「ゆら、こっち向いて」

カシャ、と、部屋にシャッター音が響きます。カメラを向けられたことに気が付いたゆらちゃんは、にっこりと笑顔を作りました。カメラの音の犯人、真澄くんは、かわいい、と溶けるように表情を緩めて、もう一度シャッターを押しました。

「かわいい、ゆら、世界一かわいい」
「えへへー!」
「ゆら、俺のこと好き?」

すきー!とくるくる笑うゆらを、真澄くんは携帯を離さないまま見つめています。「俺も大好き」「へへー!」ふたりのやり取りを自分の机につきながら聞いていた綴くんは、「録画してるな、アレ…」と、横目で見ながら思ったのでした。真澄くんのフォルダはゆらちゃんがどんどん増えているようです。

真澄くんは動画撮影を終えたのか、ゆらちゃんを迎えるように手を広げます。ゆらちゃんは嬉しそうに真澄くんの腕の中に飛び込みました。

「はあ、あったかい」
「ましゅみ、さむいの?ぎゅうー!」
「かわいい……」
「きゃー!」

真澄くんはすりすりとゆらちゃんに頬擦りをします。綴くんは、ちらちらと真澄くんの様子を伺っています。

「今なら光源氏の気持ちが分かる。かわいい、大好き、ゆら。俺と結婚しよ」
「いや分かっちゃダメだろ!!」

とうとう耐え切れなくなった綴くんはタイピングをやめて立ち上がりました。ジト目の真澄くんに構わず、綴くんは「ゆらさ…ちゃん、おいで」と手を広げます。

「づゆ、だっこ?」

ゆらちゃんはぱあっと瞳を輝かせて嬉しそうに綴くんに駆け寄っていってしまって、真澄くんはしょんぼりと肩を落としました。綴くんは慣れた様子でゆらちゃんを抱き上げます。

「綴、返せ。今日は俺が当番」
「お前に任せてたらどうなるか不安すぎるんだよ!至さんに見られたらぶっ飛ばされるぞ!?」
「至なんて知らない。ゆらは俺の」

しばらく大声で喧嘩していると、ふたりのもとへ咲也くんとシトロンくんがやってきて、

「どうしたの?」
「ゆらの前で喧嘩良くないヨー!」
「けんか?ふたり、けんかしてるの?」

じわりと涙腺を崩したゆらちゃんに慌てた四人は、おとなしくおやつの時間にすることにしました。

その後、帰ってきた至さんが綴くんに詰めよって、言い淀む綴くんを問い詰めていると、「いたゆ、けんか?だめー!」とゆらちゃんが脚に抱き着いてめろめろになり、それを見ていた真澄くんとひと悶着ありましたとさ。