何度もいかせてあげる。

 主導権握ってみる?なんて。わたしが上だろうが動いてようが千景はいつだって余裕じゃないか。漏れる声がとめられなくて、おなかの奥をがつん、と突かれると、がくん、とからだが震えて力が抜ける。

「あ、あ…っ、ひ、」

 は、と息を吐いてゆるゆると腰を動かした後、千景が体を起こす。わたしのなかに入ったままのそれは硬さを失っていないまま。千景が動くせいでいったばかりのわたしはまた、ゆるい快感に襲われてしまう。

「や、や、うごかな、で、んあ…っ」

 ぐ、と向かい合うと、さっきと違う入りかたで、もっと奥に千景をかんじる。敏感なそこをまた緩やかに揺さぶられて、いきがくるしい。涙が出る。助けを乞うようにぎゅっと近くなった千景の首に手を回してすがりつくと、ぐ、と腰を深く入れられて余計に高い声が出た。

「ひう、けほ」
「……喉渇いた?」

 ぱさぱさの唇にからからの喉。一度意識すると、灼熱の砂漠にいるみたいな気分になってくる。皮膚同士がくっついたみたいな気持ち悪い感じに眉をしかめて、苦し紛れに舌で唇を舐めると、咎めるように千景の指先がわたしの唇を撫でる。

 ここから手を伸ばした範囲に飲み物の影はなさそうだし、と思って、少し安心する。千景は飲み物を取りに行ってくれそうだし、ちょっと、休める。こっそりと息をつくと、千景の手がしっかりとわたしの腰をつかんだ。

「…ちか?」
「捕まってて」
「待って、ちか、あ、あっ…!?」

 抱き上げられて、からだが浮く。さらに奥へ入り込む千景のものがおなかの奥を押し潰すように刺激して、油断していたわたしは大きな声で悲鳴をあげてしまう。そのままあろうことか、千景はキッチンの方へと歩いていく。動くたび、なかが深く擦れて目の前がちかちかする。

「…っは、あ、ひ…」

 千景に思いっきりしがみついて声を殺す。千景が冷蔵庫を開けている間も、小さく声が漏れ続けてしまう。

 冷たいシーツの上でからだを丸めて乱れた呼吸を整えようとしたのに、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターのキャップを開ける音がしたかと思うとそれを口に含んだ千景が口移しでわたしに飲ませてくる。
 飲ませてくれるだけならいいのに、口の中に含んだミネラルウォーターがなくなると舌を絡まされて、ぱさぱさになった唇に千景の熱い舌先がくすぐるように触れる。わたしの喉が潤うまでそれは何度も繰り返されて、キスの合間にも緩く突き上げられてくぐもった声が唇の隙間から漏れ出した。

「はっ、あ…や、」

 力の入らない手で千景の肩を押してみてもやっぱり押し返せはしなくて。手を取られて指先を舐められる。いった後も緩い快感を与え続けられたわたしのからだはもうどこに触れられても声が漏れてしまうくらいに敏感になってしまっていて、はずかしい。それを分かっているのか千景は緩く腰を動かしながらつうっと私の指先から手首、手首から腕の内側を舌で順になぞっていく。腕が、からだが、ぴくぴくと動くのが分かる。
 千景の舌が肩口まで辿りつくと、今度はそこから横に鎖骨に向かって舌が這う。鎖骨まで辿りついたら軽くそこを吸い上げてから今度は首筋の弱いところを舌でなぞられて背中がぞくぞくする。

「ひぁ、あ、ちかっ…」
「ゆら、可愛い」
「ふぅ、んんっ…!」

 深いキスにまた息がくるしくなる。…なのに、そのくるしささえ気持ち良さに千景は変えてしまってわたしは千景を求めるように自分からも舌を絡ませた。ぎゅっと千景の首に両腕を回してくっつくと胸の先が千景の胸板に当たる。ただ、当たっているだけなのに、そこからもあまく痺れるような感覚がきて、もう、頭が気持ち良さに支配されてしまっているような、委ねられているような感じに思える。
 わたしは千景の熱に、侵されてしまった。

「あ、っあ、ひぅ…あっあっ!」
「もっと聞かせて、ゆらの声」

 いつの間にか自分の両膝が顔のすぐ近くにあって、腰も背中も浮いていた。いくら千景が支えてくれているとはいえその不安定な体勢にわたしの手は必死にシーツを握りしめた。

「ゆら」
「あっ、ん、はっ…、」

 千景とつながっているその先に千景の顔がある。はずかしくてたまらないのに、千景の熱を帯びた瞳に吸い込まれるようにわたしは千景から視線をそらせない。
 千景の指が胸の先やつながっているその上にある芽を不規則にいじってくる。そのたび、からだが跳ねて、いってしまう直前まで意識を持っていかれる。

「やあ、ち、かっ、ちか、あ、あっ!」
「何度もいかせてあげるって言ったけど、簡単にいかせるとは言ってないよ」
「い、じわるし、な…でっ、ひ、あっ、ああっ!」

 そう言った矢先、千景はわたしをいかせた。なんて意地悪で、ずるい。翻弄されっぱなしでくやしい。
 つながったまま、浮かされていた腰も背中もやわらかなベッドに静かに下ろされて、その安心感からシーツを握っていた手から力がようやく抜けた。
 けれど、千景が動きをとめることはなくて。すぐにからだが震え出す。

「ひっ、あ、」
「まだ、終わらないよ」
「っ、あ、ああ…!」
「ん、いい声」

 両足を千景に抱きかかえられるように持たれて、足の裏側から千景の胸板の硬さや熱さが伝わってくる。時折足に千景の舌が這ったり、吸い上げられたりしてぞわぞわと足からつながっているそこにかけて何とも言えない感覚が走る。
 ぐっと寄せられた足のせいかさっきよりもおなかのなかが、くるしい。千景のがくるしくなったそこを行き来する。狭いなかを強引に押し広げられているような、感覚。

「ふ、くっ、あ、あっ」

 さっき潤ったはずの喉がまたからからになってきて、声が嗄れてくる。ミネラルウォーターがまだ残っているのか確認したいのに千景に揺さぶられて目の前が滲んでいく。目を閉じれば瞼の裏がちかちかと点滅を繰り返す。

「ひん、…あっ、あ、――ああっ!」



 それからわたしは何度も何度も千景の宣言通りにいかされた。最後の方はもう声が漏れ出して、それがどんどん嗄れていったことしか覚えていない。
 目が覚めたのは意識を手放してどのくらい経ってからなのか。ただ、冷たいミネラルウォーターを千景によってまた口移しで飲まされて目覚めたことだけははっきりとしている。…だって、わたしの嗄れた声を聞いて笑う千景がやけに嬉しそうで、その笑顔にわたしはぎゅっと胸の奥を熱くされてしまったから。

「本当に嗄れちゃったね、声」
「…嗄らせた本人がそれ言う?」

 ミネラルウォーターで冷たくなった唇が重なる。
 静かに熱が溶け合って、わたしはまた千景の熱に侵されていく。