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「ネイガウスさーん。ビール飲みますかあ?」
「頼む」

アマイモンさんとボーロ買い占めしてから、私はいつものようにネイガウスさんの部屋に足を運んだ。
夕食の支度をして、ビールをテーブルに置く。
ネイガウスさんがジョッキを少し傾けて私に差し延べてきたのを見て、私はまたビールを手にとり、プルタブを開け、そのジョッキに金色の泡立つ水を注いだ。
ありがとう。
小さく呟かれたその言葉に、私はいくらでもその水を注いでやりたくなる。

「ザワークラウトは?」
「いる」

本当に、ネイガウスさんはビールとザワークラウトがあったら生きていけるんじゃないのってくらい、この二つが好き。
そんな、お風呂上がりで、いつもより薄着で、ちょっと髪の毛が濡れてるネイガウスさんはそれはもう色っぽくて、魔法円や傷だらけな腕も、ビールを飲むたび動く咽や、水が滴る首筋や、近くを見ているようで、遠くを見ている目も、疲れたような顔も、なーんかいやらしくて、思わず、私はネイガウスさんを食い入るように見つめた。

「…なんだ」

でもさすがに見すぎたようで、ネイガウスさんと目があい、不思議そうな顔をされた。
私はへら、と苦笑いをして、頭をポリポリと掻く。

「いやあ、ビールが似合うっす」
「馬鹿か」
「ネイガウスさん限定で、そうだと思う」

照れるそぶりも見せずに、そう言ってやるとネイガウスさんは嫌そうな顔をして私から顔を背けた。
別に、本気で嫌がってるわけじゃないって、知ってるから、私は緩めている口元を直すことなく、今日の夕食の肉じゃがに手をつけた。

「ネイガウスさん」
「なんだ」

ネイガウスさんの目が私を捕らえる。
その目は、その低い声は、私をずっと支えてる。
その傷だらけで落書きだらけの腕は、私をずっと支えてる。
ネイガウスさんは、私の支え。
楔、とか、そんな存在。

「うへっ」
「…気味が悪いぞ」

そんなのネイガウスさんに言われたくありませーん。
にやにや笑う私に返された言葉に、私はさらにへらへら笑いながらそう返事をした。
ため息ついたネイガウスさんがまた空になったジョッキを私に差し出してきて、私はまたビールをジョッキに注ぐ。

「私ね、ネイガウスさんのおっきいベッドでネイガウスさんに子守唄歌ってもらいながら眠るのが夢なんだ」
「そんな夢は捨てろ」
「捨てません」

絶対に。
そう言うとネイガウスさんはため息をついた。
私だってネイガウスさんが子守唄歌ってるとこなんて想像できないよ。
だから、いつかしてほしいな。

「ネイガウスさん」
「…なんだ」
「呼んだだけ!」

あなたがいるだけで、私の世界は色付くの。
あなたはそれを、知ってるのかな。
だいすき、ネイガウスさん