「ゆらちゃん、今日はオレと遊ぼうね」

咲也くんがしゃがんで、ゆらちゃんと目を合わせて、そう言います。きょとんと大きな目を丸めていたゆらちゃんは、それはそれは嬉しそうに笑いました。咲也くんもつられてにっこり笑います。

「何したい?」
「絵本!よんでほしい!」
「絵本?わかった!」

咲也くんは、自分の本を借りるときにゆらちゃんのための絵本も借りてきていました。「どれがいい?」差し出された絵本をううん、とくるくる見比べて、ゆらちゃんはぱっと顔を上げます。咲也くんは口元に笑みを浮かべてゆらちゃんの言葉を待ちます。

「ぜんぶ!」
「あはは!全部か!分かりました、どれからがいい?」
「さくがよみたいやつ!」

ゆらちゃんは咲也くんがよく本を読んでいるのを知っているので、咲也くんに選ばせてあげたのです。咲也くんはううん、と顎に手を当てて、シンデレラの本を選びました。



「ゆらちゃんもきっと、お姫様になれるよ」
「う?」
「シンデレラみたいに!」
「おひめさま…そしたら、さくはおうじさま?」

こてん、と首を傾げるゆらちゃんに、咲也くんは目をまあるくしました。

「もちろんです、姫。あなたのことは、オレがきっとお守りします」
「わあ!」

結局、咲也くんは借りてきた絵本を全部読み切ってしまいました。寝てしまったゆらちゃんをベッドに寝かせて頭をそうっと撫でると、幾分か表情が緩んだように見えて、咲也くんもそっと口元に笑みを浮かべます。今度はゆらちゃんも一緒に図書館に連れて行こうと決めたのでした。



咲也くんにべったりのまま、至さんと千景さんが帰ってくる時間です。ただいま、と至さんに抱きしめられ、千景さんに高い高いをしてもらったゆらちゃんは、にこにことふたりをお出迎えします。

「咲也に遊んでもらったの?」
「うん!さくは、ゆらのおうじさまなんだよー」

満面の笑みでそう言われた至さんは、ジャケットを脱いだ姿勢のままぴしりと固まりました。慌ててゆらの後ろにいる咲也くんに視線をやると、咲也くんは分かりやすくびくりと姿勢を正しました。その横で千景さんは至さんを見てふ、と笑います。

「さ、咲也……」
「ええ、あの、オレ、ごめんなさい…!」
「咲也にまで目くじら立てるとか大人げないな」
「俺のゆら…」
「あ、たゆ、うわぎー!」

至さんのジャケットは、ゆらちゃんにはとっても大きいですが、至さんが雑に脱ぎ捨てようとしたそれを、ゆらちゃんは両手をひろげてちょうだいしました。それを見た至さんは、たまらずゆらちゃんをもう一度抱きしめます。

「たゆ?」
「咲也が王子様なら俺は旦那さん…」
「なんか真澄みたいになってきたな」
「たゆ、つかれた?えらいえらい!」
「ゆら〜〜〜〜!」

至さんはゆらちゃんをぎゅ〜っと抱きしめました。もうすぐ寮は夕飯の時間です。