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「まーてえー!」
「待ちませーん」


塀の上や、さらには外。うろちょろと素早く私は走りまわる。
ただいまわたくし、アルバイト中でございます。


「外出届出してください!」
「面倒なのでイヤでーす」


内容は無断外出のお手伝い。
忍術学園で追跡の鬼とかなんとか言われてる事務の小松田秀作の気を引くことだ。
小松田秀作、こいつがまたとんでもない奴で、他の仕事はてんで出来ないくせにサインをもらうのはかなりの腕だったりする。
こいつのおかげでサインなしじゃ忍術学園の出入りはできないしくせ者が現れたとして、すぐに追跡しようとしてもサイン書かないと絶対に出してもらえない。そんなことが多々ある。完璧な門番だけど、完全に困ったさんだ。
おいおい、こんなんじゃあおちおち秘密の逢い引きもできねーじゃねぇか。
そんなことで、雇われてるのがこの私ってわけだ。


「小松田さーん。私もう敷地から出ちゃってますよー」
「あああ!だめだって!」
「よっと」
「うわああ!」
「あ、不運ですね。そんなところに落とし穴なんて」
「もー!初子ちゃん!」
「はい。初子ですよ」


予め掘っておいた深い落とし穴に上手いこと小松田さんを落とす。なんて、私がこんなことやってる間にアルバイトを頼んできた一組のカップルは、私が小松田さんを捕まえているために存分に無断外出していることだろう。なんて恨めしい…じゃない。羨ましいんだろう。
私はなんでこんなとこで小松田さんと追いかけっこして小松田さんを落とし穴に落としてるんだろう。そう思っていたら何だか虚しいような、腹立つようなそんな気分になって、落とし穴の中でふにゃふにゃな顔してるくせに怒ってる小松田さんに上から土をかけてやった。え?最低?私は悪くないもん。


「うわ!土かけないでよ!」
「すみません。思わず」
「思わずってなに!」
「小松田さんは虐めたくなるんですよね。喜べ」
「全然喜べないよ…」


涙目になりながらため息をつく小松田さんにまた土をかけてやりたくなったけど、そこはぐっと我慢した。
私ももう大人だからね。


「じゃあ私は行きますね」
「外出届けー!」
「また今度」
「初子ちゃんのバカー!!」


そんな小松田さんの叫びは、忍術学園中に響き渡り…は別にしなかった。



(小松田さんと秘密業務)

「あれ、小松田さんまだ落ちてたんですか?あれから2時間は経ってますよ。おまんじゅういりますか?」
「その前に出してもらっていいかな」