君の瞳は瑪瑙
「お前ってあの人のこと好きなの?」


ヒビヤが指をさす。その先には彼女がいた。温かくてでもどこか淋しげな彼女の笑みに僕は確かに惹かれていた。心のない左胸が少しだけきしむ。そうすればお腹がぐぅっと空いた。


「あのっ……」


ノロノロと回る口がカラ回る。彼女は今、シンタローと話していた。
シンタローは彼女に面白い話をしているのかな?楽しそうに笑う彼女の顔を見ては胸のあたりがぽかぽかと温かくなってきた気がする。いつも一人でいると彼女は寂しげな顔をして窓辺に座るから。そんな顔より笑っている顔の方がすきだから。笑っていてくれるならそれでいいと思う。
でも、どうしてだろう。お腹がね?ぐぅぐぅって空くんだ。シンタロー変わって。換わって。ってせがむ子供みたいに。邪魔だと排除する化物みたいに、どうにかなりそうな空っぽな頭の中でせめぎ合う。
苦しい…痛い……。


『コノハ』


決まってそういうときは君の声がよく聞こえた。僕の名前を呼ぶ君の懐かしい声が聞こえたんだよ。


『 ××× 』
「……夜鷹。お腹空いたね」
『空いたね』


うるっと瞳が輝いた。そんな僕の頬をつねってニッコリ笑ってくれた。


「夜鷹も結構食うよな」
『甘いものは別腹。別腹』
「べつばら、べつばら」
「いや。コノハに関しては別腹じゃねえだろ」


たい焼きをレンジで温めて食べた。あんこの甘い塊が喉を通るたびに、僕はからっぽの頭の中で、心の中で君を繰り返し繰り返し思い出す。


『シンタローだって炭酸飲料は別腹でしょ』
「別腹っていうかないと死ぬな、確実に」
『中毒者(ジャンキー)が』
「声のトーンだけ低くするのやめて!恐いから!笑顔もやめて!」


シンタローは今日もコーラを片手に飲み干した。こんな風に世界がゆっくり回るのはいいことだと思う。


「あー私もたい焼き食べたいですね」
「いや、お前電子じゃねえか。食べたい欲求とかあんのかよ」
「少なくともご主人の性欲よりはないですけどね」
「っ!今それを言うな!!(夜鷹がいるんですけどッ)」
「聴かれたくない事でしたかぁ〜?失礼しました〜」
『デリカシーないね、シンタロー』
「でり、かしー?」
『女の子に気を遣う事だよ。シンタローは皆無だね。それじゃ女の子は逃げていくよ、当然だね』
「あ、あの…夜鷹ちゃん?そうはっきり言わないであげてください。結構ナイーブな心を持っているので」
「シンタローが凄い…姿になってる」
「あれなんて言うんでしたっけ?」
『確か…●●●●立ちって言うんだっけ?』
「とりあえず保存しときますか」
『そうだね』


カシャカシャって撮っている姿を見て、僕は結局彼女に何を聞きたかったんだっけ?と首をかしげた。
楽しそうにはしゃぐ彼女たちを見ているとそんな些細な事どうでもいいように思えた。


『コノハ。さっき何を聞きたかったの?』
「えっと……なんだっけ?」
「まったくぼんやりしてますね〜」
「あ、そうだ。ヒビヤに、僕が夜鷹のこと好きなんだろって言われたんだ。好きってどういう意味なの?」
『……ファォッ!』
「いや、何語ですかソレ。えーなんですか?好きなんですか?どうします?ご主人。イケメン好敵手現るですよ〜」
「コノハ。それはな…その感情は、お前にはまだ早いんだぜ」


シンタローが僕の肩に手を置いてそう言った。

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