※主人公設定
※世界が回り出す
※夜鷹様からお借りします
いつまでも。いつまでも。こんな日が続けばいいのにと願わずにはいられなかった。
何もかもを忘れて幽玄の中を虚像と共に追いかけながら足を止めた。解っていたのかもしれない。コレを思い出せば私はきっと夜鷹では居られなくなる。全てを知ってしまったらもう二度とこんな楽しい日々は訪れないと―――。
それでも、逃げては駄目だと誰かが言った。この世界のヒーローは君だけだと誰かが言った。救えない一縷の望み。未来を恐れて歩みを止めたのは、きっと昔の私。
真っ暗な闇の中。遥くんが描いてくれた黒いコノハと共に歩いていた。その紙の中の彼はかつて私を助けてくれた彼にそっくりだった。
一つの椅子。高級そうな椅子に座り、瞳を閉じて眠っているかのような美しさで彼はそこに居た。
『久しぶり、遼』
そう問いかけると彼はゆっくりと目蓋を持ち上げてその蛇の瞳で私を捉えた。
「よぉ、遅かったな。夜鷹、お前また泣いていたのか?愚図だな本当に」
不器用な程に彼は呆れ気味そう言った。足を組み直した彼は私を面白可笑しく見つめていた。ああ、まるで蛇。絡み付いては苦しげに締め上げてゆっくりと嬲り殺すことを好んでいるように思える。
『冴える蛇って言った方がいいのかな?』
「そこまで思い出したのか。それでいて何で俺に会いに来た?情でも移ったか?」
立ち上がり彼はコツン、コツンと床を踏む。私の傍までやってくれば首を手で掴まれる。
徐々に圧迫されていくのを感じながら眉を寄せて答えた。
『情?湧くに決まってんでしょ。私にないものをくれた大切な人たちを傷つけないでって言いに来たに決まってんでしょ』
「へえーお前にしては威勢がいいな。あの頃の方がまだ可愛かったってもんだ。扱いやすくて」
息が苦しくなってくる。それでも目だけは彼を離さなかった。嘲笑いながらも彼は途端に手を離した。興が反れたのか手首をぷらぷらとさせている。
「なあ、夜鷹。思い出したんだろ?あの頃に感じていた苦痛を。何でそれで俺に楯突く事になってんだよ。お前を殺したのは他ならぬその家族ってもんだ。大切だったろう?あんな屑な人間でも。お前の事より愛する女を取ったあんな糞みたいな男でも」
咳き込みしながら新しい空気を肺に送り込みながら私は呼吸を落ち着かせてから園とおりだと思った。確かにそうだった。大切だった。あの人が私を要らぬと言うのなら喜んでこの身を投げ出したりもしたさ。でも、それは……間違いだった。それでは必要とされていない。それは願いではない。私が願った事でもない。
『ただ…愛されたかっただけなんだ』
愛が欲しかった。家族からの愛が欲しかっただけなんだ。蔑まないで、憎まないで、羨まないで。ほらやっぱり私じゃない方が良かったんだ。生かすなら母の方が良かったんだ。誰からも望まれない生ならば、あったところで意味はない。最期に叶えるならばあの人の言ったとおりにしてやろうと思って投げ出したあの日私は彼に助けられた。
『君も大切な人に違いない。だから……賭けをしないか?』
「賭け?」
『そう。もし私がこのゲームに勝ったら私の望みを叶えて貰う。負ければ…君の言うとおりに君の願いを叶える。その際身体を自由に使ってくれて構わない』
「何故そんな賭けをしなければいけない?俺にはメリットがない」
『あるよ。私の中に居るカノジョの力が必要でしょ?それを自由に使っていいんだからこれほどいい条件はないと思うけど』
おでけてみせると彼は少し考えながら口角を上げた。
「乗ってやるよ。お前の頼みだ少しは恋人の特権でもくれてやる」
『ありがとう、ダーリン』
「だが、あいつらは何度でも繰り返す。どこで勝敗を決めるんだ?」
『私の……命が尽きるまで』
「……何度も死ねなかった、確か」
『そうそう。異世界の住人だし。元々死人だ。そう何度も死ねないのは当然』
「だな。じゃあ……次の8月15日俺は予定通り決行するが、そこからスタートでいいのか?」
『構わないよ』
不適に微笑めば、彼は少しムスっとした顔になりそっと頬に触れれば軽い口付けだけを施した。流れ作業のように鮮やか過ぎて何も言えずに、彼はそのまま立ち去ってしまう。なんだあのイケメンは。って思いながら静かにやっぱり涙を溢した。
『大好きだったよ、本当に』
恋に恋してた女の子のように、君の事好きだったよ―――。
そんな気持ちとさよならするための、涙だったのかもしれない。
さあ、幕引きだ。この悲劇の最初の原点で私は沢山の布石というなの軌跡を残そう。いつかそれが芽吹く時、皆の笑顔が飛び込むんだ。
『さて、世界征服しますかね』
陽気な声でそう呟いた。
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