シャル様リクエスト
名前は一体何者なのだろうか。

飄々としているようで、芯の強い眼をしている。子供みたいなところもあるのに、傍に居ると安心する。こんな見ず知らずの子供を保護して、なおかつ頭がおかしいんじゃないかって話まで受け入れるお人好し。
そんなお人好しだから俺も落ち着いた生活をここで送ることが出来ているのだろう。

それにしても、このマンションに初めて連れて来られた時にはぐらかされてしまったが、名前は何者なのだろう。
出会ったときはピシッとしたパンツスーツのスタイルだった。ということは、どこかの会社員?いや、これだけの場所に住むということは経営者?
諸事情で暇を持て余す、名前は確かそう言っていた。会社員だろうが、経営者だろうが暇を持て余すことなどあるのだろうか?
大人になってもどれぐらい稼げることができるかなんて、職業によって違うし、勿論勤め先の会社の経営状況によって変わってくる。あらゆる可能性が考慮されるところではあるが、いまいちピンと来なかった。
毎日見ているからだろうか、とてもじゃないが名前がバリバリのキャリアウーマンには見えない。仕事ができなさそうという訳ではなく、大人しく仕事をしているイメージが無いと言えばいいのだろうか。

ごろり、とベッドに横たわると、ふわりと名前の香りがする。これだけで落ち着いてしまうのだから、自分でも随分と懐いたものだなと感心してしまう。
そう言えば、今日の帰りに酔っぱらいを、いとも簡単にねじ伏せていた。昼間にキックボクシングを習っていたと言っていたが、あの動きはそれとは違っていたように思えた。
あの僅か一瞬だけ見せた姿が、自分でもよく分からないが名前らしく思えた。正義感が強いのは分かっていたけれど、それに見合うような強さが名前には兼ね備えられていた。
不思議なことに、大人しくしている印象よりも、ああやって身体を動かしている方が合っていると思えた。
そうなると、何らかの体術の心得が合ってそれらを教えていると思ったほうがしっくりくる。暇を持て余すのは…講演会続きとかで休みが入ったとか…?それならスーツを着ていたのも納得がいく。
しかし、今巡らせている考えもストンと落ちてこない。一番最後のボタンだけ掛け間違えたような違和感があった。

いや待て、その線で行くとボディーガードやSPも考えられるんじゃないだろうか。
確か、駆けつけてきた警官から逃げるようにその場を離れていた。となると、SPという線は消える…。さっきまでの答えと違い、今度はストンとハマったのだ。

名前が秘密、と称し隠した正体。果たして合っているのかどうかは別として、本人に直接質問をしていいものなのか。
自分の性格上、一度気になったことはハッキリさせたいところではあるが、何となく…ただ何となく今はまだ聞くべきではないような気がした。

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