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「何ニヤケてんの」
「チカゲッ……卯木先輩からライムきた」
「は?」
チカゲッティ先輩の本体(?)の眼鏡とおいしそうながナンとカレーが一緒に映った写真。『俺とカレー』とだけ送られてきた文面がじわじわくる。出先かな。LIMEの画面で送られてきたそれを、目の前で菓子パンを齧る茅ヶ崎に見せると、あからさまに眉間に皺を寄せた茅ヶ崎の顔は、初めて見たと過言ではないほどに歪んでいた。とりあえず先輩には『先輩の本体って眼鏡なんですか(笑)』と送って携帯の画面を暗くする。
目の前でコンビニのパンをかじっている同期・茅ヶ崎至は要領がよくて仕事ができて、すぐに皆に持て囃されたわたしの同期一番の有望株。わたしも仕事ができないわけではなかったけれど、茅ヶ崎のようにそうそう上手くはできなくて、ストレスやら重責やら、いろんなものに苛まれて文字通り泣きながら残業していたら、茅ヶ崎が助けてくれたのをきっかけに仲良くなって、今、時々一緒に昼食を取るくらいの関係になった。茅ヶ崎が重度のゲーマーであることも知っている。顔が良くて色んな女性社員からきゃあきゃあ言われてるような奴とつるんでいたら何かありそうなものだけれど、別にやましいことなんてなんにもないし。
そしてチカゲッティ先輩こと、卯木千景先輩。当社のエリート金を成らす木卯木とは彼のことだ。全部考えたのわたしだけど。海外を飛び回り利益を取りまくる敏腕エリート商社マンである彼と、たまたま話す機会があって、また、たまたまわたしの案件にアドバイスをくれて、たまたま、よく話しかけてくれるようになって。LIMEをするようになったきっかけとか、あだ名のこととか、色んなことあったなあ。
「先輩のこと名前で呼んでんの」
「い、いや…」
「なに」
「チカゲッティ先輩…」
「は……?」
茅ヶ崎が何言ってんのこいつ頭おかしいんじゃねえのみたいな顔をしながらわたしのお弁当箱のウインナーを手でつまむ。こいつすぐわたしのおかず取る。眉をひそめて、ティッシュを渡して。チョコのパンをちぎって無言で手をこっちにやるから、その手からそのまま口へ運ぶ。等価交換だからいつも許している。「なにそれくわしく」「話すと長い。めんどくさい」「ふざけんな」
「お前今日残業ある?」
「無いと思う。即帰る。寝たい」
「飲み行くぞ」
「ふざけんなゲームしてろ」
「俺の全持ち」
「……」
「あと何だっけ、服欲しいんだっけ?土曜なら車出してあげるけど?」
「……乗った」
決まりー、と何ともゆるい声のオフモード茅ヶ崎は、コーヒーを飲み干した後、唇をくっと曲げて、ミッションコンプリートとでも言うように携帯をいじり始めた。
+バラライカ『恋は焦らず』
ウォッカ+ホワイトキュラソー+レモンジュース