとした刺激。ぱちん、と耳元でした音は、痛みを伴わず消えていく。

「ハイ終わり。痛かった?」
「痛くなかった」

はあ、と息をついてまた、万里に身を預けた。もうお風呂を上がったのだろうか、香水じゃない万里のにおいがしてほっとする。万里はくつくつと笑いながら、宥めるように背中をぽんぽんと撫で続けてくれていて。

「どっちが年下か分かんねーな」
「気分いいくせに」

 下から覗き込むみたいに、万里の顎にキスをする。一瞬面食らったような顔をした万里はすっと表情を薄くして、わたしの唇に噛みついた。

「…なあ、痛いの忘れられること、する?」
「今日痛くしたら殴るけど」
「痛かったことねーだろ」

 簡単に抱き上げられて、唇を食べられる。わたしはもうとっくに耳の事なんて忘れてるけど、そんなことは万里だって分かってるだろう。与えられる熱を受け入れて、浮かされて、とびきりきもちよくしてくれなきゃだめなんだから。