夜鷹。
空っぽの僕にいつまでも付き合ってくれる。
優しくて、温かくて、弱くて、不安定な女の子。
そんな君に抱く感情は…きっと恋だと思う。
ソファーに寝そべる彼女。静かな寝息をたてて健やかに眠る彼女。ソファーに座って彼女の頭を膝の上に乗せれば、少しだけ重たいと感じた。これが彼女の重み。彼女の存在を感知できる。これだけで幸福だと感じられる。僕にとって夜鷹がそれだけ大切なんだ。
『コノハ……』
眠い目を擦りながら夜鷹が起き出す。もう少しこの時間を共有したくて思わず抑えつけて起き上がらせないようにしたら戸惑っていた。
『どうしたの?え?起きたいな』
「もう少しこうしていたい……だめ?」
『……なあに?甘えん坊タイム?』
絹の様な細い髪質の白藤色の髪に指を通しながら梳くとくすくすと笑う彼女。くすぐったいのかな?首を傾げながらもその手は止めない。
「夜鷹……遼に会いたい?」
『……うん。会いたいよ』
「どうして?夜鷹を傷つける人に会いたいの?」
『好きだから。会いたい』
「好きなの?……僕よりも?」
『……え』
目が覚めた様な顔をして夜鷹がばっと起き上がった。そして僕の眼を見つめては、ゴクリと喉を鳴らす。
「僕……変な事言った?」
『言った。充分言ったよ。コノハ、どうしたの?何かあったの?』
僕の額に手をあてて自分の額に手をあてて夜鷹は珍しく取り乱していた。そんな夜鷹の手を掴み引き寄せれば簡単に僕の腕の中に収まる彼女の小さな身体。バランスを崩してソファーに寝転ぶ。僕の上には夜鷹が大人しく抱きしめられていた。暴れた事はないけれど、取り乱すこともないけれど、それでも今日の夜鷹どこか余裕がない。
「かわいい……夜鷹」
『あ、いや!ちょっと待て』
後頭部に添えた手を少しだけ押して数センチという距離で彼女は手で僕の唇を覆う。
『コノハ……どうしたの本当に?いつもの友情のハグはどうした?』
口を開くと彼女が手をどけた。
「友情……?夜鷹。僕は夜鷹が好きなだけだよ」
『……大問題だ。これは世紀末だよ。ノストラダムスよ、預言は現実となったようだ』
何を言っているのかわからない。夜鷹は時々理解を超える。僕がもう少し聡かったらわかったのだろうか?
『その心は?』
「えっと……オスがメスを捕食する的な方」
『……誰に教えて貰った?お母さんは卑猥な事を教えていないよ』
「本に書いてあった」
『……よし!あの碌でもない大人を燃えるゴミで焼却依頼をしてこよう』
「夜鷹……」
『ん――!』
柔らかな桃色の唇に同じ白いそれを押し当てる。温かな熱が伝わってくる。数分で離れるけど、心の中に広がる欲がもっと、もっとと音をたてては彼女の後頭部に支えた自分の手を強くする。再び重なれば息をするのを我慢しているのか、眉を寄せて苦悶する彼女が少しだけ隙間をあける。その口の中にそっと舌をいれてみる。鼻から自然と彼女の空気が吸っては出されて、逃げる舌を捕まえて交り合うように押しつければ『 んっぁ 』と鼻から抜ける声が聴こえる。
かわいい……すごく、すごく。かわいいよ……夜鷹。
歯列をなぞり柔らかな口内の肉を撫でる。彼女の唾液が甘く感じた。どちらとわからぬ溢れた唾液が彼女の口の端からこぼれて顎を伝う。夢中になりすぎて涙を浮かべて震える彼女に気がつくのが遅かった。
「あ、ごめん。苦しかった?」
『はぁ……っ。び、びっくりした……いや、本当に吃驚した』
「ごめんね」
『あ、いや……経験値は私の方が上だと思っていたけど。最近の若者は……』
その言葉にムッとした。夜鷹は藍という男の人の恋人だったと聞いている。だからその男の人が僕と同じように夜鷹に口づけをしたとしたら、こんなにかわいい彼女を独り占めしてたんだ。とわかればわかるほど。実感すればするほど、お腹のあたりがもやもやして。酷く空くんだ。
「食べたい……夜鷹」
『お腹減ったの?』
「アイ、とどこまでしたの?ココには射れたの?」
そう言って彼女のお尻辺りを撫でればぴくりと肩をはねらせた。
『コノハ』
「なあに?」
その時の夜鷹はとても怖かった。すごくすごく怒っていた。思わず両手をあげてしまうほど。怖かった。
『まったく……どこで覚えたんだか……』
「ごめんなさい……嫌だった?僕じゃ駄目だった?」
『……子犬の目をやめなさい。嫌ではないから』
起き上がろうと、離れようとしていた夜鷹に寂しさを感じたら彼女はそのまま僕の胸に顔を押しつけた。
てっきり離れていくのかと思っていたのに。
でも夜鷹の頬はとても赤くて、心臓の音がどくりどくりと早かった。
僕をもっと感じて欲しい。僕で満たされて欲しい……夜鷹。
「好きだよ夜鷹」
『はいはい…』
彼女を抱きしめて頭皮に口づけを送った。
20160403(加筆修正)
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