黒子のバスケ
※過去拍手
※帝光中設定


「……」
「あれ、どーしたんスか?」
「―――っ」
「え、ちょっ!!?」



普段クールで名の通っている彼女は、顔を真っ青にしながら黄瀬に抱きついた。いつもアタックしては撃沈を繰り返す黄瀬は、突然の彼女の行動に思考が追いつかず。手をばたつかせていた。



(どどどっ、どうすればっ!はっ!?これはチャンスなのではっ…?)



普段こっぴどく断られている彼女から、まさかの抱きつき。これは、手を回して抱きしめてあげるべきでは、と勝手に脳内変換のみ跳躍する黄瀬のシナリオ。そして、度胸とばかりモデル黄瀬涼太は彼女の背中に手を触れる。そうすると、彼女はますます黄瀬を強く抱きついた。



(うぎゃああ!!!!!)



心の中で発狂しながら、黄瀬は鼻から飛び出す赤い液体に対処出来ずにいた。そんな様子をたまたま通りすがった赤司は、片手に購読していた将棋本から視線を外し。



「涼太、鼻拭け」



何も言わずにハンカチを差し出された。それを素直に受け取り、取りあえず鼻を抑える。そのハンカチで。そして、未だに震えて黄瀬を離さない彼女に視線を移す赤司。この状況下から読み取ったナニかに、ふと、口元緩めて。



「もういないから安心しろ」



その言葉は魔法のように、彼女は埋めていた黄瀬の腰から少しだけ離し周囲を窺う。それから、安心したのか、この事実が夢だったかのように何事もなく黄瀬からあっさりと離れて地面に落ちた鞄を拾い上げた。



「…死ぬかと思った」
「いい加減慣れるべきじゃないか?」
「無理。はあ、撲滅しないかな」
「それこそ無理だろ」



自然と赤司は彼女の隣を陣取り、二人は黄瀬少年を一人残して去って行った。そんな二人を呆然と眺めながら、赤司の「 まだまだだな 」という上から目線のあの表情に屈服した。


(負けたくねぇース!)

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