お蔵2017/09/28
前回言っていたMHA連載はなし!!
一応書いてたんですが蔵入です!!
【タイトル】友達じゃない
【仮名前】宿命こころ
ヘドロ事件〜入学まで。少し長いです。興味のある方はどうぞ。




01

私たちの関係は、世間一般で言う幼馴染み。
だけど私にとって二人はただのお友だちではなく、ヒーローみたいな存在だった。
私たちが出会った日のことは、幼すぎてもう覚えていない。
ただ家が近所で、必然的に私たちは幼馴染で、ただ、よく考えれば普通の仲良しのお友達だったことなんて、あまりなかったような気がする。

「爆豪!やめなよ!」
「邪魔だ!こころ!!」

私たちはたったの四歳で、社会の現実を目の当たりにする。
私と出久はいつもかっちゃんの後ろにひっついて、「すごーい!」「かっこいいー!」て、いつも自信家なその姿に憧れていた。
出久はまるでかっちゃんの正反対のような存在で、私よりもかっちゃんに対する思いは強かったように思える。
齢四歳。大体この頃から、私たちは『個性』を発現させる。
かっちゃんの『個性』は豪快で力強く、まさにヒーローみたいなものだった。
私も『個性』は出たけど、みんなに少し不気味がられたのを覚えている。
そして出久。彼は『無個性』。なんの能力もない、この時代には珍しい型。
もともと要領のよくない出久をかっちゃんはよくからかっていたけれど、自分の『個性』を知り、周りの『個性』を知り、出久の『個性』を知り、それはどんどんと悪化していき、
いわゆるイジメへと、なっていった。

「一線級のトップヒーローは学生時から逸話を残している。俺はこの市立中学から初めて!唯一の!『雄英進学者』っつー箔をつけてーのさ。まあ、完璧主義なわけよ」

事あるごとにかっちゃんは出久を馬鹿にして、貶して、殴ったりする。今日も出久が数多くのヒーローを輩出している超名門の雄英高校を受けると知って、何がそんなに気に入らないのか、出久のヒーローノートを彼ご自慢の『個性』で爆破してしまった。

「酷いよ爆豪。出久がどの高校受けようがあんたには関係ないじゃん」
「お前なにデクのこと庇ってんだよ。もしかして…」

デクとは出久のことで、かっちゃんが言い始め出久の蔑称。
ニヤニヤと笑うかっちゃんは出久のノートをひらひら揺らし、ぽいと窓の外に投げてしまった。
「ひどい…」と出久は呟く。もっと抵抗すればいいのにと、正直な話、彼のそんなところを私も少し蔑んでいる。

「まあ、お前らのことなんざどうでもいいけどよ、一応さ、雄英受けるな。ナードくん」

ぽん、と肩に置かれた手に出久はびくんと体を震わせる。怖いのか、腹立たしいのか、私には分からないけれど、出久はかっちゃんに何も言い返さない。それとも、言い返せないのか。

「あ、そんなにヒーローに就きてえんなら効率いい方法あるぜ」

去り際に爆豪は、振り返って出久を見た。

「来世は『個性』が宿ると信じて屋上からワンチャンダイブ!」

あまりにも酷い言葉に、私は自分の『個性』でかっちゃんに向けて机を投げ飛ばしていた。
だけどそれは見事にかっちゃんに吹き飛ばされ、かっちゃんはケガの一つも負ってはいない。

「何よ?」

ボカンと手の中で爆破が起こる。本当に、彼は強い。
私たちを見る目は冷たくて、どこか怒りを孕むような、そんなものだった。

「……出久、ノート取りに行こう」
「う、うん…」

今日、ホームルーム中に、隣の教室から笑い声が聞こえてきた。出久を笑う声だ。『無個性』の出久が雄英高校を受けるのが、おかしくて、みんな笑っていたのだろう。
幼い頃から出久はナンバーワンヒーローのオールマイトに憧れて、絶対に雄英に行きたいと意気込んでいた。
現実は甘くはない。力のないものがヒーローになれるものかと、みんな出久を笑う。
私も出久を庇ってはいるものの、心の中では無理だと思っている。ヒーローにはなれない。憧れや努力だけではどうにもならないことが、この世にはたくさんあるのだから。
でも、出久がとてもヒーローに向いている性格だと言うのは、ずっと前から知っている。
人を救けることが当たり前で、勝てるわけがないと分かっていても出久は救けなければと体が動いてしまう。
なんて残酷なんだろう。
こんなにヒーロー向きな人は、他にいないのに。

「こころ、ありがとう。いつもかっちゃんの間に入ってくれて」
「出久は何か言い返したらいいのに」
「うん……」

出久のノートは鯉の水槽にぼちゃりと落ちていて、鯉がノートに向かってパクパクと口を動かしていた。

「エサじゃないよバカ。僕のノートだ。バカ…。バカヤロー…」
「鯉じゃなくて爆豪に言いなよ…」
「う…、僕…、寄りたいところあるから一人で帰るね…」

そうじゃねーだろ。
心の中で悪態をつき、私はとぼとぼと帰る出久を見送った。
この時、私は出久と無理やり一緒に帰っていればよかったのだろうか。それとも、見送って正解だったのだろうか。
何にせよこの日は運命の日。
出久にとって、かっちゃんにとって、私にとって、
No.1ヒーロー、オールマイトにとって。
運命の日に、なったに違いない。


02

出久を見送ったあと、帰り道の商店街。
何やら騒がしく、私は一抹の不安を胸に歩を進める。
どうやら敵が子どもを人質にとり暴れているらしい。しかもその子どもの個性は爆発を起こすもので、辺りでは火事が起きている。
まさか。人をかきわけその現場へ走り出す。

「すみません、どいてください!」

そこには人だかりが出来ていて、複数のヒーローや警察が既に到着していた。
ヘドロのようなものが確かに男の子をおおっている。暴れていてその人が誰なのかが分からない。けれど、すごく抵抗していて、恐らく、すごく苦しそうだ。
ヒーローたちはなす術なしといった様子で、他に相性のいい個性のヒーローが来ないかと待っている。男の子を助けずに待っている。
暴れているのはヘドロなのか、男の子なのか、私が見ただけでは分からないけれど、ぐるりとヘドロがこちらを向いた時、私は捕まっている男の子の顔を見ることができた。

「かっちゃん…」

その人物は紛れもない、私の幼馴染である爆豪勝己だとわかった瞬間、私の少し横を誰かが通り過ぎ、渦中へと飛び出した。

「馬鹿ヤロー!!止まれ!!止まれ!!!」

出久だった。出久が、かっちゃんを救けに、飛び出していったんだ。
心臓が大きく脈打つ。心を動かされた。きっと誰かの心も動かした。
『個性』のない彼が必死に敵に立ち向かい、被害者を助けようとしているその姿は、ここにいるどの人よりも、ヒーローそのもの。

「出久!!」
「おい!き、君!」

思わず私も走り出す。一生懸命ヘドロをかき分けている出久になにか私ができることはあるのか。
とりあえずかっちゃんの口と鼻をふさいでいるヘドロを取り除ければ少しは楽になるだろうけれど…

「君を諭しておいて己が実践しないなんて…プロはいつだって命懸け!」
「…え!!?」

私が二人のもとに辿り着く前に、驚く人物が二人の腕を掴んでいた。
そして、一瞬にして、その人の右腕のひと振りだけで、ヘドロは飛び散りかっちゃんは解放されていた。
瞬く間すら、なかったように思える。

「オールマイト…」

No.1ヒーローがそこに立っている。
二人の憧れの、笑顔のヒーローが。
そこからは早かった。ヘドロは他のヒーローや警察に回収され、オールマイトは取材陣に囲まれて、出久はなぜか怒られていて、逆にかっちゃんは称賛されていた。

「君が危険をおかす必要は全くなかったんだ!!」

私はその言葉に腹が立つのに、出久はなんの反論もしない。
自分は何も出来なかったくせに。と、そう言えばいいのに。
危険を承知で、市民を助けるのがヒーローじゃないかと、そう言えばいいのに。

「爆豪…大丈夫?」
「……なんでお前がいんだよ」
「そりゃ帰り道だから」
「デクといちゃこら帰ってたんだろ」
「なにそれ…」

鋭い視線。いつから私をこんな目で見るようになっただろうか。少しだけ、心が痛むけれど、あんなに苦しそうだったのに平気そうなかっちゃんを見て、安堵した。

「さ、3人で一緒に帰ろ?」
「殺すぞ」
「……。」

いつもの調子である。ならお望み通り出久といちゃこら帰ってやろうじゃないか。小さくため息をついて出久の方を振り返るとそこにもう出久の姿はなかった。
先に帰られてしまった。

「…爆豪、一緒に帰る?」
「……。」

ダメ元で聞いてみるとかっちゃんは何も言わずに立ち上がりすたすたと去ってしまった。
何ともむかつく話だが、心中お察しといったところだろうか。
きっと、かっちゃんは私以上に物凄くムカついているだろう。出久が自分を助けようとしたことに。昔、かっちゃんが川に落ちてしまった時も出久がすぐに助けようとして、すごく怒っていたのを覚えている。
出久に心配されるのが癪なのか、もっとそれ以上になにか理由があるのか。
何年も彼のことを見てきたけど、未だによくわからない。

「雄英かあ…」

私たちは中学三年生。
高校生になるまで、あと少し。


03

あの事件から10ヶ月が経った。あれからかっちゃんは出久にちょっかい出さないし、出久も早朝に家を出たりしてあまり会ってないような気がする。でも見る度に出久はなんか変わっていってて、受験に備えているのかなと、勝手に納得していた。
私といえばというと

「なんでお前までいんだよ」
「えへへへ」

雄英高校にいた。
今日は一般入試。私はあの事故をきっかけに、雄英高校の受験を決めたのだ。
何故と言われればうまく説明ができないけれど、この二人の後を追った、というのが一番しっくりくる言い方だろうか。
受験番号が三人連番だったので、ホールでは仲良く並んで座っている。なんとなく嬉しい。
これから実技試験の説明があり、プロヒーローのプレゼント・マイクが壇上にあがると出久はボソボソと声に出して興奮を吐き出していた。別の受験者に注意されてしまったが。
実技試験の内容は、仮想の敵を倒すというものだった。ポイント制で敵を倒せば倒すほど、ポイントが手に入る。

「頑張ろうね、2人とも」

同じ中学同士は試験会場は別らしく、協力をさせないためのシステムのようだ。
私が二人に笑いかけるとかっちゃんは無視だし出久は緊張でどぎまぎしててろくな反応が返ってこなかった。不服。
私たちはホールをあとにし、それぞれの試験会場へ向かう。
担任の先生からは雄英高校の受験は賭けだと言われたけれど、私は決して自分の個性を弱いと感じたことは無い。
勉強もそこそこできるし、合格する。してみせる。
なぜかこの時ばかりは自信過剰になって、まるでかっちゃんみたいに、私は気が大きくなっていた。
私の『個性』は入魂。
ある一定時間、物に魂を与え私は命令をすることが出来る。魂をこめた物体は飛行が可能で、重さと速さは比例しない。同時に込められる魂は3つまで。
他意によって動かされているもの(たとえばロボットなど)に魂を入れることは出来ない。
発動条件は、触れなければ入魂が出来ないこと。どうやら私の体を伝って魂を入れているようだ。
幼い頃、大切なクマのぬいぐるみを"お友だち"にしてみんなに気味悪がられたのはなかなか忘れられない。
試験会場につくと三者三葉、十人十色といったところか、みんないろんな個性を発動している。そして自身に満ち溢れている。
こんな緊張は味わったことはないけれど、私は高揚していた。なんだろう。二人と同じ、雄英に行くことで、二人に追いつけると思っているのだろうか。

「な、なあ」
「っ!は、はい!」

突然話しかけられ、ビクンと体が跳ね上がる。思わず声も裏返ってしまった。

「わ、悪い!」
「いや、こちらこそ……」

話しかけてきたのは男の子。髪の毛はツーンと尖るようにセットされている。
何か用ですかと問えば、なんだか1人が気まずくて、と照れたように笑う。

「えと、俺は切島鋭児郎。よろしくな」

なんとも爽やか笑顔の男の子。
私も自己紹介をして、差し出された手を握る。15にもなって男の子の手を握るのはなんだか照れくさい。

「なんかみんな雰囲気やべーな」
「わかる。もう私緊張しちゃって」

ぱたぱたと手で顔をあおぎ緊張を紛らわしつつ、少しの間切島くんとおしゃべりを楽しんだ。早速お友だちができてしまったよ。
しばらくすると「スタート!」と声とともに急に実技試験が始まった。実戦じゃカウントなんてないぜと言っていたが、まあ事実なのだろうけど、試験なんだからカウントくらいいいじゃないか!と、私たちはお互いを忘れ走り出していた。
12,13,14と、敵は何体も湧いてきて、何体も倒しているのに次々と出てきている。すごいな、こんな予算どこからでてきているんだろう。
悠長にそんなことを考えながら、瓦礫や鉄骨を飛ばしては敵を破壊していった。
私の点数が40Pに差し掛かろうとした時、大きな音を立てながら現れたのは超巨大な敵。
これが説明の時に言っていた0Pのギミック。
ドッスンとか言ってたかな。レトロゲームはやったことないからいまいち良くわかんないけど、避ければいい敵。
現れた途端周りの受験者もどんどんと逃げ出してゆく。それはそうだ。圧倒的脅威。0ポイントの戦うだけ無駄な敵だ。
私も逃げなければ。そう思い走り出すと私が入魂した瓦礫が私を目掛けて飛んできた。
まさか、このタイミングで。
瓦礫は私の腕に当たり、激痛がそこに走る。
反乱だ。この個性を使いすぎると私の個性たちは反乱を起こす。なんといっても操っている訳では無い。心のある魂なのだ。使役されすぎた魂は、たまにだけれど、私への不満を爆発させ、攻撃してくることがある。

「くそっ」

こんな時に。こうなるとすぐ次の魂を入れてもうまく動いてくれないのが場合がある。ストライキならまだマシだが、暴力に走るのは本当に困る。
ああやばい。もう敵がすぐ後ろに来ている。

「おい!大丈夫か!」

みんなが逃げ出す中、私に手を差し出してくれたのは切島くんだった。私を攻撃してくる瓦礫を真っ二つに叩き切り、ようやく私はそれらから開放される。

「立てるか!」
「う、うん!」

切島くんの手を取り立ち上がると私たちは一目散に走り出す。しかし敵はすぐ真後ろ。このままでは潰される。

「お願いします!私の言うことを聞いてください!」

咄嗟に地面にあった広めの瓦礫に触れ、切島くんと共にその上に飛び乗るとその瓦礫はすぐに飛んでくれた。少し下手に出ればすぐいい気になるのも私の個性の特徴だ。スピードだってなかなかのものだから、あの敵に追いつかれることはないだろう。

「よかった…いい子!」
「す、すげえ!魔法の絨毯みてえ!」

どうやら切島くんには瓦礫ライドを気に入ってもらえたらしい。十分に距離をとったところで地面へ降りると、ちょうど終了の合図がなった。

「お、終わった」
「ひー。すげえ試験だな。宿命さん、大丈夫か?」

ここ掴まれよ!と真摯に私をエスコートする切島くんに、私はハッと思い出し頭を下げる。切島くんが困惑してるのがわかった。

「ありがとう!たすけてくれて!」
「え!!い、いや…」
「あの大きなのに巻き込まれるところだったよ。本当に、ありがとう!」
「俺も宿命さんのおかげで助かったし!」

なんていい人なんだ!かっちゃんも見習って欲しい!
心からそう思ってしまった。でもかっちゃんには絶対無理だ。今さらそうなられても気持ち悪いかもしれない。
そんな流れで私たちは連絡先を交換したりして、帰りの道中切島くんからちょうどメッセージが届いて、そこには『また魔法の絨毯(?)乗せてくれよな!』と書かれていた。
これはモテるだろうな。と、私は確信した。


04

試験から1週間。私は無事に雄英高校に受かっていた。一安心だ。出久とかっちゃんに連絡してみると二人も無事に合格しているようで、胸をなでおろした。
まさか三人で合格できるなんて!しかも切島くんからも合格報告を受け、私今最高に幸せ。
受験勉強も大変だったし、実技のポイントもいい方なのか悪い方なのか分からなくてずっとドキドキしていたから、やっと解放されたかと思うと、本当に嬉しい。
明日の学校が楽しみだ!!

「どんな汚え手使えばてめえが受かるんだ!あ!!?」

楽しみだったのに!
先生に合格報告後、不機嫌なかっちゃんは出久を引っ張りどこかへ連れて行ってしまった。私も後からこっそりついていったら、これだ。
出久の胸ぐらを掴んだかっちゃんが勢いよく出久を壁へと押し付ける。
あのヘドロ事件以来久しく見ていない光景だ。なんとなくこっそり尾行してしまった罪悪感もあり、私はなかなか二人の前へ出ていく勇気がないでいる。もし、かっちゃんが本気で出久に殴りかかろうとしたら、その時は出ていこう。私は少し二人の様子を見ることにした。
しかし、出久も変わったと思う。なんか逞しくなったように思うし、10か月前とはまるで別人みたいになってるから。
兄弟喧嘩を見守る母親の気持ちだろうか。子供いないから分からないけど、そんな気分だ。
そしてこの時、出久は今までに全くしなかった行動に出る。
自分の胸ぐらを掴むかっちゃんの腕を掴み返したのだ。

「い、言ってもらったんだ。君はヒーローになれるって!かっちゃん…、勝ち取ったんだって!」

僕は行くんだ!と、確かに出久は大きな声で言った。
こんなの、初めて見たかもしれない。
成長しているんだ。出久も。私だって正直、無個性の出久が合格したのは信じられない奇跡みたいなことだと思った。あの試験で一体どんな戦いをしたのかは分からない。体つきも変わっているようだし、いつも家にいなかったし、秘密のトレーニングでもしていたのだろうか。
早く見てみたい。
戦ってる出久や、かっちゃんを。
プロのヒーローになっている、二人の姿を。

私は昔、一度、高熱で冗談抜きに死にかけたことがある。四歳の時だ。
一週間ほど入院していただろうか。本当に死にかけていたから、あまり覚えていないのだけれど。はっきりと覚えていることがある。
突然、かっちゃんと出久が、お見舞いに来てくれたのだ。
出久は涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃで、かっちゃんはつり目をいつも以上に吊り上げて、あの時の二人の面白い顔は、絶対に忘れられない。
その時二人から貰ったのは、少し大きめのくまのマスコットぬいぐるみで、私はとても嬉しくて、ぎゅうっとそれを抱きしめた。
その時だった。私の個性が発動したのは。
くまのマスコットが動き出して、私をぎゅっと抱き締め返してくれた。すぐに個性が発動したのだとわかった。
かっちゃんを出久も飛び跳ねて喜んでくれて、そのまま病室で小さなパーティを開いてくれた。
私の体調はその日から嘘みたいにすっかり良くなって、それからすぐに退院できた。二人の魔法かと思った。本当に苦しかったから、二人が私を助けてくれたのだと思った。二人は私のヒーローになった。
かっちゃんにはあんなに横暴な不良みたいになってほしくなかったし、出久もビクビク生きずに胸をはってほしかったけど、別に今の二人が嫌いになったわけでもない。
こうやって三人で雄英に合格して、私はまた、二人の背中を追うことができるのだと、わくわくした。

カバンにつけている、くまが揺れる。



以上です。


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