緋色の欠片

朱すぎる景色の向こう側。



世界の果て、などと人はあるとかないとか討論するがそれって意味があるのかと疑問に思ったのが始まりだ。
何もない村。自然しかない村。少人数制の教室。女子が多いのか、男子が多いのか分別のつかないそんな素っ気ない村。


それでも無色じゃないのが、やけに主張している部分だ。


ここは朱すぎる。秋になると紅葉などと人は視野を養う。癒し、寛ぐが三日もすれば飽きるとはこのことだ。ここの住人はすでに見飽きたと言わんばかりに誰もこの景色に触れる者はおろか、気にも留めていない。まるで、そこにあるのが当たり前だとでも思っているのであろう。頭の片隅にさえ残らない残像と一緒。


屋上の手すりに腰をかけて足を宙に投げだす。ここは本来手すりであって、決して腰を据える場所ではないのは重々承知している。まあ、気分の問題だ。

休む暇もなく足をぷらぷら動かしながら、ここから眺められる景色を眺めた。水平線の彼方まで広がっているような錯覚さえ与えられるここからの景色は朱だけを映す。つまりは邪魔な物が見えないという訳だ。人間の作りだしたものなど反吐が出そうなほどの公共物に過ぎない。この視野にさえ入れたくも無い。ぼんやりと長い間眺めていれば、背後に気配を感じた。それを敢えて無視したのは、別に理由などくだらないほどなかった。今はそういう気分なだけだ。

その気配は何の躊躇もなく人の隣の手すりに背を預けて隙間を埋めた。傍から見られたらまるで寄りそうような男女の関係に思われるだろう。実にくだらない妄想劇だな。どうでもいいよにこの地平線を眺めた。隣に居る奴は手に持っているクロスワードパズルの雑誌を片手にシャーペンで答えを書きならべて埋めていく。互いが互いの時間を個人的に使用する事は合理的だ。大賛成。巻き込まれるなんて言語道断だ。



「なあ。平安時代の遊びってなんだと思う?」
「歌じゃない?」
「スポーツ的な」
「ああ。あれじゃない?あれ」
「あれって?」
「ほら、あの雅的な」
「雅的なスポーツって…」



想像しながら気色悪そうな顔をする相手に、適当な返答を返していたが流石に飽きたから答えを述べる。



「けまり」
「はじめっからそう答えろよ」
「無粋」



けまり、とマス目を埋める彼は最後の問題にさしかかる。でも、どうやら峠は越えているようで会話を続行させた。



「たい焼きの季節だな」
「それを言うなら肉まんでしょ」
「…やっぱたい焼きだな」
「いや、焼き芋でしょ」
「……お前どっちだよ」
「両方」
「食い意地はってんな」
「あんたにだけは言われたくない」
「お互い様だろ」



あくまで両成敗にしたいこいつは、そんな事を言う。クロスワードの雑誌は閉じられ一緒にここから観れる朱を観賞した。
秋風の冷たさが心地いいのが肌でわかる。目を奪われるほどの朱が視界を埋め尽くし、身体が季節を感じた。



「紅いな」
「そうだね」



物悲しい心の隙間に入り込む季節がやってきた。胸を覆い尽くす様な、焦がれる様な…そんな季節がやってきた。人は悲感傷になりがたちだ。それが疎ましくさえ思う反面、それが羨ましい一つだった。何度巡って来ても涙腺が緩まない日はこない。
髪が攫われる。風が撫でる。頬が冷たいと、感じた。



「よしっ、たい焼き買って帰るか」



そう言って拓磨が手すりから背を離して前へ進みだす。その後を追うように振り返りその広い背を眺めた。大きくて頼りがいのあるその背中はどれほど傷ついてきたのだろうか。人はこんな時でも悲感傷に、なってしまう生き物なのだ。



「……たい焼きだけ?」
「…肉まんも買ってやる」



呟いただけだった。言ってみただけだった。儚いくらい朱に満ちた貴方だった。
身体の向きを変え、手すりから降り立ち拓磨の傍へ歩みよる。そんなわたしの姿を見て、彼は歩き始める。



「焼き芋は?」
「真弘先輩に言えよ」
「美鶴が家で落ち葉集めて待ってるから」
「準備いいな」
「おせーぞ拓磨っ!!」
「情報はやっ」
「狭いですからね」
「落ち葉はこれぐらいでよろしいですか?」
「それで充分だろ。火をつけるぞ」
「狐火でつけるんですか、祐一先輩ッ!!?」
「珠紀危ないよ」
「新聞紙ありますか?」
「入れるぞ」



あとがき
順番。真弘先輩→拓磨→大蛇さん→美鶴ちゃん→祐一先輩→珠紀→あなた→慎司くん→遼でした。こんなに多いともう誰が誰だかわかんない。
自分も人間も大嫌いな人間らしい女の子と守護者代表、拓磨との会合。最近、糖分という意味もわからなくなってきた。きゃは。
一応、彰人は緋色はクリア済みだぜ☆

2012.04.24

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