12
「ちっ‥‥数が多すぎる」
今日も学校が終わりみんなが寝静まった頃任務が始まる。
いっぱい人を殺した。どんなにアリスを使って殺しても、次から次へと敵が現れてくる。そんな状況に日向くんは舌打ちをした。
任務に就く前にペルソナに聞いていた敵組織の人数より、遥かに多い。
僕も日向くんも身体中傷だらけで、アリスの使いすぎでどちらも、体力が残ってなかった。
「ごほっ‥‥ごほごほっ‥‥」
「日向、くん?」
僕の後ろにいた日向くんが、突然咳込み出し膝をつく。その事に気付き振り向けば、口を覆った掌から赤い液体が流れていたのが目に入った。
「あ‥‥」
『天音 隆道は“アリスに底がない代わりに本人の寿命を縮める”アリスの形だということを、知らないんだね』
初めてペルソナに出会った時に言われたあの言葉が、頭をよぎる。
「ひゅ、ひゅうが‥‥?」
その光景は、爺様が倒れた時とどこか重なって見えた。
なにか、発作のような症状。
慌てて日向くんに駆け寄る。同じように膝をつき、ただあたふたと彼の背中をさすることしかできずにいた。敵に囲まれる中炎の壁を作ってなんとか凌ぐ。
こんな時、どうしたらいいのか分からない‥‥。自分の無知さに下唇を強く噛む。
「ごほ‥‥ハァハァッ‥‥」
炎の壁の熱が日向くんの体力をどんどん奪っていく。
「あとは僕がやるから、先にペルソナのところに‥‥」
移動用にとペルソナから事前に渡されていた瞬間移動のアリス石を棗に渡すため、僕の首からぶら下がるネックレスを外そうとする。
「ハァハァッ‥‥いらねぇ‥‥」
僕の腕をつかみ、動きを止める。
このまま彼をひとりでペルソナの元に行かせてしまったら任務でヘマをしたと思われて罰則対象になってしまう。もう、火の壁も保てない‥‥。
「‥‥なら、僕の後ろにいて」
苦しそうな彼を背に、紅い炎が全身を包んだ。
そこからは、日向くんを庇いながらたくさんのアリスを使った。僕はボロボロのまま、気を失った日向くんを連れて学園に帰った時はもう深夜だった。
沢山の流れ弾を掠めた身体は至る所から血が流れていた。
「ハァッ‥‥ハァッ‥‥」
気を失っている彼を犬神に変化した自分の背中に乗せ、ふらつく足取りで北の森の湖へ走る。
ドサッ
「ハァハァッ‥‥」
湖の畔まできて彼を背中から降ろし変化解く。
「水龍ッ‥‥」
ぱん
水を司る 水龍。
僕のアリスは変化しかできない。けど、相性の良い妖とはその妖の力を微力ながら使うことができる。相性が悪ければ疲れるし、ひどい時は高熱を出す。
僕と水龍の力との相性はとても悪い。
けど、自分のことよりも彼の事の方が何倍も苦しんでいる。
「ハァハァッ、治癒の力を‥‥ッ」
湖の水が勢いよく彼の全身をシャボン玉の様に包み込んでいく。僕のこの体がもつ間に、とアリスの力を集中させていく。
シュゥウウウ‥‥
シャボン玉が徐々に消え、彼を包んでいた水たちが湖に戻っていた。外傷は全て治療が完了しキズはなくなっていた。
「‥‥ンッ」
「日向くんッ!!!」
意識を取り戻した彼が瞼をゆっくりと開き僕を見た。
「おまえ、‥‥」
「外傷しか、治せなくてッ‥‥ハァハァッ」
「ばかッ、俺より先に自分の傷を治せッ!!」
僕のの傷を見て彼は怒鳴ってきた。
水龍の力は自分自身の治癒はできない。誰かの為にしか使えれない力だった。
「僕は 大丈夫ッ‥‥それより、乃木くんを呼んで日向くんを寮、ま‥‥で‥‥」
「ッ凪!!!!!」
犬神の遠吠えできっと乃木くんはこの居場所に気付いてくれる。そう思ってアリスを使おうと立ち上がった時、足に力が入らず崩れ落ちた、
その先は
ドボンッ
湖だった。
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