好きでチビじゃねぇーよ

*トキが去った後



「……ッ」
「ッたぁっ?!!」



エレンの背中に思いきり靴の足跡が着くほど強烈な蹴りが入った。その力によって押し出されたエレンの身体は前のめりになりながらも何とか扱けずに振り返った。だが、そこには自分が所属する兵士長がいた。とても不機嫌な顔をして(いつも不機嫌だけど更に重圧な)。



「兵長っ……あの。俺、何かしました……?」
「……チッ」
「(ナチュラルに舌うちされた)」



青ざめた顔色のエレンと違って、眉間と眼力が恐いリヴァイはエレンを横目に捉えつつもエレンの彼女に触られた鼻の頭からは視線が外れなかった。

羨ましいとか思ってねぇーよ。



*一方彼女の方は?



『……、ミカサ。一応上司に刃を向けるな』
「………」



これでも女版リヴァイと謂われる程の実力者であるトキに、しかも一応上司に、巨人対用に造られた刃をこちらに向けて豪気たるオーラを背後に滾らせるミカサにトキは、眉を潜ませる。



『(ミカサとの距離が遠のくばかりだな)』←本当は仲良くなりたい。
「(エレンが特別な感情を抱く女……)」←エレンのわだかまりがなければ何でも無い人。



金属音をほとばせながら互いに互いの感情が渦巻くばかりの光景だった。



嫉妬じゃない。これは、牽制です。


*作戦会議?



「貴方が管理出来ないから」
「お前があいつを見張ってねぇから」



空室だったその部屋でミカサとリヴァイが額をつつき合いながら辛辣な顔をして何やら話込んで居た。



「エレンがどんどんあの人に想いを寄せている気がする」
「……あいつはどんな男も寄せ付けない」
「自分で言って落ち込まないでください」
「うるせぇ、黙れ。筋肉馬鹿」
「寄せ付けないのはユイさんであって。あの人の好みの人はエレンに該当する。時間の問題ではないかと」
「…………」
「落ち込んでいる暇があるならさっさと身長伸ばしてください、チビ」

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