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「結局あんたの使い魔役に立たなかったじゃない」
「すいません…」

やっと拠点に戻って来れた時、私はもうくたくたになっていた。
私も化燈籠を運ぶのを、手伝ったからだ。
なんせ、私が召喚したゴーレムが重たいものを運べなかったのだ。
じゃあ荷物持たせれば?ってなったんだけど、ゴーレムが小さすぎて、荷物を引きずっていたからもうボーロあげて帰してあげた。
それで出雲ちゃ…出雲様にあんたも運べとの命を授かり、今に至る。

「出雲ちゃん、ちょー鬼…」
「当たり前でしょ?チームワークよ」
「何でだろう。チームワークって言葉がすごい都合のいい言葉に聞こえる」
「気のせいじゃない?」
「なるほど」

地面にドカッと座り込み、スポーツドリンクを手に取ったあと、お疲れ様の意味を込めて出雲ちゃんの使い魔ボーロをあげた。
おいしそうに食べてくれたから、どうやら喜んでもらえたみたいだ。
悪魔を召喚できたはいいものの、使えなかったら意味ないなあ。今度ネイガウスさんに特訓してもらおう。なんて考えながら、ゴクゴクとスポーツドリンクを一気飲みして、ブハアッと思い切り息を吐く。
まるでオッサンね。と出雲ちゃんに言われて、とりあえず返す言葉もなくアハハと笑っておいた。

「お、宝の次は神木と小川かにゃ〜」
「先生」
「実戦任務参加資格取得、おめでとー!」

にゃはははとビール片手に霧隠先生が笑いながらこちらへやって来た。
いや、先生まじで酒臭いです。
ていうか宝くん一人であれ運んだのか。何者なんだよ。

「小川はちゃんと上手くできたか〜?」
「いいえ。足しか引っ張ってません」
「にゃっはっはっ!まだまだだな!」

当たり前でしょ悪魔祓い習いはじめて半年も経ってないのにさ。
どうやら私は霧隠先生に完全に苦手意識をもってしまったらしく、少し、顔が引きつりそうになった。
だってこんな能天気そうに関わってくるくせに、どこか探るようなところがあるから。

「お前には期待してるぞ」
「…はあ」

どういうことだ。
私から離れていく先生を見ながら、変には思ったけどあえて追求はしなかった。
よくも悪くもって感じだ。
小さく息を吐き、目の前で揺れる焚き火の炎を眺める。
しばらく何も考えなかったような気がする。
ただ炎を眺めていると、森の方でガヤガヤガラガラ音が聞こえてきて、残りのみんなが無事、ここ拠点に戻ってきた。

「バンザーイ!!無事帰還や〜!!」
「おっ、お疲れさん。無事戻ってきたな」
「!?なにい!?お前らもうクリアしてたんか!?」
「遅かったわね。使い魔にやらせたわよ。宝の方が早かったけど」
「宝くんて何者なんや……」

みんな無事に戻って来れて、一気に賑やかになり、少し場も明るくなった気がした。
ただ少し気になるのが、視界の端でメフィストさんとアマイモンさんが映ってるっていうこと。
森の上で二人がこっちを見学するかの如く覗いていて、メフィストさんなんか優雅に椅子に座ってお茶してる。
一つ、嫌な予感がした。
最近嫌な予感がすごくくる。思い出すのはあの遊園地の出来事で、できれば奥村くんと遊んでくれるなよ、と、心の中でもお願いした。
だけど、

「ひゅ―――…シュタッ」

そんな願いもむなしく、アマイモンさんはこっちに降りてきてしまった。
流れ星も効かない。
もう少し労ってくれてもいいと思う。