ちかは春組に後から入ったけど、寂しいなって思うことって、ないのかな。
あいたたた


「ゆらさん、起きてこないですね」
「珍しいな」
「起こしてくる」
「オー!マスミが行ったら帰って来ないこと請け負いネー!」
「請け合い、かな?」
「待て真澄。許すと思う?」
「至の許可なんていらない」

 鴇田ゆらの生活リズムはそこそこに一定だ。特に、休みで団員が揃っているとなると、喜々として起きてくることの方が多い。……はずなのだが、今日は珍しく、まだ談話室へと姿を見せてはいなかった。わいわいと盛り上がりを見せる春組の団員に引き寄せられたかのように、話題の渦中であるゆらは姿を現した。

「おはよう〜…」
「あ、おはようございます!」
「眠そうっすね?」

 真澄と至の小競り合いを横目に、綴が「何かあったんすか?」と首を傾げる。ゆらは、恥ずかしそうな顔ををして、「いやあ…」と歯切れ悪く答える。

「ふぅん、言えないようなことしてたの?」
「ひ!ち、ちがうよ!」

 千景がゆらの背後からぬっと顔を出し、ゆらはびくっと大袈裟なくらいに体を揺らす。力の入っていない拳で千景を小突いてから、千景が持ってきたゆらのカップをありがとう、と受け取って、ソファに掛けた。

「ゆらがこんなに寝てるなら俺も一緒に寝てればよかった」
「もう真澄どうしようもないんだけど」
「どうしたネ?昨日夜、遅くまで電気ついてたヨ」
「あは、ばれてた?」

 千景から受け取ったカップにふうふうと息を吹きかけながら、ゆらは笑う。「紅茶を冷ますアンタも可愛い…」うっとり呟く真澄を、ゆらはひとまず置いておく。

「実は眠れなくて、春組の公演DVDを観ていまして」
「そうだったんですか!」
「観てたら感動してきちゃってやめるにやめられなくて…」
「そう言えば、よく見ると目が腫れてるな」
「やだ見ないで千景さんのあほ!」

 おそらく両手で攻撃体制に移りたいのだろうが、片手にカップを持ったままでは危ないことは一目瞭然で、ゆらは千景から顔を背けるだけにとどめる。「泣いたの?俺が慰める。目が腫れててもアンタは可愛い」ゆらの横に座り直そうとする真澄の首根っこを、お兄ちゃん顔の綴が溜息交じりに掴んだ。

 ゆらが公演を観て泣くのはいつものことだし、春組となると尚更いつものことだ。

「どこまで観たの?」
「アリスまで……」
「じゃあぜんまいから皆で観るヨー!」
「げ、俺主演から!?」
「いいですね!」
「俺はあんたの隣」
「駄目だって」

 春組は今日も平和です。

「ぜんまい皆で観るなんてしんじゃうよぉ」
「号泣してるところが見られるかな?」
「ちか携帯貸して、没収」
「ゆらの涙は俺が拭く」
「駄目、真澄はあっちいけ」
「やれやれだわ…まじで…」
「楽しいネー!」
「そうですね!」