09

ああ、怖い怖い

教室は悪魔の残骸で溢れ、血臭が漂っている。
私はそんなぐちゃぐちゃな教室から目を逸らした。
奥村先生と奥村くんは双子で、でも先生と生徒で。
奥村くんはそんなことちっとも知らなかったみたいだから、気が付けば奥村くんは怒って奥村先生に掴みかかっていた。
まあ、大変ご迷惑な兄弟喧嘩が起こったと想像してもらってもいいと思う。
魔障の儀式をするために用意した、下級悪魔の鬼族の、いわゆるドーピングのような働きをする動物の腐った血の入った容器を奥村くんが奥村先生に突っ掛かった時に落としてしまったのだ。
狂暴化した悪魔が出現し、
授業は中断。
それでも続く兄弟喧嘩。
教室はボロボロ。
なんて迷惑なんだろう。
でもそんなこと気にもとめていないかのように、奥村ツインズは吹っ切れたような顔をしていた。

「臭い、なあ」

悪魔は灰のようになって消えていく。
私はまるで動物の大量虐殺跡でも見ているような感覚に襲われた。
ふと思った。
私に、悪魔を殺す勇気なんてあるのだろうか。
魍魎に餌付けをし始めたからか、それとも、元々の性分なのか。
いずれにせよ、私は悪魔を殺すことが出来るのか?
慣れるものなのか?
それは、命を奪うということにはならないのだろうか。
それとも、そう考えること自体が倫理に反するのか。
悪魔は生き物ではない。
そう考えなければ、いけないのだろうか。

「小川さん?」
「今いきます」

奥村先生に声をかけられた。
しまった。こんな場所でボーッとしてるなんて変だよな。
私は意識をそっちに戻し、ボロボロの教室を後にした。
魍魎たちが騒いでいてうるさい。
後でボーロあげなきゃ。