雄太が興奮しているのは明らかだった。咲はなだれ込むようにしながら、しかしあくまで雄太に押されてという風を装いつつベッドに身を投げ出した。ホテルのベッドのスプリングは上質なものを使っているのか、軋む音はしない。聞こえてくるのは目の前の雄太の荒い吐息だった。雄太は今、咲に興奮している。その証拠を、咲は体の中で受け入れることになる――。
 雄太が咲に覆い被さるようにして、咲の顔に手をやった。頬骨を掴んだ、と言った方がいいくらい乱暴な動きだった。勿論キスが紳士然であるはずもなく、雄太の舌は乱暴に咲の口内を犯す。口の中を暴れ回ったかと思えば、奥から順番に歯列をなぞる。咲が思わず唾液を飲み込んだ時、雄太が咲の舌を絡めとった。逃げることを許さないようにねっとりと絡みつくさまは蛇のようだった。舌が動くたびに、ざらついた表面がこすれ合う感覚がする。雄太の舌は無味無臭だが、咲は何か獣めいたものを想像した。肉厚な雄太の舌は、まさしく肉食獣のようだった。
 雄太は体に手を伸ばし、咲の服を脱がした。脱がしづらい服ではないだろうに、雄太の手はやや不器用に思えた。内からこみ上げる欲が雄太を急かしているのだろう。形だけ嫌がるそぶりをしながら、咲は雄太が触れるのを今か今かと待ち続ける。遂に下着も外されて裸になった時、雄太は喜ぶような表情を浮かべた。その顔を見ていたら、純情ぶるのも忘れて体を晒してしまった。
 雄太は胸に手をやり、乳房を両手で鷲掴みにする。今日初めて触れる咲の体の感触を確かめているようだった。やがて手がやわやわと動き出し、すぐにそれは乱暴な手つきへと変わる。雄太の手の中で、咲の乳房は何度も形を変える。女性を象徴する白くやわらかな乳房に少し日焼けした手が触れている光景が目に毒だった。雄太は下から乳房を持ち上げるようにした後、その頂に触れた。
 咲の乳首は既に勃っていた。しかしまだ柔らかさは残っていたようで、突かれれば簡単に形を変えてしまう。雄太は乳首を指でつまみ、上下に扱くようにした。まるで陰茎にする仕草だ。そうは思いつつも、咲の乳首はさらに硬くなってしまう。雄太は親指で乳首を右へ倒した。乳首は素直に横へ倒れる。すると次は左へ、また右へ、を繰り返す。倒されてはぴょこんと元に戻る乳首が面白いようだった。咲に羞恥が芽生えてきた頃、雄太は乳首を口に含んだ。雄太の舌がどのような動きをするのかは知っている。先程キスでされたように、咲の乳首は蹂躙された。赤子のように吸われたり、飴玉のように転がされたり、ペロペロと舐められたり。口を離した時、咲の乳首は唾液でテラテラと光っていた。雄太はそっと息を吹きかけてから、腹を撫でて手を陰部へ伸ばす。
 咲の陰部は既に濡れていた。雄太は陰核を探し当て、その上で円を描くように指を動かす。段々と咲の体が高まりかけてきた頃、雄太は陰核を強く押す。その勢いのままに、中指で何度も陰核を押しては離しを繰り返した。
「あぁっ!」
 咲の体が跳ねる。少し間を空けてから、雄太は膣に指を挿入した。咲の膣は雄太の指を迎え入れる準備ができており、中ではぎゅうと雄太の指を締め付けた。
 雄太は指を奥の方へ伸ばす。中で指を曲げてやると、咲が感じるのがわかった。そのまま愛液をかきだすように内壁を引っかく。ある一点で指の腹を押してやると、咲の体が反った。いい所だったのだ。雄太は静かに指を抜いて、ズボンから陰茎を取り出した。陰茎は扱く必要もないくらい勃起しており、先端は先走りで湿っていた。雄太はもどかしい思いで避妊具を着ける。既に雄太を期待して咲の膣はヒクヒクと動いている。そこに先端をあてがい、雄太は咲の膝裏を掴んだ。
「……っ!」
 圧迫されるのを感じ取りつつ、奥へ奥へと進める。雄太の陰茎を咲の膣は温かく包み込んだ。全て入れきってから、前後運動を始める。抜いて、入れて、抜いて、入れて。雄太が陰茎を入れようとするたびに、陰茎の出張った部分が咲の膣に触れる。咲はそれで感じている。雄太もまた、咲の膣に擦られることに快感を抱いていた。雄太は快感に夢中になって、少々無理をさせていたのかもしれない。恥骨は先程からぶつかり合っているし、あまりの激しさに咲の乳房はちぎれんばかりに揺れていた。その視覚情報がまた、雄太を急かすのだ。
 雄太は腰を掴み、陰茎の先で奥を突くようにした。弾力のある、しかし少し硬い感覚がして咲が嬌声を漏らす。咲の子宮はとっくにおりてきていた。攻撃するように突いていると、咲が体を跳ねさせる。その膣のうねりに果てそうになるのを一度我慢し、律動をもう一度再開した。今度は自分が果てるためだけの、緩慢な動きで。
 雄太は腰を前に出したまま動きを止める。絶頂だった。避妊具の中で、精液が放出されている。雄太は長い射精の間、ただじっと目を瞑っていた。それを咲に見られているとも知らずに。
 頬に触れられる感覚がして目を開ける。視界には、笑っている女が一人。
「よかったよ」
 雄太が女だったら、今の光景で膣を締めつけていたことだろう。しかし雄太は男であるし、既に陰茎は抜かれている。「ふうん」と何でもないふりをして、雄太は数枚ティッシュをとった。

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