07

「信じられん…」
「うはーっかわいー幸せ!」

魍魎たちが、私に懐きました。

「これで私も手騎士!?」
「…気が早いぞ」

わらわらと私に寄ってくる魍魎たち。
群れたらキモいとか菌類だとかはちょっともう関係ない。
魍魎可愛いよねちっちゃくてちょーいいよね!
そもそも何で魍魎が私に懐いてくれたかと言うと、もちろん、アレである。

餌付け

何気なくある魍魎くんをたまごボーロで釣ってみた。ら、意外とお気に召したらしく次の日には一匹、その次の日には二匹とどんどん私のもとへ来るようになったのだ。
たまごボーロいいよね私は今でもよく食べるよ。
餌付けに成功した私を見てネイガウスさんは心底信じられないという顔をしていた。
悪魔の中では最下級の魍魎。
いやいや、でも、そんな魍魎が何百匹何千匹といたら、さすがに質が悪いだろう。

「もう魍魎は私の手中にある」
「よかったな」
「えへへ!」
「はたから見たら虫にたかられてるようにしか見えないな」
「虫じゃないし!」

図鑑で見た蛾みたいな悪魔の群れと比べたら全然いいだろ。
なんだったけ、あれ。
ああ、虫豸だ。チューチ。
あれに比べたら魍魎なんて可愛いもんだよ!

「お前みたいな脳天気な阿呆には近寄らないと思ったんだがな」
「やっぱりほら!ネイガウスさんが一流の手騎士だからだよ!」
「……そうか」

くしゃりと頭を撫でられて、かああと顔が熱くなった。
いっつも私をパシッたりするのに、この人ってこんなところがあるから依存しそうになる。
へらりと笑うとネイガウスさんも柔らかく笑ってくれた。
ネイガウスさんの手は傷だらけで血だらけだし、魔法円だっていっぱいあるけど、
こんなにも暖かい。

「うへへ、ネイガウスさーん」
「気色悪い」

こっちに来てから一週間くらいが経った。
できるだけ平然を装うけど、本当は気持ちなんて全然ついていけてない。
突然知らないところに来て、
突然知らない人に世話になって、
祓魔師になれとか言われて、
悪魔が見えはじめて、
わかんないことばっかりだし、もうすぐ塾も始まってもっと大変なことになるだろうし。
それでも、これだけは確実に言える。
私を召喚してくれたのが、ネイガウスさんで本当によかった。
こき使うけど何だかんだで私を一人にしないし、何だかんだで優しいし、ネイガウスさんの回りくどさが大好きだ。

「今度魔印教えてくださーい」
「ああ。じゃあこのプリントのコピーを頼む」
「……はい」

でも使い魔扱いはやめてほしい。