12

「酒盛りをしよう」
「嫌だ」
「拒否する」
「……。」
「逃がすかあ!」
「ぎゃああああ!!」


食満と七松。逃げようとしたら二人がかりで両腕を拘束されてしまった。ああもうなんで私がこんな目に遭わにゃならんのだ。
おい立花。お前がいながらどういうことだよ。
こいつらが私の言うことを聞くような玉か。
それもそうだな。
なんて矢羽音で会話をしていると内容さえ分からないものの音がしっかりと聞こえていた七松が不機嫌そうに「仙蔵とばかり話をするな」と思いっ切り手を握ってきた。正直洒落にならんくらい痛い。骨やられる。


「小平太、留三郎……放してやれ…」
「嫌だ!私はこのままがいい!」
「俺もずっと初子の傍にいよう」
「迷惑だ」


天の声!中在家くん好きよ!なんて思ってみても結局こいつらは放してくれない。
酒盛りじゃないの。もういいよ酒飲もうよ。


「ダメだよ!初子はすぐ内出血して痣になるんだから!!」


意外にも、ペイペイッと二人を引きはがしてくれたのは善法寺だった。いや、私そんなに痣出来ないけどね。丈夫な体を持ちました。でもまあ助けてくれたのに違いない。熱湯の件は綺麗に忘れてやろうと思う。


「でもなぜ急に酒盛りなの」
「初子をでろんでろんに酔わしたかったからだ」
「正直にドウモアリガトウ」


ニカリと笑って答える七松にため息が出る。少しくらい嘘つけよ、自分の欲に忠実だなお前らは本当によ。ああ私も酒は好きだけど、もう嫌だなんかされそうで怖くなってきた。


「念のために聞くけど、立花も中在家もいるんだな?」
「ああ」
「安心しろ…」


あー、まあ二人がいるなら大丈夫か。私も飲みたい酒があったんだ。じゃあ今夜どこに行けばいい?と問えば立花、中在家除く4人の顔がパアッと明るくなった。


「大丈夫だ案ずるな!初子は俺が守るからな!」
「お前が1番心配なんだよこのド変態が」
「…っ」
「うっとりすんな気持ち悪ぃな!」
「相変わらずのきもんじだな」
「仙蔵に言われても興奮しないな」
「興奮したら私はお前を殺しかねん」
「初子。ちょっと俺にきもんじって言ってみてくれ」
「言わねーよ」
「やばいその顔すげぇ可愛い」
「誰かこいつを止めてあげて」


いや、こんな奴らと酒盛りなんかして大丈夫なのだろうか。了承しといてなんだけどなんか不安になってきた。いや最初から不安なんだけど。
いざとなったら土井先生の名前を叫びながら逃げよう。よし、そうしよう。



(六年生のお誘い)

「初子はきっと酔ったら甘えっ子なんだぞ」
「おお。それはいい」
「冷たい初子もいいがそんな初子も可愛いだろうな」
「言っておくけど、私一人で一升瓶空けるからね」
「「「ええええ!!」」」