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「称号、かあ」

塾で配られた一枚の紙。
それは候補生認定試験のための強化合宿についてと、取得希望の称号についてのことだった。
私は塾が終わったあと、ネイガウスさんの部屋に行きソファーでころころと寝転がっていた。
こういうことは日常茶飯事だ。
ていうか食事は基本ネイガウスさんとしている。
今日も今日とてネイガウスさんと晩御飯を食べたあと、こうして私はネイガウスさんの部屋でくつろいでいるわけで。

「ネイガウスさーん」
「なんだ」
「ネイガウスさんの授業、強化合宿でもあるよね?」
「ああ、そうだな」

じゃあ参加するー。と、紙のその欄に丸を書いた。
いやだってネイガウスさんいなかったら一週間も耐えられる気がしない。
寂しくてウサギのように死んでしまうかも。ネイガウスさん欠乏症になっちゃいそう。
別にネイガウスさんの授業がなかったら合宿に参加しないってわけじゃないんだけど、不安が大きすぎる。情緒不安定どころか挙動不審になるかもしれない。
もちろん、本人には秘密だ。
ていうかそんなんバレたら怒られる。

「称号はどうしよう。手騎士は丸しておくとして…」
「手騎士になるなら医工騎士は希望しておけ。自分の血を使うからな。自分の治療もできる」
「そっか。じゃあまるー。でも竜騎士も欲しい」
「じゃあ入れておけばいい」
「でも銃って弾が消耗品じゃん。それに、ネイガウスさんは詠唱騎士の資格も取ってるしそっちの方がいいかなって。でもそれなら物理攻撃が出来ないのは痛いかもしれない。もし懐にでも入られたりしたら…」

ぶつぶつと悩んでいるとネイガウスさんがほう、と感心したように声を漏らす。
視線を向けると僅かながらに笑ったネイガウスさんがこちらを見ていて、少し、その、照れた。

「なんですか」
「よく考えているな。確かに、接近戦は得意としていないからな。ただ訓練生のうちからあまり希望しておくと全てが中途半端になるぞ。まあ、お前はまだ訓練生だ。後からでも称号は取れる」
「…そう、だなあ」

とりあえず手騎士と医工騎士に丸をして、それでも悩む。
それで、特に何を思ったわけでもないんだけど、ネイガウスさんに気付かれないように詠唱騎士にもチェックを入れておいた。
確かに、称号は後からでも取れるんだけど。
うへへ、お揃いだ。なんて。
私、ばかみたい。