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昨日の酒盛りは壮絶だった。
七松と食満が一発芸とかなんとか言って脱ぎはじめ「初子!俺のを見ろ!」とか言いはじめるし、善法寺は「あははー綺麗だなあ」とか言いながら酒撒き散らすし、潮江はなんだかんだ学園一忍者してるからか三人ほど酒に飲まれるようなことはなかったが、私にやたら酒を注ぎ私への愛を語られた。三禁はどうした三禁は。
それに比べて中在家はほろ酔い気味で実にいい飲み癖をしていた。あんた最高だよ。
まあ、あと、1番びっくりしたのが…奴だ。


「ええい貴様ら!初子に近付くな!」
「な!仙蔵ばっかりずるいぞ!!」


そう。立花仙蔵。
あの眉目秀麗成績優秀な立花仙蔵だ。こいつがとんだ伏兵だった。酒を飲み始めたらベタベタベタベタ纏まりついてきて、暑いことこの上なかった。まるで変態三人衆のようではないか。立花仙蔵の印象が一気に落ちていった瞬間だった。



「上等だ仙蔵!表へ出ろ!」
「ハッ!ドMが粋がるなよ!」
「じゃあ私と勝負だ!」
「体力しか取り柄のないような奴が何を言う」
「じゃあ俺と」
「どうせなら四人でかかってきたらどうだ私にかかれば瞬殺だ!」
「四人!?もしかして僕も入ってる!?」


そうこうしているうちに五人で大喧嘩が始まった。あ、うち一人は巻き添えとばっちり。不運な善法寺だ。でもそいつも酔ってるから「よぉし、じゃあ僕も行くぞ!」とか言いながらそのぐだぐだに自ら巻き込まれていったのだけど。
喧嘩なら外でやれ!とかいっちょ前に注意してもそいつらの耳には全然届いていない。


「中在家、もうここは出よう」
「…そうだな」


呆れながら中在家にそう言うと、中在家は私の手を掴んで、物音も立てずに一瞬で部屋の外に出た。さすが中在家。男だ。
私たちが出ていったことに全く気付かない奴らをいいことに私たちはとりあえず静かな場所まで移動して、飲み直すことにしたのだった。まあ、長屋の縁側で、二人とも、そのまま寝てしまったわけだが。


「あー…頭痛い…」


次の日が休日でよかったと本気で思った。
床の固さで目が覚めた私と中在家は速やかにその場を片付けると大した話もせずに解散した。
完全に二日酔いだ。
痛みと軽い吐き気に襲われながらも自分の部屋に行くと同室のツユコに「くっさ!入ってくんな!」と言われてしまった。
大分傷付いた私は歯を磨いてお風呂に入って、それから食堂にみそ汁飲みに行ったんだけど、そしたら昨日飲んで大喧嘩してた奴らがボコボコになってみそ汁啜ってたから、何も言わずに踵を返した。
だってボコボコの野郎たちが固まって沈んだ空気の中みそ汁飲んでるんだぞ。
あれじゃ食堂のおばちゃんが可哀相だよ。
仕方ない。みそ汁は自分で作ることにしようじゃないか。


「もうあいつらと酒盛りなんて絶対しねぇ」


そう心に誓ったある日のこと。



(六年生と昨夜のこと)

「なんで初子と長次が途中でいなくなってたんだ!」
「大人しそうな顔しやがってあいつ…!」
「すまない、何があったか教えろ。途中から記憶がないのだが」
「でもまあ仙蔵の株は下がったよね」
「なに!?私は一体何をしたんだ!」
「ああ、お前を見る目が冷たかったぞ羨ましいな」
「黙れき文次郎」