20

「説明してください」
「何をだ?」
「どうして生徒を襲ったんですか」
「……。」
「黙ってないで、説明、してよ…」

ねえネイガウスさん。
名前を呼ぶけど、その人は返事をしてくれない。
私の言葉を、決して否定しないネイガウスさんに、少し、ショックだった。
お風呂場で朴さんや神木さん、奥村くんを襲った屍。あれはネイガウスさんの使い魔。
だから、間接的にあの出来事はネイガウスさんの仕業ということになる。
なんで、こんなことを。
それが分からないから、私は今こうしてネイガウスさんに問い詰めているのだ。

「奥村くんと、関係が?」

奥村燐とは関わるな。お前が後悔することになる。
あの時の言葉が、このことに繋がっているとしか思えない。
今思えば、ネイガウスさんが私にわざわざそんなことを言うなんて、おかしなことじゃないか。
その名前を口に出すと、ネイガウスさんは思い詰めたような、悲しい、そんな顔をした。
なん、で、そんな顔すんの。
こっちまでそんな顔になっちゃいそうで、ぐっと顔を引き締める。
だめだ、私は今、怒ってるんだ。
でもネイガウスさんの悲しそうな目は私をとらえていて、私のちっぽけな意思は情けなくもすぐに揺らいでしまいそうになる。
辺りはうるさ過ぎるくらい、静かだった。

「青い夜…」
「え?」
「失うのは、もう充分だ」

ネイガウスさんの手が私の頭を撫で、頬をつたう。
ネイガウスさんの言葉の意味は全然分からないけど、なんだかとても泣きそうになった。
静かに私から離れていったその手が名残惜しくて、私の手が追い掛けていったけど、それは届くことなく重力に従って落ちてしまう。
ネイガウスさんは、それ以上は何も言わずに、どこかへ行ってしまった。
なんだよ、もう。
何なんだよ、ほんとうに。

「ネイガウスさんの、ばーか」



それからの授業は、悲惨だった。
先生の話なんて聞いちゃいなかったしネイガウスさんの授業もあったけど寝たふりしてた。
宿題も忘れてきちゃったし聖書なんて覚えてるわけない。
もう全部がだめだめだ。
いっそ、笑えるくらいに。

「あたしは覚えられないんじゃない!覚えないのよ!!詠唱騎士なんて…詠唱中は無防備だから班にお守りしてもらわなきゃならないしただのお荷物じゃない!」
「なんやとお…!?詠唱騎士目指しとる人に向かってなんや!」
「坊!」

授業が終わると喧嘩をし始めたのは勝呂くんと神木さんで、ただでさえむしゃくしゃしてんのに、鬱陶しいなあ、なんて、思いながら私は机に突っ伏した。
神木さんの言葉なんて、ただの負け惜しみじゃないか。
ネイガウスさんも、詠唱騎士なのに。なんて、ネイガウスさんが詠唱騎士じゃなかったらきっとそんなこと思いもしないだろう。むしろ「あ、そうかも」なんて思っちゃうかもしれない。
はは、呆れるくらいネイガウスさんのことばっかり。

「この……っ」
「なによ!」

ほんと、バカみたい。