マギ

政務官という役職は、私からしたらドMの性分の奴らがやる職業だと思ってた。そう言ったら、仮にも女の子である私の頭上に天誅喰らわしてきたよ。いや、本当にこの人サドやわ…。



「ジャーファルさんって…」
「何です?」
「……陸辱させて屈服させて、従わせる趣味思考の持ち主だと思うんだよね……いたいいたい!」
「寝言ですか?寝言は寝てから言わないと寝言なんて言わないんですよ?さあ、今から眠りにつきましょうか」
「それは永眠っていう一生覚めない眠りですよね……って、眼が本気すぎてちょっと鳥肌」
「ほお」
「すみませんでした。調子乗ってました」



土下座する女の子を上から目線で「 少しは懲りなさい 」とか平気な面して言う人を他人は「 鬼畜 」って言うんだよって心の中だけで言ったのに、何故か届いていた。あの、すみません。あなたの背後に出てるその鬼神やめて。納めて下さい、お願いします闘いの女神。



「やはり一度きっちりとした調教……教育が必要ですね」
「言い直した所で意味かわらないからいいよ」



米神ぐりぐりやられた。ひぃひぃと短い呼吸をしていたら、背中に壁があたった。驚いて背後を確認するとやっぱりどう考えても、見ても、壁だった。ボケっとしていると顔の真横にジャーファルさんの腕が視界に入る。多分、壁に手をついたのだ。冷や汗が止まらない。重たい首を正面に戻す事が躊躇われた。だけどそんな私の感情など知り尽くしている彼は、端整な微笑みを浮かべながら私の耳に唇を寄せて囁くのだ。



「こちらを向いてください、なまえ」
「んっ」



耳に息を吹きかけながら、粘膜質の音をたてる。思わず背筋を何かが駆け抜けた。水音がピチャリとすれば、耳の穴の中に舌を入れられた事が判明する。飛び上がるように肩を大げさに上下に動かし、逃れようと暴れる私の身体を壁に肯定して簡単に抑え込まれてしまう。何故、こんな卑猥な空気になった……。と、脳内が激しい議論を繰り返していると肩にかかっている髪をどかしながら、首筋に唇を押しつけて肩を掴む彼の指先によって、肩にかかっていた紐がするりと落ちていく。



「んんっ……ぃぁ」



鎖骨を甘噛みされて、思わず吐息交じりの喘ぎ声が洩れてしまい、羞恥心に苛まれる。震える私にジャーファルさんはそれそれは、優しい色合いを見せる笑みを浮かべて……。



「優しくして差し上げますよ、私の愛しい駒鳥」



次に降りかかるであろう、彼の少し堅い唇を私は瞳をつむりながら受け止めた。



2013.01.26

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