「いつも先輩と一緒だから、たまにはふたりでしよ」

 声に弾かれて顔を上げる。その言葉を咀嚼して返事を返す前に、唇が塞がれた。出そうとした声は至の口に邪魔されてくぐもって消える。するりと指が絡まって、もう片方の手で腰を引き寄せられて、抵抗なんてできないまま、ひたすらに唇を奪われる。
 離されたときにはもう息は上がっていて、濡れた唇を親指で拭われる。指を伝う手の温度にすらぴくりと反応してしまって、ひとりでますます恥ずかしくなる。

「……嫌?」

 やわらかく微笑んで、鼻先にキスをする。そんなに優しくて、甘い顔をされて、嫌だ、なんて、言えるわけがない。至が甘え上手なのは、やっぱり弟属性のなせる技なのかな、ずるいな。そう思いながら、体重をかけてくる至への抵抗をゼロにした。





「ひゃ、んん、あうう、」

 首の弱いところや鎖骨に唇を沿わせながら、邪魔だとばかりにどんどん服を脱がされていく。「早くゆらの肌に触りたい」そんな殺し文句に固まっている間に露にされてしまった胸に跡を残されて、高い声が出る。

「い、いたる、」
「俺だけに集中してね、ゆら」

 口を覆おうとした手を取られて、指同士がしっかりと絡む。至の、細くてきれいだけどごつごつした手にぼんやり視点を合わせていると、ちゅう、と耳に吸いつかれた。口を鎖すための蓋を奪われたわたしは、声を隠すことができずに喉を震わせるしかない。

「ふあ、」
「ゆら、かわいい…」

 いつも優しくて甘い言葉をくれる至だけど、いつも以上に蕩かされそうな甘い声がダイレクトに耳に吹き込まれて、くらくらする。触れられる肌同士の熱で溶けそうだ。
 まつ毛が触れ合いそうな距離で愛おしげに名前を呼ばれて、くすぐったい愛の言葉が惜しみなく降らされて。ぼやけた視界の向こうに、ピンクを煮詰めた甘い瞳が見える。ぽろりと零れた涙は、柔らかい舌に攫われる。

「ん、ん、」

 体の脇を至の手が滑る。熱を上げようとするみたいに、くすぐったさを与えるような触れかたに、思わず体をよじる。腰が浮いているせいで突き出すようになってしまった両方の胸の先を、ぴん、と弾かれて、体が揺れた。

「あ、いやあ……!」
「かわいい、ゆら」
「んん、あ、あ、」

 胸を避けようとすれば腰に触れられて、背中を浮かせて逃げれば背筋を撫でられる。そのままあちこち触れられて、どんどん熱くなっていく。
 ぱくりと胸の先を口に含まれて、両手で腰を撫で上げられる。大きく上がった声に、至はかわいい、と耳元でつぶやいて、頭がぐらぐらする。

「……ゆら、気持ちい?」

 溶けてる、と。下へ伸びていたらしい至の手元から水音がする。やだ、と言う前に下着が外されて、ぐちゅん、と音を立てて、わたしのなかに指が入り込む。ぐっと指をおりたたむように曲げられた感覚がして、ぱちぱちと目の前が白くなった。

「ひ、っあああ…っ!」
「イけた?」
「や、やだあ、いたる、ひゃあ…っ!!」

 いったことは分かってるはずなのに、至は指を止めてくれない。それどころかますます至の指は暴れまわって、敏感な尖りを思い切り刺激する。勝手に腰が揺れて、声が押さえられない。

「あ、っあ、いた、る…!」

 とっくの昔に分かられているいいところを、擦られて、弾かれて、何度も何度も上り詰める。いじわるをされてるわけじゃない、わたしを伺う表情はやさしくて、絶頂の合間に囁かれる言葉だって溶かされそうに甘い。それなのに、絶え間なく与えられる快楽は怖いくらいわたしを追いつめて、がくがく体が震える。咎めるために腕に触れた指も、至の手と絡められて、胸板を押し返す手も簡単にいなされる。行き場のない過ぎた快感で涙が止まらなくて、時折それを舐め取る至の舌すらきもちよくて。

「やだ、きちゃう、いやあ…!」

 残りの力精一杯で暴れても、簡単に押さえこまれる。きもちいところを、いっぱいいっぱい擦られているのがわかる。助けを乞うように必死に手を伸ばすと、動けなくするみたいに思いっきり抱きしめられる。ちゅう、と濡れたキスが耳に聞こえる。

「…いっちゃえ、ゆら」

 きゅう、と自分のなかが締まったのがわかる。大きな声が止まらなくて、はずかしさときもちよさの境界が分からなくなる。体がうずく。お腹の奥がきゅんと揺らいで、自分の体が言うことを聞かなくなる、こんなのやだって思うのに、きもちよくてどうしようもなくて。

「潮吹いちゃうくらい気持ちよかった?」
「あ、あ……っ」
「泣かないの、可愛いよ」
「もうやだあ、いたる、ひあ…!」

 また至の指が押し入ってくる。わたしのなかを暴いてしまう。いやいやとかぶりを振っても、脚をばたつかせても、内ももを撫でられて力が抜ける。首筋を柔く食まれて、ふう、と吐息がかかるだけで、くらくらする。

「もっといっぱい気持ちよくなろうね、ゆら」
「やだ、あ、やめて、おねが、んああ…!」

 体重を移動させた至が、わたしの脚を簡単に開く。「だめ、」来るであろう快感を予期してきゅうっとお腹があつくなる。そんな間に至はわたしのそこに舌を当てて、きもちいいところを思いっきり吸い上げてしまった。

「や、ッあ、んあぁあ…っ」
「あついね、ゆら。とろとろだよ」
「や、ひんっ、しゃべらな、で、ふああ…!」
「ふふ、息がかかっただけですっごいびくびくしちゃってる。かわいい」

 わざとらしくふうっとそこに息を吹きかけて、がくがく揺れるわたしの脚、太腿に指を食い込ませたり、脚の付け根を爪で撫でたり。溶け切った体はその刺激ですら上り詰めてしまいそうで、もう息なんて絶え絶えで。

「おねが、いたる、むり…っ」
「かわいい、もっと聞かせて、見せて…」
「いた、る…っあ、〜〜ッ!」

 与えられる快感で目がちかちかする。至の熱い手が、舌が、体中をめぐって、どこをさわられても気持ちよくて。抵抗なんてさせてもらえなくて、ひたすら与えられる快感に喘いで、泣いて、何度も何度も、頭が真っ白になる感覚で体を震わせる以外にさせてもらえることなんてなかった。




「は、…っは、う…」

 いっぱい達してしまってもう、体に力なんて入らない。体中に至のしるしが散っていて、何もされていなくても体が揺れてしまう。至の汗ばんだ肌が触れるだけで、きもちいい、あったかい。至の息が上がっていて、至が興奮してくれてるんだって思うと、くらりと思考が揺れる。視線が絡んで、わたしに覆いかぶさった至がぺろりと自分の唇を舐める。色を帯びた仕草にぎゅう、とからだが縮こまる。同時にこのあとのことに思いが巡って、ふるりと首を振る。

「いたる、むり、だめ…」
「はは、かわいい」

 すり、と鼻先がくっついて、至がきれいにわらう。色めいて溶けた瞳がまっすぐ、わたしだけを見ていて。おねがい、と必死に縋っても、至は口元に笑みを浮かべて、宥めるみたいにわたしにキスをする。

「ここからが本番だから、頑張って」
「むり…っ!だめ、あ、ああ…っ!」

 優しいキスをもうひとつして、至はわたしのなかに入ってくる。溶け切ってしまったわたしのそこは、難なく至を受け入れる。わたしの腰はぞくぞく震えて、おかしくなっちゃうんじゃないかってくらいきもちよくて。声が止まらなくて、はくはくと酸素を求める口は至に塞がれて、わたしはますます酸欠にさせられる。必死に息をしようと口を開けると、ますます舌が深く絡んで、吸い上げられる。必死に応えているとそのままぐっと奥まで至が入ってきて、くぐもった悲鳴を上げた。

「ん…っくぅ、ん、あーっ!」
「…っは、きっつ…」
「あ、っは、おっき、い、だめ…っ」

 指とはちがう質量。あつくて、あつくて、おかしくなりそう。もうだめだって思うのに、わたしの体は欲に忠実に快感を拾う。至のきもちよさそうな顔をみて、たまらない気持ちになる。なんとか頭を持ち上げて、唇に軽く吸い付いてみる。まるくなる至の瞳を見ながら枕に頭を落とすと、呆れたように至が笑う。

「だめって言ってるくせに、そうやって誘って……」
「え? あ、んああ…っ!?」

 ぐ、と膝裏を持ち上げられて、もっともっと深く至になかを抉られる。体が浮くような快感に、必死に至に縋りつく。とん、とん、と確かめるように突き上げられるたび、閉じられない口から声が上がってしまう。

「ひ、あ、あ、いたる、いたる、」

 至のことしか考えられない。いつの間にか至の動きは激しくなっていて、がつがつ奥を穿たれて、荒い息を耳元で聞いて。逃がさないって言われるみたいに腰を引かれて、深く、ふかく。

「もう、やあ、いく…っ」
「……っ、は、」

 思い切り、がつん、と突かれて体が震える。逃げる腰をますます押し付けられて、ぞくぞくと肌が粟立つ。泣き叫ぶように声を上げる、全身から力が抜ける。額から汗が流れ落ちていって、ぼんやりと、伏せられた至のまつ毛を見つめる。

「ひ、っ」

 至の腰が動いて、こつん、と、また奥を刺激される。なんで、って声はもう出なくて、至を見上げると、色っぽい笑みが返ってくる。

「いた、るう」
「は、まだ俺いってないから頑張って、ゆら」
「う、そ、むり…っあ!」

 ふたりの体がシーツに沈む。至とわたしの境界がわからなくなるくらい、あつい。きもちいい。離して貰えないのなんて明白で、わたしももう、とっくに溶かされてしまっていて。くたくたの体を全部全部至に委ねて、預けた。