02

女は、恋に生きる生物だ。


「私っ ずっと前から貴方のこと…」


恋に生きる女は美しいものだ。
儚いくせにしっかりとしていて、華やかで、艶やかで、鮮やかで、麗しく、美しい。
女は恋をする自分が、一番好きだ。
私が見てきた世界では、こう、思わざるをえない節がある。だって美しいのだから。美しいものは、誰だって好きである。

でもくノ一は違う。
それらは女である前に、忍であるからだ。
色は敵を騙すためのもの。己の利益のためだけのもの。

私は女でありたい。
誰かを愛して、愛されて、女子の幸せを手に入れたい。
しかし、誰かを慕うたことは、まだない。


「さすが六年い組、眉目秀麗成績優秀な立花仙蔵くん。くのたまにもモテモテだねー」


ぺちぺちと間抜けな音を立てる拍手を木の上から贈ってやると、その私のちょうど真下で今さっき同級生のくのたまから告白をされていた立花仙蔵は嫌そうな顔して私を見上げた。


「相変わらず気配を絶つことだけはプロ並だな。佐倉初子」
「だけって、酷いな」


苦笑して、木から降りる。
立花は私よりも背が高いから、今度は私が立花を見上げる番になった。


「あの子は就職しないんだろうなあ」
「何故わかる?」
「あの子が恋してるからだよ」
「…。女心というやつか」
「そう。くノ一が忍者より少ないのは女として幸せになりたい人が多いからっていうのも大きな理由なんだよ」
「なるほどな」


私には分からん話だ。
そう言って立花は肩にかかったその長くて綺麗な髪をサラリとはらった。
ああ、男には分からないだろう、私もそう思う。


「お前はもちろん、プロだろう?」
「ん?」


さも同然のように言われて、きょとんとしてしまった。
そうか、そうかそうか。私はそう思われているのか。もちろんなんて言われてしまうと、否定ってしにくいものだな。
そうやって断言できたら、どんだけ楽か。


「それはそうと、女は美しいなあ。告白、受けるのか?」
「馬鹿を言え。私は就活で忙しい」
「そっすよねー。ああダルい」


ゴロンと寝転がると立花は私を見下ろしながらハァとでかいため息をついた。
なんて失礼な、なんて思いながら私はゆっくりと瞬きをする。


「お前はいつも無気力だな」
「何を言うか」
「これで成績がいいというのだから、世もおかしいものだ」
「存在自体が絵空事ってか」
「いい例えだ」


ニヤリ。
面白そうに歪められた顔に、ものすごく腹が立った。
ムカムカと沸いて来る苛立ちを隠すことなく、私は素早くと体を起こす。


「よし、お前はコロス」
「やってみるがいい。できるならな」
「あ!!待てコラ!!」


一瞬で逃げた立花を私も瞬時に追い掛けた。
しかし相手はさすが男。
早過ぎてすぐに見失ってしまい、私は一分も経たない内に飽きてしまいいつものように土井先生と山田先生の部屋に転がりこんだ。
 

「しぇんしぇー。ひまー」
「帰れ」


酷いや先生。



(立花くんと乙女)