帰らぬ音


好きになってなど、いけなかった。分かっていたはずだ。線引きは確かにあった。目に見えて存在していたはずだ。

恋など、愛するなど、どうして許されよう。触れていたいと、傍に居たいと、尽きるまでの永遠が欲しいなどと、言える筈もないのに。


「好き」


その2文字であったなら、弁明も出来た。すき、と。その音であったなら。どんな意味にも取れたはずで、まだ救いがあった。


「すまない。」


想いを伝えた声に谺はなく、どうして、失う前に気付けなかったのだろう。


modoru