プレゼントに欲しいもの(キッド)


食堂で食事を取っていたキッドが向かいに座っていた高松に声をかけた。

「もうすぐクリスマスだな」

「ああ〜…クリスマス、そうですね」

キッドの言葉に思い出すように頷いたリンだったが、その様子に深い興味は見られない。
どうやらリンは、クリスマスに特別な感情は持っていないようだ。

「なんだよ。クリスマスって普通女は無条件で浮き足立つもんじゃねぇのかよ」

「クリスマスを祝う習慣がない所で育ったので、あんまり」

リンがこの船に乗って数ヶ月経つのにそういう事実を知らなかった。そういえばリンのことをは知らないことが多い。と、キッドは心の中で今まで自分から何も聞かなかったことを少し悔やんだ。

「一回もクリスマスっぽいことしたことはねぇのか」

「育った島を出てからのクリスマスは自分の家から街のイルミネーションが見えたので、それを楽しんでいましたよ」

そんな寂しい話にキッドはそれだけか。と、ため息を吐いて、その姿を見たリンは申し訳なさそうに頭を下げた。

「何か欲しいもんとかねぇか」

「今は、別に」

「クリスマスまでに、いや、クリスマス前までに何か考えておけ」

食事を終えたキッドが立ち上がろうとしたとき、リンが首を捻った。

「サンタからプレゼント貰えるのは、子どもだけですよね」

「あ?」

上げかけた腰をもう一度下ろして、気になったリンの言葉に耳を傾ける。

「今、なんて言った?」

「え、ですから、サンタは子どもにしかプレゼント配らないんですよね?」

「………」

一瞬冗談かと思ったキッドだが、リンの目を見て決してふざけているわけではないと悟る。

「リン、あのよ」

「私が何か欲しいと思っても、もう何も貰えませんよ」

「…そうだな。リンはもう大人だからな」

少し悩んだキッドは、リンの夢を壊さないことを選んだのだった。

「クリスマスはガキだけのイベントでもねぇんだ。お前も楽しめ」

「はあ…」

「サンタから何も貰ったことないお前に今年は俺がサンタの代わりになんかくれてやる」

それを聞いたリンは嬉しそうに手を叩いてはしゃぎだした。そしてそんなリンを見て自分の言ったことが気恥ずかしくなって、キッドは頭をガシガシと掻いた。

「やった! 私、何か考えておきます!」

「ああ」

「私もお頭に何かプレゼントしたいです!」

「俺はいい」

「私だけ貰うなんてできませんよー。お頭の欲しい物は何ですか?」

「…考えておく」

プレゼント交換なんてまるで恋人同士みたいだ。
なんて考えてしまったキッドは、頬を赤らめてそっぽを向いた。
向かいに座り、何がいいかな、何がいいかな。と、子どものように心躍らせるリンを横目に、キッドもリンから何を貰おうかと考えてみる。

「………リンがいい」

「え? 何か言いました?」

「何も言ってねえ!」

思い付いた極端な答えと、その答えが口から出してしまったことに一番驚いたのはキッドだったようで、リンの不思議そうな声に怒鳴り声で返事をして、さっさと食堂を出て行ってしまった。
リンがはっきりと聞こえていなかった事が救いだと、食堂の扉を出たところで安堵の息を吐き出した。



結局クリスマスは、変なキャラクターの着ぐるみを欲しがったリンに文句を言いながらそれをプレゼントしたキッド。
そして、素直にリンが欲しい。
とはやっぱり言えなかったキッドがお気に入りのお酒をプレゼントして貰っただけで終わってしまったのだった。

「お前、なんでそんなの欲しかったんだよ」

「暖かいんですよこれ!」

「そーかよ」



END

20111212

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