ゆら先輩に押し倒されて鼻先にキスをされた。それだけでも正直びっくりしたのに、「ちがさき、すき…」という言葉をいつもの凛とした先輩の声じゃなくてどこか甘えるようなそんな声で言われたら目を見開かざるを得ない。
先輩が酔っているのは分かる。もしかしたらふわふわしすぎて夢を見ていると思っているのかもしれない。…けど、これは現実で、それを利用しようとしている俺は先輩に軽蔑されるかもしれない。
「ちがさき、」
じゃれるように瞼に、頬に、色んなところに落ちてくる先輩のキス。やわらかい唇の感触にはからずも高鳴る心臓。わずかに酒の香りがする吐息がかかる。もっと直接先輩のやわらかい唇を感じたくて腕を引っ張って片手を頬に添えて先輩の唇に自分の唇を押し当てた。すると先輩は「ちがさきのくちびる、やわらかくてきもちいい」とへにゃりと笑った。
そんなことを言えないようにしようと舌で唇を割って先輩の中にある舌を絡めとって、呼吸も奪うように少し乱暴なキスをした。
「ふ、んんぁ、…んっ、」
翻弄するつもりが積極的に舌を絡めてくる先輩。先輩の舌は酒を飲んだせいもあって熱くて、俺たちの唾液が混じって舌を絡めたり吸い上げたりするごとにちゅくちゅくと音が立つ。ああ、今ならさくらんぼの茎を舌で結べるかもしれない、なんて思うくらい先輩と俺の舌は複雑に絡み合いながらお互いの唾液を交換しあい混ぜあう。
口腔内を刺激されているのと先輩の舌が甘く感じるので唾液が次々と分泌されて飲み下しても口から零れて上を向いている俺の顎を唾液がつうっと重力に従って下へと伝っていく。
「ん、はぁ…もったいない…」
そう言って先輩は俺の顎に伝った唾液を舌で掬いとるように舐め上げてそのままこくりとそれを飲んだ。
「ふふ、ちがさきとのちゅー、きもちいい」
「じゃあもっとしますか?」
「うん、する」
二つ返事。先輩は俺のことかわいいって言ったけど、やっぱり先輩の方がかわいい。それに何だかうっとりしたような表情をしている先輩はなんだか色っぽくて、パンプスを脱ぎ捨てて上着を放り投げてベッドに飛び込んで少しだけ乱れたシャツのその下まで見たくなった。上半身を起こしてそっと先輩のシャツに手を伸ばせば先輩は不思議そうに首を傾げた。
「皺にならないようにシャツとか、脱いじゃいません?」
きっと今の先輩なら頷くだろうと思って言いながらボタンに手を伸ばす。華奢な肩をシャツ越しに改めて見るとああ、こんなに小さかったのかと感じた。先輩に指導してもらっている間にも夏場とかに見ていたはずなのに仕事場の先輩は堂々としているからかここまで小さいとは思わなかった。
シャツのボタンに手をかけるとそれを真似するように先輩も俺のシャツのボタンに手をかけて若干覚束ない手つきで外していく。お互いに最後までシャツのボタンを外し終わるとインナーが見えてきた。まだ、インナーなのになぜか妙にどきっとしてしまって少し手が止まる。そんな俺をよそに先輩はするすると俺からシャツもインナーも脱がしてしまう。
「ちがさき、細いけど筋肉あるんだ」
意外そうにそっと触れてくる先輩の指先は熱くて。それが酒のせいなのかどうかなんてもうどうでもいい。俺は、目の前の先輩がほしい。触れたい、もっと。
止まっていた手を動かし始めて先輩のシャツもインナーも脱がせた。かわいいブラと細い体のラインが露になった。ああ、かわいい。肌綺麗だな。触ったらやわらかいのかな。そんな感情がふつふつと湧き上がってきて、パンツのベルトにも手が伸びる。するとその手に先輩の手が重なって、先輩を見るとやわらかく笑ったまま「下は自分でぬぐ」とベッドから降りてカチャリとベルトを外す後ろ姿が目に入った。そんな先輩を視線の中に入れながら俺もベッドから降りてパンツと靴下を脱いで下着オンリーになった。
ベッドに戻ると下着姿の先輩。スーツの下にこんなに綺麗な体を隠していたのかと思った。
「先輩、かわいくて綺麗です」
「そうかなあ?ちょっと太った気がするんだけど…」
「そんなことないです。本当にそう思います」
頬に触れて軽く撫でると気持ちよさそうに目を細める先輩。こんな顔も出来るんだ。かわいくて頬を何度か撫でた後、指先を伸ばして唇に触れた。やわらかいそれはさっきのキスで湿っていて扇情的だった。
「約束通りキス、しましょうか」
「ん、」
目を閉じてキスしやすいように少し顎を上げた先輩。その唇に誘われるように唇を重ねた。わざと開けられた唇の隙間に遠慮なく舌を潜り込ませて、さっきみたいに舌を絡ませあう。先輩が気持ちいいって言ってくれたみたいに、俺も気持ちいい。ずっとこうしてキスしていたいくらい。
キスをしながら先輩の背中に手を回してブラのホックを外した。締めつけがなくなったそれは先輩の肌から離れて隙間が出来た。そっと脇腹から手を這わせて隠れていた胸に触れるとふにっ、と男にはないやわらかい感触が手にやってきた。やわやわと触れていると先端が少しずつ硬くなってきて合わさった唇の隙間からくぐもった声が聞こえて、先輩の手が俺の首に回る。ちゅっ、ちゅっ、と音を立てながらキスは続くのに体はさっきよりも近くにあって、触れる肌と肌同士が熱を上げていく。
先輩の硬くなった胸の先端をきゅっと摘まむと唇が少し離れて艶っぽい声が耳に届いた。
「あ、ちがさきっ…」
「かわいい声」
「ん、んっ…あ、はっ、」
乱れていく先輩がかわいくて、胸をいじる手が止まらない。胸だけじゃなくて鎖骨も、首筋も、背中も触れるとこ全部にぴくぴくと反応して甘い声を上げてくれる。
首に回った先輩の手を外して、肩からずり落ちたブラのストラップを腕から外してベッドの上にブラをぽいっと投げた。何の障壁もなくなった無防備なそこに口を近づけて、舌先で舐め上げる。
「ひゃんっ!」
「先輩、舐められる方が好きなんですか」
「ちが、さきの舌、あつくてっ…ぬるって、あ、あんっ」
「そんな声出されたらもっと聞きたくなります」
舐めて、舌先でそれを押して。口に含んで舌で包み込むように刺激したり。先輩の両胸の先端が俺の唾液で濡れきってしまうくらい夢中になって先輩のそれを刺激した。
「や、や、ちがさき…ふあ、」
「嫌なんですか?」
「わたしも、ちがさきに同じことする、」
「え?」
視線をあわせたと思ったら勢いよくキスをされてその勢いのまま、またベッドに背中を預けることになった。
とろんとしてるのに、どこかいたずらっ子みたいな目。そんな目をした先輩の唇は真っ直ぐに俺の胸に向かって、さっき俺が先輩にしたみたいに舌先でそこを舐め上げられた。熱い舌先が何度も這って、先輩の赤い舌先が視界に入る度に視線が奪われて脈が速くなる。心臓に近いそこにいる先輩にそれがばれないか少しひやっとなりながらも先輩がくれる気持ちよさにぴくっと体が動く。
先輩はそれが嬉しかったのか満足したように俺を見て笑う。視線が戻ったと思ったらそのまま下に向かって舌先が動く。細い指先でさっきまで舌を這わせていたとこを刺激しながら先輩が辿り着いたのは言うまでもなく興奮して立ち上がった俺のそこで。思わず先輩の手首を握った。
「ちがさき?」
不思議そうに俺に視線を向け直す先輩に「何をするつもりですか」なんて予想出来ることを聞いてしまうくらい俺は先輩の行動に翻弄されているみたいだ。
「ちがさきのこと、もっときもちよくしてあげたくなって」
「っ、それは…」
「…だめ?」
ねだるような言葉。職場で見てきた先輩、休憩中に見た先輩、愚痴を聞いてくれた先輩のどこでも聞いたことのない言葉に声。それに煽られるには十分すぎな視線。
返事が出来ないまま先輩の手首を掴んだ手の力が抜けて、するりとその手が俺の手の中からすり抜ける。自由になった手で先輩は俺の下着をゆっくりと下げて、そっとそれを両手で包み込むように優しく握った。
「…っ、先輩、」
「あついね、ちがさき…」
体の位置を俺の横にずらした先輩の横顔は色っぽくて、見惚れてしまいそうだ。
そっと握られたその先に赤い舌先が触れる。ちりちりと照りつけられているみたいに熱くて、情けない声が出そうになる。手で優しく擦り上げられながら舌先が絡んで、ゆっくりと先輩の口の中にそれが入れられる。あったかくて、やわらかい先輩の口の中でなぞられるようにそれが舌で刺激されてはぁ、と息が漏れる。けど、このままされっぱなしも悔しいわけで。先輩のショーツに手を伸ばしてその中へ指を潜り込ませた。
「んあ…!ち、がさ、ふ、あっ!」
「俺も先輩のこともっと気持ちよくしてあげたいんで」
「ひ、っ――、あ、あっ、!」
「だから先輩も気にせず続けてください」
そう言ってはみたけど実際余裕なんてなくて。持っていかれないように言葉を紡いで、先輩の中に潜り込ませた指を動かす。
「先輩の中、もうトロトロですね」
「ふぅ、んん…」
「負けず嫌いな先輩もかわいいです」
負けじと俺のを一生懸命に刺激してくる先輩はかわいくて、そんな先輩にまた胸の奥が熱くなって。
トロトロと溶けているそこに指を増やして弱いとこを探っていく。びくびくと腰が震えたとこを重点的に擦りながら小さく立ち上がった外にあるそこも同時に刺激する。ますますトロトロに溶けていく先輩の中は火傷しそうなくらい熱くなって、早く入り込みたいと思ってしまう。
「ショーツ、ぐちょぐちょになっちゃいましたね」
「っは、あ…んむっ、…ひああっ!」
「俺の指、ふやけてそう」
大きく声を上げた先輩。先輩の口と俺のが唾液で繋がっている様はなんていやらしいんだろう。どうして先輩はこんなにも俺を翻弄して、俺は余裕をなくすんだろう。…そんなの答えが出てるに決まってるのに、まだ言葉にするには勇気が足りなくてしまい込む。
「ちが、はぅ…さ、き、」
「なんですか、先輩?」
「こっちのひざ、た、てて、」
そう言って先輩は俺の左足に触れた。何をしたいのか分からなかったけど、とりあえず言われた通りに左膝を立てると先輩は膝立ちになって、中に入っていた俺の指を抜くとショーツも脱ぎ捨てて俺の左膝に掴まりながら俺を跨ぐようにして俺のそれに溶けきったそこを擦りつけながらゆっくりと腰を落としていく。
先輩の中に入っていく、というよりは先輩に飲み込まれてる、がしっくりくる光景。
「ぅ、…い、た…はっ、んあ…」
「(いた、い?)」
先輩は無意識に出した言葉かもしれないけど妙にそれが頭に残った。けど、先輩の動きは止まらず湿った音を立てながら俺の根本まで腰を下ろして、息を一度吐き出してから俺の膝を抱えながらいやらしく腰を揺さぶり始めた。ぐちゅ、ぐちゅ、と大きな水音が部屋に響く。それと同時に先輩の声も甘く大きく響いて耳がやばい。
指で探り当てた弱いとこを自分で擦り当てて、小さく立ち上がったそこも俺の足に時々ぐっと押し当ててる。
「はっ、先輩、やらしっ」
「あ、あ、だって、きもちいっ…ひ、あっ!」
「俺も、気持ちいいです、よ」
「ああっ、あ、ほん、とっ?」
「嘘はつきません」
「うれしっ、ん―っ、はあっ、あっ、」
きゅうっと絞めつけてくる先輩の中に反して先輩の動きが弱まっていく。ああ、気持ちよくて力が入らなくなってきたのかな、なんて都合のいい方に考えて上半身を起こす。そのせいかさっきよりも深く奥を刺激してしまったらしく先輩の声にならない声が表情に出た。口を開けたまま呼吸する先輩は金魚みたい。赤みを帯びた体が真っ赤な金魚を想像させる。ゆらゆらと揺れる体は尾ひれ。涙は空から降ってきた雨水。
ねぇ、先輩知ってます?低温で暮らす魚って人が触れたら火傷するんですって。俺たちを魚に例えるならその魚なのか、熱に比較的強い魚なのかどっちなんでしょうね。
「先輩ばかりに動いてもらうのはフェアじゃないので、交代」
「え?あ、ちがさっ…!ひあ!?あ、あっ――ひっ!」
「いい声…くせになりそう」
先輩をそのまま押し倒して、先輩の中を突き上げる。交差している足も濡れて滑りがよくなってる。
「ここ擦り上げながら、こっちも刺激されるの好きみたいですね」
「んあああっ!…あ、はっ…」
「あれ?先輩いっちゃいました?」
「や、っやだぁ、ちが、ひあ、おかしくっ、なる、」
「なっちゃえばいいじゃないですか、おかしく」
奥深くを突き上げながら近づいた唇にかぶりつく。とんとん、と奥をノックするように刺激しながら絡めあう舌はさらに熱くなっていて、溶けそう。
何度も何度も先輩を突き上げて、キスを繰り返して、肌と肌を密着させて。ああ、俺、先輩となら溶けちゃってもいいかも。そう思いながら強く先輩を求めて、一緒に汗を垂らしながらいった。
眠気に瞼が落とされる寸前、俺を翻弄した先輩の手に指を絡めてしっかり握った感触を確かめてから眠りについた。