陽毬と黒子
「んぁ?…くーちゃん!おはよ〜」
「おはようございます、陽毬さん」
「朝練お疲れ様、ほい、糖分」
「いつもくれるのは有り難いですけど、持ち歩いてるんですか?」
「まーね、くーちゃん最近楽しそうだし糖分しっかりとってもらわなきゃ」
「楽しそう?」
「ん!一軍に入れたって報告してくれたしょ?練習は大変そうだけど、なんかねー、今が楽しいって伝わるよ〜」
「そうですね。辛いことも多いですけど、バスケ、楽しいので」
「ふはっ、いつまでもそのくーちゃんでいてね」
陽毬とさつき
「ひまりん!」
「やほ〜さつき」
「おはよ〜!今日も眠そうだね」
「そかなあ?いつもと変わんないよ?」
「あ、テツくん!」
「お二人ともおはようございます」
陽毬とさつきと青峰
「(あ………、赤司だ。あの時以来見てなかったのに、)」
「ひ、ひまりん?」
「陽毬、おまえ…」
「…おっそいよ、ほんと」
「…よかったね」
「おら、泣くんじゃねえ」
「い、たい痛い、もっと優しくしてよ」
「大ちゃんにしては十分優しいよ」
「うるせ」
陽毬とさつきと青峰 2
「試合も終わったし、私たちは帰るけど…」
「ん、先帰ってて。あたしはくーちゃんに声かけてからかえるね」
「えっ!テツくんに!?わ、私も行こうかなあ」
「何言ってんだ、帰るぞさつき」
「ええぇ、ちょっと大ちゃん〜!」
「あたしは別にいいけど」
「陽毬」
「なあに?」
「一発打ってこい」
「!!もち〜」
「(…大ちゃんひまりんがテツくんに会うだけじゃない、何するかわかってたんだ、)あ、私もデータ纏めないといけないし、今日は帰るね!」
「帰っちゃうの?」
「ごめんね〜!また後で連絡する!」
「りょかーい」
「じゃあまたね!」
「じゃあな」
「ん〜、さつきも青峰もありがと」
陽毬と赤司
試合が終わったので、友達と駄弁って帰る準備をしたり、即帰ったりとスタジアム内の周りの様々な行動の中、一人座席に座り続けている陽毬。
「(くーちゃんに会うなんて二人には言ったけど、今部内で盛り上がってるだろうし)」
“一発打ってこい”
「(あの時、あたしから距離を置いたのに。何を今更…)」
“陽毬”
「(あ、だめだ泣きそう。あの時の赤司の声が、思い出の中の優しい声なのに、今現実であたしを呼んだみたいで、)」
「ほんと、馬鹿だなあ、」
「まったくだ」
顔を伏せていた陽毬の視界の端に、人の足が入ったことで顔を上げようとしたが、それより先に声が聞こえたので固まる陽毬。
「(…待って、聞き間違えるはずがないけど、観客席に残ってる人なんてちらほらいるぐらいで、選手はもう退場してるはず。ここにいるなんて考えられないのに、なんでいるの)」
「俺が君を見つけられないわけがないだろ?」
「……(やだなぁ、こんな言葉かけられて涙出るに決まってるよ)」
「…俺が好きと言った髪色を変えてまで、俺に会いたくなかったか?」
「そ、んなわけ!!」
前にいる赤司の言葉を聞いて、思わず否定しようと顔を上げた瞬間に腕を引かれ立つ状態にされて、ぎゅっと抱きしめられる。
「陽毬」
「っ赤司」
「どうして泣いてる?」
「…赤司が戻ってきたな、て思ったら、色々思い出して、勝手に離れたのにまた会いたいな、て思っちゃって、」
「そうか」
「…赤司は何でここに、」
「試合中に陽毬を見つけたからね。それに、ここにくる途中に青峰と桃井に会ったよ」
「二人に?」
「きっと待ってるからって桃井に言われてね、青峰にも何ほったらかしにしてんだって背中に喝を入れられたよ」
「さつき、青峰まで」
「あの時より仲良さげな陽毬と青峰を見て、不快感を感じた」
「………」
「そこは、陽毬の横は俺の場所なのに、なんて思ってるって言ったら?」
「、冗談でしょ。あたしから離れたんだよ、そんなの都合が良すぎる」
「それは良い答えとして受け取っていいかな?」
「なんで、あたしよりいい人なんて、」
「陽毬、君がいいんだ」
「っ、」
「今まで放っておいたのに自分勝手だと思ってる。それでも、俺は陽毬以外考えられない」
「…ばか。ばかばかばかし」
「俺が馬鹿なら陽毬もだね」
「……ごめんね」
「ん?」
「何もない」
「…陽毬、」
抱きしめていた腕を緩め腕を引き立たせる。陽毬の頬に手を当て目をじっと見つめ、もう片方は腰に添える。陽毬も、これは赤司なりのキスの合図だと知っているのでそっと目を閉じた瞬間、ぼそりと小さな声が。
「俺の方こそ申し訳ない」
「っえ、」
思わず目を開くと悲しそうな、それでいて最高に幸せそうな顔をした赤司がいて、陽毬も自然と頬が緩んだ瞬間、重なり合う唇。
少しして離れると、またぎゅっと抱きしめた。
「好きだ」
「あたしも好きだよ」
「〜っ!!ひまりんっ!よかったね!!」
「ぅえ、さつき?帰ったんじゃ、」
「赤司くんとすれ違ったのに気になって帰れなかったよ〜!」
「陽毬っちー!赤司っちと仲直りしたってことは、また元の髪色に戻すんスか?」
「まったく、二人とも遠回りしすぎなのだよ」
「俺の大好きな二人が戻ってよかった〜」
「赤司くん、良かったですね。陽毬さんが赤司くんのになるのは少し寂しいですけど」
「陽毬、赤司にすることがあんだろ?」
「てかまさかのみんな居てびっくりなんだけど。それに全員一気に喋ったからよく聞こえなかったけど、まあ、青峰の言ったことはわかったよ」
「おら、赤司を驚かせてやれ」
「ん〜!」
みんなの登場に少し緩んだ赤司の腕から抜け出す陽毬。
「陽毬?」
「赤司、歯食いしばって目瞑って、ほっぺこっち向けて」
「うわ、ビンタっすか…」
「キーちゃんしー!」
「……仕方ないな」
赤司は思いっきりビンタされる事を想像し普段なら拒否するが、いろんなことがあって、それでも最終的に戻ってきてくれた陽毬には逆らうことができず、言われた通り目を瞑り頬を陽毬の方に向けた。
そこからの光景は赤司にはわからなかった為、近づいた温度は陽毬の右手のものだと勘違いしたが、キセキやさつきは驚いたように陽毬を見た。
「ありがと、赤司」
赤司にしか聞こえない声で耳元で呟いた後に、感じた頬への柔らかさと温もりに、赤司は思わず目を開ける。
ポカンとした赤司を見た陽毬は、にぱっと照れながら笑った後に、ぼうっとしているさつきの手を引いて会場の出口に走り去った。
「…青峰くんの言ってたことはこれですか」
「いや。俺は一発打って驚かせてやれと」
「まあ、ある意味驚いてるっちゃ驚いてるっすね」
「赤ちんのこんな顔初めて見た〜」
「陽毬も場所を考えてほしいのだよ」
「そして陽毬さんは思った以上に恥ずかしかったのか、逃げましたね、桃井さん巻き込んで」
「さつきは陽毬と一緒なら嬉しいんじゃねーか」
「陽毬っちのあんなに幸せそうな顔、初めて見たっす」
「だね〜。お祝いにお菓子でもあげよーっと」
「…赤司、いつまで惚けている」
ずっとポカンとした顔で硬直したまま赤司。緑間に声をかけられてハッとし、陽毬の後を追うように走り出した。
その赤司を追うように、各々走り出す。
会場を出てすぐのところで、さつきと二人で居ると、追って走ってきた赤司に後ろから抱きしめられてあたふたする陽毬。
それを見て呆れる者が多数だが、最終的にはみんな微笑んで二人を見守っていた。
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