
至さんは困っていました。
ノールックで日課の周回をしながら悩んでいました。
ゆらちゃんは至さんの心知らず、お気に入りのウーパールーパーのぬいぐるみと遊んでいます。
常日頃、ゆらちゃんにめろめろな至さんですが、いざ担当となると、二人で一緒に何をしたらいいのかわかりません。何をしたら喜んでくれるのか、末っ子の至さんは、小さい子の扱いに慣れていないのでした。
「たゆ、だっこ!」
てとてととやって来たゆらちゃんは、ウーパールーパーを片手に手を広げてにっこりと笑います。きゅんと音を立てる胸をひとまず置いておいて、至さんは胡坐をかいた自分の脚の間にゆらちゃんを座らせました。きゃっきゃっと喜んで、ゆらちゃんはぬいぐるみで遊び始めました。
「……ゲームしてもいい?」
「いいよー!」
ゆらちゃんと二人でいる時のようにゲームをしていいか聞いてみると、ウーパールーパーに夢中のまま、ゆらちゃんはご機嫌な声色で言ってくれたので、至さんはとりあえずゲームを起動させました。だっこしたままゲーム機を持つと、ゆらちゃんからも画面が見えます。
「(マップどこ行こう)ゆら、どこ行きたい?」
「んうー?」
うぱちゃんどこがいいー?と無邪気にぬいぐるみ遊びをするゆらちゃんに二度目のきゅんを味わいながら、ここ!と指さされたマップを見て、至さんはむむっと眉をしかめます。普段あまり行かない比較的イージーなマップ。聞いてしまった手前、ゆらちゃんのご期待に添わないわけにはいきません。ゆらちゃんも楽しみにしているのか、至さんのゲーム画面を見つめています。
「じゃあ行きまーす」
「きゃあー!」
部屋にある音はカチャカチャと至さんのキー操作の音と、ゲームの音だけ。ひさびさだなーこのマップ、と思いつつサクサク進めつつ、ゆらはこれ見てて面白いのかなあ、と心配になってきたそのとき。
「は!?」
「ほあ!?」
「ご、ごめんゆら」
なんと、レアドロップ確定のボスキャラ登場です。加えてしかも、今至さんが欲していた素材を落とすボスキャラ。こんなイージーマップで、と動揺しつつ、至さんはさくさくっとそいつを倒しにかかります。倒し切って、俺の勝ちー、と言うと、ゆらちゃんはきゃあー、と喜んでくれます。至さんはゲーム機を投げ出して、ゆらちゃんを抱きしめました。
「たゆ?」
「ゆら、ほんとに俺の女神……」
すりすりと頬擦りすると、ゆらちゃんはまた笑います。ちゅ、とほっぺにキスをすると、ゆらちゃんもお返しに、同じところにちゅうっと口を押し付けてくれました。
「ありがとー、ゆら」
「あい!」
いつの間にか、どうしようかな、なんて悩む気持ちは、至さんの中から綺麗さっぱりなくなっていたのでした。