月面特異点C.C.C.


カルデア内に鳴り響く警報は、緊急事態における召集を意味している。廊下で合流したマシュとともに管制室へ向かえば、ロマンを始め、カルデアスタッフの皆、ダヴィンチちゃんまでもが慌ただしく動いている。

「ドクター、この警報、何事ですか!?」

「マシュ!それに君も一緒か。良かった。」

指示を下したのだろうロマンの発言の区切りを見てマシュがそう問えば、ロマンはほんの少し安堵するような表情を浮かべる。

「微弱ながら、奇妙な……それでいて厄介な特異点の発生が確認されたんだ。」

「特異点……ですか。」

こういった事は、これまでも何度かある。ある時は女神の気紛れが。ある時は、異世界からの干渉が。今回も、事の始まりとしてはそんな"ひょんな事から"がきっかけであるという。

「どうも放っておけそうになくてね。君たちには悪いけど、今からそこへ向かって欲しい。その為に呼び出してしまった。」

区切りがついたのか、ダヴィンチちゃんも会話に混ざる。少し語気の強い言い方からすると、それなりに覚悟を必要としそうだ。強敵の予感、というより精神的な不安から、と言うべきか。いや、言わないでおこう。言ってしまえば現実になりかねない。

「それで、ドクター。場所は何処なんでしょう?」

「ああ、それなんだけど……落ち着いて聞いてくれるかな?月、なんだ。」

こほん、と咳払いを加え、ロマンはそう言った。

「月、ですか。まさかまたアルテミスさんが……」

「おいおい、前科があるとはいえ毎回オレ達が犯人だって決めつけるのは良くないぜ。」

「きゃー!庇ってくれるなんて、ダーリンかっこいー!」

「うぉおおお、わ、分かったから締めるな!落ち着け!」

どうやら、今回は彼らでは無さそうだ。アルテミスに握り締められ振り回されているオリオンがそれを示している。

「では、誰が……」

「とにもかくにも、行ってみるしかない。座標として捉えるのは至難の業だけど、まあ、なんとかなるだろう。」

(ん?)

そう言ってレイシフトの準備を始めるダヴィンチちゃんの台詞に引っ掛かるものかある。

「あの、その特異点って、月のどの辺りなんです?」

ロマンに向かってそう問えば、わざとらしく視線を逸らされる。ふつふつと沸き上がる嫌な予感。

「いや、その……信じられないかもしれないが素直に言うと、月の裏側なんだ。」

「へ?」

「ドクター、ふざけないで下さい。」

へらりと笑って言うロマンに、ピシャリとマシュが叱咤する。

「ほ、本当なんだって!僕だって月があんな風になっているとは思わなかったし、驚いたくらいだ。人理焼却の影響が他の天体にまで及んでいるとは考えにくいが、無視するのも考えものだろう?」

「ま、まあ、確かに放ってはおけない事ですけど……」

「じゃ、一つよろしく頼むよ!」

こうして、月面旅行ならぬ月へのレイシフトが決まった。


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