「ゆら〜だるい〜癒して」
ゲームするっていうから、至のベッドの上を占領して読みかけの本を開いた。至と付き合ってから、雑音があっても本が読めるようになった。横で至がクソとか雑魚とか言ってても全然気にならない。だと、いう、のに。
開始数十分。コントローラーを放り投げたらしい至が思いっきり背中にのしかかってきて、うえ、って間抜けな声が出た。ベッドの上に投げ出してあったしおりを挟んで(水族館で至が買ってくれたやつ)頭突きしてやろうと頭を後ろにやったら避けられたうえにベッドの上にあった本をひょいと取り上げてサイドテーブルへやってしまった。こいつ。
「ゲームのしすぎでしょ!?」
「ん〜」
後ろに倒れてやろうとしたけど重たくて動けない。どうしようもなくて身じろぎしかできずにいたら腕の中でくるりと回されて、一瞬天地がわからなくなる。どさ、と頭の後ろから軋む音が聞こえて、目の前に至の顔。押し倒されたんだって分かったころにはもう遅い。ちらりとみたテレビ画面は息絶えて真っ暗だった。
「ゆら補充タ〜イム」
「コイン確定タイムみたいに言うなあ!」
必死に押し返そうとするのに重力も相まってわたしは動けない。脚をばたつかせても体をよじっても機嫌良さそうにキスをする至になんにも叶わない。雰囲気とかなんにもないけど、このひとする気満々ってこと?ほんと勝手!
「…っ、ん…っ!」
「はー、ゆら、いい匂い……」
「ん、ふ、至…」
「もっと充電させて」
前髪をかき分けて額にキスしながら、本の名残を求めて暴れる手をしっかり掴まれて、しっかりと指と指が絡んで。短く何度も触れてくる唇に、溶かされてしまいそう。唇が離れるたびに、うわごとみたいにわたしの名前が紡がれて、茹だってしまいそう。は、と息を大きく吐いたらこつりと額が合わさって、揃えるように視線も重なる。
「怒ってる?」
「……イベントは?」
「おしまい」
「……ふうん」
意地張っててもしょうがないか。わたしを伺う至の目の上でちらちらと揺れる睫毛目掛けて口を寄せて、そのまま唇にも触れる。口を離して目を合わせたらちょっとびっくりしてる至がいて、わたしは途端に楽しくなってしまう。ふ、と声を出して笑ったら、突然に口を深く塞がれて、不意に息ができなくなる。
「…、ったる、」
「…ほら、ちゃんと舌出して、ゆら」
ぐ、と顎を持ち上げられながら、唇がまた触れそうな距離で至がわらう。くらくらする。おずおずと舌先を出すと、食いつくようにキスされて、どんどん激しくなる。満足に息ができない、酸素がたりない。狭まった思考回路では、至のことしか考えられない。縋るように首に手を回した。距離が近づいて、ぼんやりした頭でも、ちゃんとほっとした。
「…本当、ゆらって可愛すぎて攻略しきれないかも」
もう、こんなに近くにいる至の声も聞こえない。