▽天馬
「テンテン」
わたしの声にちゃんと応えて振り返ってくれた天馬くんは、なんだか浮かない顔をしていた。
「ゆらさん、あの」
慣れ慣れしかったかな、そうだよね、皇天馬といえば今をときめく俳優さんで、一般人であるわたしが気軽にテンテンなんて呼んだらいけなかった。ずっとテンテンって読んでたの、申し訳なかったな。罪悪感の雲が心に掛かって、急に今までの自分が恥ずかしくなる。
「ごめん、えっと、…皇くん、」
「は!?いや、そうじゃなくて!」
そうじゃない、って言葉に首を傾げる。天馬くんの言葉を待っていると、居心地悪そうに目を逸らしたあと、口をもごもごさせている。天馬くんて自信に溢れてるイメージだから、こういう姿を見るとついついかわいいって思ってしまう。
「ゆらさん、呼び捨てしてる奴とかあだ名の奴がほとんどなのに、何で俺だけ一成の呼び方なのかなって思っただけで、」
慣れ慣れしいとか、そういう風に思ったわけじゃない。赤くなった顔をごまかすように口元を手の甲で隠す天馬くん。
「……かわいい、天馬くん」
「は!?」
「じゃあ、なんて呼んだらいい?なんて呼んでほしい?」
「……天馬で、いい」
少しだけ、悩む素振りをして。
手の甲を口元に押し付けたまま、わたしと目を合わさず小さな声で言う。ぎゅん、と心臓が縮むような感覚。
「テンテン、やっぱりかわいい!」
「は!?つーか呼び方戻ってるし!」
「ね、天馬、冷蔵庫のパピコ半分こしよ!」
「……おう」