不出来で上出来なウインク(ゾロ)
さっきからリンが、片目を何度も瞑ってる。
途中チョッパーに声をかけられて慌てたように首を横に振っていたから、目が痛いという訳じゃないみたいだ。
じゃあ、何をやってんだ?
「おい、リン」
俺は、我慢できずに声をかけた。
「あっゾロ」
「さっきから片目閉じたり両目閉じたり、楽しいのか?」
「見てたの!?」
「見てたって言うか、目についたんだよ」
「そんなのっ恥ずかしい!」
「そう言われても、ずっとやってたのはお前だからな。それよりも、それなんて遊びだ?」
「遊びじゃないよ」
むすりと、目に見えて不機嫌になったリンをあやすように頭の後ろから首にかけてを数回撫でると、耳まで赤くして俯いた。
「なにやってたんだ」
「………ウインクを」
「ウインク?」
「さっきね、ナミがパチッてウインクしたのが可愛かったから真似してみたんだけど、私ウインクが全然できなくて」
「練習してたのか?」
俺の質問に俯きながらも頷いたリンは明らかにしょんぼりしていた。
その様子が可愛くて、無理やり顔を上向きにさせると、リンは驚いた表情を見せる。
「ちょっとやってみろ」
そう言うと、最初はもごもごとやりたくなさそうに言い訳をしていたが、俺が離してやる気がないとわかると、しぶしぶさっきのウインクらしいものが始まった。
「おまえ、それ両目瞑ってるだろ」
「だってできないんだもん!」
「もんじゃねぇよ。可愛くねぇ」
「どうせかわいくないよ! だからナミみたいに可愛くウインクしたいなって思ったのに! 可愛くないのなんかゾロに言われなくたって知ってるよー」
怒鳴ったかと思うと、リンは俺の手を振り払って、顔を手で覆うとわっと泣き出した。
うえーうえー。とわかりやすくベソをかくリンに少し焦った。
「嘘だう・そ! 可愛いよ! 可愛い、リンは可愛い」
「うぞづぎー」
「嘘じゃねえって、リン可愛い」
何度も可愛いと言い続けて、頭を撫でると仕方なさそうに機嫌を直していった。
そっと顔を上げたリンの涙を無理矢理拭うと、リンは痛い痛いと、声を荒げた。
「リンはウインクなんてしなくても可愛いだろうが」
「ゾロも可愛いとか、そんなこと言うんだ」
「好きな女にはな」
「………」
俺の声に無反応なリンの耳に口を近づけて、息を吸った。
「好きな女にはなー!」
「うわっうるさいな! 耳元で大声出さないで!」
「お前が無視するからだろうが!」
「す、好きって急に言われたから、びっくりしたの!」
目を吊り上げて俺との距離を開けたリンは、熱を冷ますように手で顔を仰いだ。
そんなリンを黙って見てれば、次第にそわそわし始めて、仕舞いには俯きやがった。
「なんだ、怒ってんのかと思ったら、照れてるのか」
「照れてないよ」
「じゃあ顔上げろよ」
「や…やだ」
「俺に、その、可愛い顔を、みせてくれよ、リン」
強調するように言うと、リンは勢いよく顔を上げて、悔しそうに口をぱくぱくさせた。
本当に可愛いな。
「ゾ、ゾロ! なんだか変だよ」
「変じゃねえ。可愛いリンを見ていたいって、いっつも思ってんだよ」
「ほら、今日のゾロなんだかサンジくんみたい」
「ああ? あいつは女なら誰でもいいんだろ。俺はお前にしか言わねえよ」
「私が好きなの?」
「さっきからそう言ってるだろ。ウインクなんて出来なくても可愛いリンが好きだって」
俺の返事にまた黙り込んだリンにため息が出た。
リンが満更いやでもないことなんてこの反応見れば明らかなんだから、素直に言ってくれりゃあいいのによ。
「おい、お前も言え」
「な、にを」
「俺が好きだって言え」
「私がゾロを?」
「言えばキスしてやる」
「………別に、キスして欲しいから言うわけじゃない、けど…ゾロのこと、ずっと好きだった。今も、大好き」
「上出来」
リンの言葉に満足した俺は、そのまま唇に喰い付いた。
そのあと俺たちを見つけたコックの大騒ぎする声にしかたなく離れると、リンの溶けきった顔がそこにあった。
ああ、これはもう、我慢できねぇな。
END
20111113
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