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祓魔塾があるからなのかどうか、私は二人部屋を贅沢に一人で使用している。運が良かったのかどうなのか、それはますます私を孤立させているように思えた。
一人でいると魍魎たちが私のもとに集まってくる。
寮にきてからというもの、魍魎たちの数は日に日に増え、掃除をしても、掃除をしても、この子達はあまり私のそばを離れようとはしなかった。
電気もつけず暗い部屋で考えていることは1つ。ネイガウスさんのことだった。
どうして連絡してくれないの。
家には帰ってないの。
私が学園にいきなり入学していて、驚いていないかな。
考えても考えても、気持ちは晴れない。
もやもやと気持ちの悪いまま、寝付けもしないのに布団にもぐり目を閉じる。
そんな葛藤をしていると、携帯電話が鳴った。
もしかして、と淡い期待もむなしく、奥村先生からの着信だった。
動く気力もなく、声を出す気力もなく、
私はそのまま、携帯を置いた。

そのまま何回か着信が鳴ったけど、
全部、無視をした。



「昨日、電話をしたのですが」


翌日学校へ行くといつものポーカーフェイスな奥村先生が声をかけてきた。


「……あ、すみません、マナーモードにしていて」
「どうかされましたか。昨日から祓魔塾も再開して、皆さん心配されてましたよ」
「すみません…」


ため息の音。
私は奥村先生の顔も見れずに、下を向いている。


「……これ、昨日行った実戦のレポートと今行っている授業の内容をまとめたものです。目を、通しておいてください」
「はい、すみませんでした」


さすが優秀な人だ。
こんなものを用意してくれて、私が授業に遅れないようにしてくれて。
私なんて、ネイガウスさんがいなくなった“だけ”でくたばってしまっている。
分かってはいる。
分かってはいるけど。


「今日はこれますか?」
「……、はい」


どうしても体が、脳が動かない。
あなたがいないと。
家族がいないと。
私はただ、ネイガウスさんのことばかりで、
もう何も出来ない。