02

「人間…!?」
「まあまた、随分と可愛らしい」
「これは…制服か」
「でもなぜ人間が…?」
「人の皮を被った悪魔かもしれん!」

バシャアッといきなりかけられたのはまた水で、わけが分からないなりに私は頭を必死に働かせながら、水のせいで冷えたのか、それとも恐ろしさからか、ガタガタと自分の体を震わさせていた。

「聖水が効かない。やはり人間か」
「おい!お前は何者だ?」

周りにいるのは黒いコートを身に纏った集団。
その中にはまるでピエロのような格好をした人もいる。
ひいいいとなんとも情けない声をあげて、私は自分の体を抱きしめた。
怖い怖い怖い何これ何これ何これ!

「答えろ!」
「ひっ!はひっ、ひ、小川っちとこで、でですっ!!」
「まあまあネイガウス先生、その子怯えているじゃありませんか。さあお嬢さんコートをどうぞ」

ガチガチに震わえている状態で、ピエロさんは自分のコートを私にかけてくれた。
紳士的!と思うところかもしれないけど生憎恐怖のあまりそんな気さえしない。

「さすが、古い書庫から出てきたものは違いますね〜。悪魔でなく人間を召喚するなんて。いいだろう。私がこの子を引き取りますよ」
「フェレス卿!危険です!!」
「危険?ははは、そんなわけないじゃないですか。こんなに怯えて、聖水も効かない。この子はただの女の子だ」

そのピエロさんに、ぽん、と頭に手をのせられて、そして優しく撫でられた。
もう大丈夫。
そう言ってくれているような気がして泣きそうになるのをぐっと堪えた。

「では、とりあえず召喚したのはネイガウス先生ですし、一緒に来てくれますか?」
「ああ」

さっきの私に水かけたり怒鳴ったりしていた眼帯の人が返事をした。
うわああ嫌だあ。
なんて思っていたのが顔に出ていたのかそいつにギラリと睨まれた。
泣く。年甲斐もなく泣いてしまいそうです。
それでもピエロさんに優しく手を差し延べられてしまえばそれを手に取ってしまっていた。
今はもう、この人に縋るしかない。
直感どころか、それしかなかった。