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学園生活が始まり数日が経った。私はビックリするほどクラスに馴染めなかった。
原因は私にあるとも言えるけど、うん、ため息がとまらない。
あるクラスの女の子に奥村先生の連絡先を教えろと言われた。なんだか偉そうな物言いで、教えてやる義理もなかろうと自分で聞けばとあしらえば女子の中で孤立。このクラスでも権力のある女の子に楯突いてしまったらしい。
男の子たちも色々察して必要以上絡みにこない。
私はビックリするほどクラスに馴染めていない。


「小川さん、おはようございます」
「あ、おはよう〜奥村せ、奥村くん」


奥村先生と挨拶するだけでギロ、と視線。
女の子は怖い。こんなに人気な奥村先生すらなぜこんなに人気なのかと怖くなってきた。


「小川さん、おはよう」
「勝呂くん、おはよう」


勝呂くんと挨拶すれば、ひそひそと声。
女の子は怖い。勝呂くんも囁かに人気があるらしく、少し会話をすれば悪口の格好の餌食だった。
以前、大人しい感じの子に話しかけてみるも見事に撃沈。ああ、さようなら私の華々しい学園生活。


「出雲ちゃん。朴ちゃん。お昼食べよう」
「食べよう!」
「…なんで毎日あんたと昼食べなきゃいけないのよ」
「ふっふっふっ」


一人ぼっちなんて耐えれないから昼とかは出雲ちゃん、朴ちゃんのところへお邪魔させてもらっている。
クラスのことについてはもう洗いざらい話していて、出雲ちゃんなんかは特に共感してくれた。とても意外だ。


「ていうかね、なんで奥村先生があんなにモテるのかっちゅー話だよね」
「でもかっこいいよね。頭もいいし、まさに完璧って感じだよ」
「興味ない」
「でも勝呂くんも人気あるんだよ、密かに。悪そうなやつには少し惹かれちゃうみたいなアレかな」
「2人は私のクラスでも有名だよ」
「興味ない」


これぞガールズトークだ。ひとり興味無いのいるけど。
朴ちゃんとは誰が一番かっこいいかで盛り上がったり、出雲ちゃんとは塾の話で盛り上がったり。
こういうのを求めてたよね。ご飯食べながらお友達とおしゃべりして。
なおさらクラスに戻りたくなくなる。


「あっ!出雲ちゃん!朴ちゃん!ちとこちゃーん!」


中庭を三人で歩いていると志摩くんに声をかけられた。すごい剣幕で出雲ちゃんが怒っている。そんなにカッカしなくてもいいのに。でもなぜか志摩くんは嬉しそう。
そしたら今度は奥村くんが大きな声で『悪魔を見えなくする方法』について聞いてきて、ナイスジョブな出雲ちゃんが、中二病が!とこれまた大きい声で言い、あまり目立たずには済んだ。
なんで奥村くんはそんなことを聞くのだろうか。なにかまたあったのかな。
塾は今日もお休みで、二日連続休塾なんて今までなかったから、少し不安になった。