「僕もそう思います。あの程度の雑魚相手に剛陣先輩のファイアレモネードを使うのは勿体無いです」
ドキッと心臓が一度だけ高く跳ねた。
「野坂!」
「面倒な奴が帰ってきたぜ」
イナズマジャパンのユニフォームにジャージを羽織り、ここにいるということは、手術は無事成功しリハビリも終えて戻ってきたわけだ。
「あのー、名前ちゃん?」
「何?」
「なんで私盾にされてるのかなー、て」
「お願いつくし黙って守って」
「どうしちゃったの!」
「この試合終わるまで、いや、後半始まるまででいいから!!」
「えええ、野坂くんに挨拶行かなくていいの?」
「その彼が原因なの」
え?とつくしが声を漏らしたと同時に「名前さん」と私の名前を呼ぶ声に体がピクリと反応した。つくしの背中に隠れて顔を埋めてたため、こっちに近付いてたのに気付かなかった。
「つくしさん、後ろの人に用事があるんだ」
「はいはーい!どうぞどうぞ!!」
「ありがとう」
「つくし!!?」
いい笑顔で背中の私をベリッとはがし、おそらく前にいるであろう野坂の元へ肩を掴まれて突き飛ばされた。いや、つくしなんて凶暴になったの…
前に倒れかける体をもつれかけた足で、なんとか踏み止まろうとしたが、肩を掴まれた。あれなんかこのパターン体験したな。
「名前さん」
「野坂、」
「約束通り戻ってきたよ」
「ん、おかえり」
「ただいま」
脳腫瘍と言われて、手術ギリギリになったけど、無事で本当に良かった。
目の前にいる野坂や、ただいまの言葉に胸が熱くなるのを感じる。戻ってきたんだ、本当に。
目の奥も少し熱くなってきて、少しだけ歪んだ景色の中で、野坂が優しく微笑み、だんだんと綺麗な顔が近付いてきている気がする。
…ん?
「っちょ、」
「あれ?がんばったご褒美は?」
「ご褒美?…がんばったね」
肩を掴んでいる手をやんわり解いて、私より少しだけ背の高い野坂の頭を撫でる。
彼は目を丸くしたが、すぐに目を閉じて気持ちよさそうに微笑んだ。
猫みたい…
「見送りの時みたいにキスで良かったのに」
なんてほのぼのした雰囲気は、野坂の一言で潰れてしまった。撫でていた手に変に力が入り止まってしまった。
野坂が帰ってきたことで喜び騒いでいたチームメイトもちゃっかり耳を立てていたのか、シーンとなってしまった。
「ぬええ!?ちょ、しー!!!」
頭を撫でていた手で野坂の口を塞ぐが、彼は首を傾げて自分の発言の重大さに気付いていないようだ。
こらつくし、顔を赤くして喜ばない。
マウストゥーマウスのキスなんてしてないから。
「おいゴラァ!キスってなんだ名前!!」
「野坂貴様ァ、俺の目が届かない時に名前に何しやがった!」
「おま、名前!キスってどういうことだ!」
「野坂さん…、やっぱりあの時」
ヒロト、灰崎、風丸が私たちに迫ってきて、西蔭が見送り時同様呆れたように私達を見てくる。
明日人と氷裏と坂野上と岩戸の純粋メンバーは顔を赤くしながら突っ立ってるし、剛陣と万作と砂木沼は少し赤らめながら視線をずらしている。
一星なんて目と口が開いちゃってるし。
豪炎寺からの無言の圧が1番怖い。
やめて誤解だから何もしてない!してないことはないけど!不可抗力だから!!
明王ちゃんが少し離れたところでニヤニヤしてるのが許せない。癒しである守もこの場にいないのが悲しくなってきた。
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