カフェテリアでラブドラマ(アキオ)


「ア・キ・オ・ちゃん」

一人でカフェテリアにいると急に耳元で妖しい声が響いた。
全身に鳥肌と寒気が走って、背中を震わせていると、声の主はいたずら成功とばかりに無邪気に笑っていた。

「りん…耳元で喋るのやめなさい」

少し低めの声で言えばりんは、反省したのかしてないのかゴメンと笑って私の向かいに座った。

「アキちゃんが一人って珍しくない?」

「そう?」

「アキちゃんの恋するあの子は?」

「…なあにそれ」

面白そうな顔を見せるりんが憎らしい。
そんなことを平気な顔で聞けちゃうのね。

「あの子はそんなんじゃないよ」

「そうなの? あんなに優しく接してたのに」

「あんなに?」

「頭撫でたりとか」

「それくらい普通にするでしょ」

当たり前のことだと言えばりんは不機嫌そうに横を向いた。
子供のように可愛らしいその行動に思わず苦笑がもれる。

「私にはあんなふうに優しく触ってくれた事ないのに」

独り言のように呟かれた言葉ははっきりと私の耳に入ってきた。
驚き言葉をなくしている私をどう思ったのか、りんは短く息を吐いたかと思うと席を立とうとした。

「待って」

そのりんの手を掴んで留めれば、意外そうに眉を動かして、それでもそのまま椅子に座りなおしてくれた。

「どうしたのアキちゃん」

「りんこっち、私の隣に来て」

「別にいいけど…どうして?」

「いいから早く」

私の隣の椅子を数回軽く叩けば、りんは不思議そうな表情のまま私の隣の椅子に座ろうと立ち上がった。
りんが完全に腰を下ろしたのを確認してりんの耳元に顔を近づける。

「なっ…ちょっとアキちゃん!?」

慌てて身を引こうとするりんの頭を抱えるように押さえると、りんのうろたえる声が腕の中から聞こえてきて優越感が湧いた。

「アキちゃん…離してっ」

「どうして?」

「どうしてって…アキちゃん急にどうしたの?」

「りんが言ったんじゃない。私に触れられたいって」

「ふ…触れられたいなんて言ってない」

「言ったでしょ? 全く…あんな可愛い事好きな子に言われて我慢できると思う?」

「好きな子って…アキちゃん、あの子のことが好きなんじゃないの?」

「あの子はそんなんじゃないってさっきも言った」

私の言葉に顔を赤くしたまま黙ってしまったりん。
どうしようかな。なんて考えていたときりんが動く気配がした。

「私もアキちゃん…好きだから」

遠慮がちに服を掴まれてそんなこと言われて、私の体はどんどん熱くなっていった。
ここがどこかとか、誰かに見られる、なんていう小さなことはどうでも良くなってしまって、私はりんの耳や頬に唇を寄せた。

それからしばらくして、私とりんの共通の友人に止められるまで私はりんを離せなかった。

破廉恥な事をした! なんてりんは動揺していたけれど、私は見せ付けることが出来て満足だったって言うのは、ひみつ。



END

20100627

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