06

「だあぁ、この人使いの荒い…」

重たい荷物を両手に抱えながらふらふらと廊下を歩く。
今日はネイガウスさんのお使い。
あ、違った。パシリ。
私は言われた店の鍵を借りて店まで行き、言われた通り買う物が書かれた紙を渡しただけなので、このくそ重たい袋の中に何が入っているかは分からない。
こっそりメモを見てみたけど知らない言葉ばっかりで解読不可能だった。

「あ、あなたは…」
「ん?」

よろよろとネイガウスさんがいるところまで歩いていると、前から人が来ていた。
ネイガウスさんと同じ黒いコートは着ているけど、若くて高校生くらいの男の子だった。
まさしく、好青年のいう言葉が似合いそうだ。

「えーと、どなた?」
「あ…失礼しました。祓魔師の奥村雪男です」
「小川ちとこです」

やっぱり祓魔師だった。
それにしても若いから驚いてしまう。
私とそう歳も変わらなさそう。
奥村さんは綺麗にお辞儀をしてくれたので私も返そうとするが何分両手に抱えた荷物が重たくてできない。
ていうかお辞儀なんかしたら全部バラまけてしまいそうだ。
落としたりしたらあの人確実に屍を召喚してくる。
やだもう怖い。

「も、持ちましょうか?」
「いや、いいですよ。重たいし」
「だったら尚更」
「あっ」

苦戦して持っていた荷物を軽々と、奥村さんは造作もなく私から取り上げた。
さすが男の子、というべきか。やっぱり力が違うんだね。
とか感心してる場合ではない。
こんなところをネイガウスさんかメフィストさんに見られたら訓練生の分際で〜だとか言われるんだから。

「いいです!私の仕事ですから!」
「でも危ないですよ。重たいじゃないですか。女性なんだから」
「ああああ後が怖いんです!私のことはお気になさらずに!」

無理矢理奪い返せばその勢いが余計に腕に負担をかけて私は潰れたような声を出した。
そんな私を見て、奥村さんがくすりと笑う。
もちろん、笑われていい気はしなかったから、ムカッときたのもあるし、恥ずかしかったのもあるためそのまま無視するように私は奥村さんの横を通りすぎた。
だけどその人は私を追ってきた。

「じゃあ僕からお願いしましょうか。その荷物を持たせてください。それとも、持たせなさい。がいいですかね」

そう、言われましても。
苦笑いを浮かべた私は返事を考えたけどそんな間に荷物は奥村の手の中。
この人、大人しそうな顔して…。

「…お礼はしませんよ」
「ははは、いりませんよ」

さすがの私も、胸ときめきました。