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午後は、三年の合同実習で町に出ることになっていた。
女装の授業だというが、桜は元々女なので、ただ単に化粧をしてより女らしく見えればいいのか、先生に聞きに行ってみた。
すると、お前は男装して来いと言われてしまったので、くの一教室で使っているという男装用のかつらや服や履き物を、いくつか借りて来てみた。

男装といっても、この時代はどうしていいかわからなかったので、同じクラスの二人に相談してみることにした。
彼らは着替えも化粧も終わっていて、一瞬、くの一の長屋に戻って来てしまったかと思うくらい、可愛らしい二人がそこにいた。
しかし、三年生ともなると慣れているのだろうが、女装でそこまで可愛くなられてしまうと、女である自
分としては些か複雑になる。
彼らのほうが可愛いのは一目瞭然ではあるが、きっとそう言われたら、しばらく立ち直れそうもなかった。

「桜は、明るい色の髪も似合うんじゃないか」
そう言って浦風が真っ先に手に取ったのは、柔らかく波を打っている栗色のかつらで、手慣れたように桜に被せると、満足そうにうなずく。
髷は三反田が結ってくれ、それから服も選んでくれる。
「下に厚手の肩衣を着れば、柔らかい色の上衣でも大丈夫だよね」
そんなふうに言いながら、三反田に肩衣を含め、袴まで渡され、桜はそれにさっさと着替えた。

袴の身に付け方は漫画で見て知っていたので、聞く必要もなく、ただ全体的に崩れていたのか、三反田に細かいところは直してもらった。
「四幅袴にすればよかったんじゃないか」
いくつか持って来た中には、ちゃんと四幅袴もあったので浦風が冗談混じりにそう言うが、桜は苦笑しか出て来ない。
「さすがに、それは短すぎて履く勇気ないわ……」
スカートとかなら気にならないが、袴は恥ずかしく思えるし、それにその四幅袴は三年生で履いている人を見たことがないので、彼らより年上で背が高い桜としては、その長さはやはり気が引けた。

一旦、二人と別れ、桜は自分の部屋に忘れた忍たまの友を取りに行って来てから、また正門で集合することになった。
そのときには、い組の伊賀崎たちも合流するだろうと言っていたので、彼らの女装姿はどんな感じかなと思いを馳せつつ、桜は男っぽい歩き方というのに没頭していた。
とはいっても、歩き方自体は普通だし、この時代の人と違い、桜は少し歩幅を大きめにしてスタスタ歩くのは慣れているので、それだけで女らしくない
と見えるようだった。

ふと見れば、前方から鉢屋と竹谷の二人が歩いてくるのが見え、桜は内心あわてた。
竹谷はともかくとして、鉢屋は変装を得意としているので、言葉を交わしたら、一発で正体がバレてしまいそうだった。


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