大切な幼馴染




美羽と玲央くんは小さい頃からずっと自分の体は普通だと思って過ごしてきた。
物心ついた時には病院に通うのが当たり前になっていて、主治医の先生は他の医者とは違い特殊な人だった。

初めて翼を出した時、力を使った時、先生や親に吃驚され、絶対に他人の前では出してはいけない、と言われた。
美羽も玲央くんもどうしてダメなのかわからなかったけど、親の言うことはちゃんと聞くようにした。


そして今日もいつも通り、検査を終えたので、玲央くんが終わるのを待っていた。
まだ時間もあるので、気分転換に屋上に行こうと決めて、ゆっくり歩き出した。
そっと扉を開けると時間的に人がいなかった。


「(あ、あのこ…)」


と思っていたら、よく病院の敷地で1人でサッカーボールを蹴って壁にぶつけたり、ドリブルをしている男の子がサッカーボールを持ってこちらに背を向ける形でフェンスにもたれかかり、空を眺めていた。

サッカー大好きなんだなあ

そんなことを考えながら自分の止まっていた足も動かす。

だんだん距離の縮まる男の子の後ろ姿を見ていると、一瞬風が強まり、男の子の体がふらついたかと思えば、手に持っていたサッカーボールが風のせいで手元からフェンス越しに落ちていった。男の子はそれを追いかけるように身を乗り出してしまい、そのまま…


「あ、」

「!危ない!!!」


無我夢中で翼を出し、男の子が落ちる前になんとか引き上げ屋上の地べたにお尻をついた。男の子の腕の中にはサッカーボールがある。

美羽の心臓はうるさいぐらいに音を立てて、彼を救えたことを実感すると、だんだん鼓動がゆっくりになっていく。


「…よかった、」

「ぼく、いま、いま、」


男の子は自分の身に起こるかもしれない未来を想像したのか顔色が悪くなり、微かに震えている。


「だいじょうぶだよ、こわくないよ」

「う、うう、」


男の子の近くに行き、背中をぽんぽんしてあげると美羽にぎゅううと抱きついてきた。

その時に出したままの翼に触れたのか、男の子はさっきの震えなどなかったかのように、翼に興味津々になってしまった。

お母さんとの約束が、

でも後悔はしていない。この男の子の命を救うことができたのだから。


「す、すごい!!翼!翼があるよ!」

「えへへ、美羽ね、ちょっと普通の人と違うんだ〜」

「ぼく初めて見た!すごいね!!」


まじまじ見られ、ツンツン触ってくる男の子になんだか照れくさくなる。

すると急にさっきのことを思い出したのか、ハッとなり美羽の手を握った。


「あ、あの!!さっきは助けてくれてありがとう!!!きみは命の恩人だよ!」

「そ、んなこと…、無事でよかったよ」

「ぼく、雨宮太陽っていうんだ」

「美羽はね、日向美羽だよ!」


オレンジ色の髪の毛が眩しいくらいに輝いている。


「美羽ちゃん!」

「雨宮くん」

「太陽でいいよ!美羽ちゃん!」

「太陽くん!」


名前を呼びあうだけなのに、幸せな気持ちになる。

そっか、美羽、玲央くん以外に仲のいい同年代の子がいなかったんだ。


「あ、あのね、太陽くん。美羽の体のこと誰にも言わないで、お願い」

「言っちゃダメなの?」

「うん、本当は誰にも言っちゃダメだよ、てお母さんに言われてたんだ。だからお願い!」

「うん!わかったよ!約束する!」

「あ、ありがとう!」


出会って間もない人のことなんて信じるのは難しいのかもしれない。でも、太陽くんはなんだか違うような気がした。絶対に守ってくれるって確信がなぜかあった。


「太陽くんサッカー好きなの?」

「うん!だいすきだよ!美羽ちゃんは?」

「美羽は少しだけやったことあるよ!」

「ええ!?ほんと!?」

「う、うん」

「なら一緒にやろうよ!」

「いいの、?」

「もちろん!」


美羽の大切なお友達、雨宮太陽くん。
この先も変わらないずっとずっと大事な1番なお友達。







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美羽ちゃんは小さい頃は一人称は私じゃなくて美羽と呼んでいた、て設定。
太陽のことは剣城とは別の特別な存在。
太陽と一緒にサッカーをしていたからきっと普通の人よりは上手なはず。