「わたしも監禁してください!」
「は?」
小動物が威嚇してるみたいな顔で突飛なことを言うから、頭大丈夫かな、と思った。
俺とざっくり30センチくらい差のある身長差で、俺を見上げて睨みつけている女の子は、自分が何を言っているのか分かっているのだろうか?とても、男に向かって言っていい言葉じゃない。そんなことくらいは分かる奴だって思ってたんだけど。
「あのさあ」
「別に千景さんに気があるとかじゃありませんから」
「はあ。じゃあ何?」
「長い時間を一緒にすれば、仲良くなれるかなって」
時間を共にしているのなんて、寮でだって同じだろうに。
ばっさりと強い語気で言われずとも、俺に気がないのなんて目を見ればわかる。足元でキャンキャン吠えてるちっちゃい犬を見下ろしてるみたいな気持ちになる。俺に敵意むき出しの癖に仲良くなりたい、って、相反しすぎてちょっと意味が分からない。しかも強気に俺を見上げる瞳には、俺を恐れてるみたいな色もあって、怖いならおとなしくしてればいいのに、と、思う。
「……気があるんじゃないなら、どうして俺と仲良くなる必要があるのかな」
「女の子が苦手って、そんな雑な括りで嫌われるの癪に障るんです、わたし」
く、と、顎を上げて。唇を尖らせて、じろりと俺を睨んでくる。負けず嫌い、と思って、言葉には出さないでおく。
「嫌いなら嫌いでいいですけど、それならちゃんとわたしを嫌ってください」
「……」
「それかもう、男の子って思ってもらうんでも構いません」
「……そこまでして、俺に構わなくたっていいだろ」
「面と向かって嫌い、なんて言われて、わたしだって千景さんのこと嫌いですけど、」
一瞬言い淀んで、唇を噛んで俯くのを、何も言わずに見ている。ぱっと顔を上げて上を向いた瞳は、強い光で満ちていて。
「大好きなカンパニーの一員で、大好きな春組の人なんだから、ちゃんと話したいし、向き合ってみたいって、思います」
言い逃げるように踵を返した彼女の背中を、なんとも言えない気持ちで見送った。ああいう真っ直ぐな物言いをする奴、苦手なんだけどな。やれやれと溜息をついて、どうしたものか考えた。