05

「で、どういうことなんだ」
「説明をしてくれ!」


佐倉初子
ただ今尋問中です。


「あの、ていうかね、私次授業あるんですよ。マラソンなんですよ組み手なんですよ。ていうかもう昼休み終わるからね。遅刻するとシナ先生まじはんぱないんだからね」
「じゃあどういうことか教えてくれないか!」
「なぜ土井先生なんかと、接吻なんかしたんだ!」


なんかって、おいおい。馬鹿らしくて頭がくらくらしてきちゃったよ。
そう、なぜこいつらが必死こいて私を探していたのか。それはどこからともなく私が土井先生に接吻したっていう情報が流れていたからだ。軽率だった。こいつらの耳に入ればこのようになることくらい、想定できていただろうに。


「しかも初子からと聞いたぞ」
「初子!私も私も!」
「特に理由はない。強いて言うなら土井先生がかっこいいのがいけないんだ。ちょっと七松、顔を近付けるな」
「私はかっこよくないのか!」


必死で訴える食満にハッと鼻で笑ってやった。ガーンという効果音が付き添うような顔をされてしまったが別にいい。可哀相などとは微塵も思わない。むしろいい気味だ。


「初子、私は…?」
「よしよし」


今度は七松がその大きな目をうるうる輝かせて私に問い掛ける。しかし私はそれが策だということをもう随分と前に知ってしまっているので、可愛いとは思うが心が揺れたりなどは決してしない。うりうりと頭を撫でてやるだけで満足そうにするので大体これであしらう。
まるで私と山田先生のようだ。
今度は私が山田先生ポジション。
相手が違うだけで人間こんなにも違うもんなんだ。
よし今日は同室の奴にも隠してたいい酒を土井先生と山田先生のところへ持って行って語り明かそう。それが今日のご褒美。
100%追い返されるだろうけどね。
さてと、と腰をあげるとちょうど鐘が鳴った。いけない、早く集合をしなければ。


「じゃあ、午後の授業、頑張ってね二人とも」
「っ!ああ!!」
「百万馬力だぞ!」


しっぽが見えるよしっぽが。嬉しそうに手を振る二人に私も手を振りかえし、本当ペットみたいだなあなんて思いながら私は集合場所の門へと急いだ。まあ面倒なのは変わりないが、ペットだと思えば可愛いもんだよ。考え方が酷いって?ふふふ、そんなの自覚済みさ。



(食満くんと七松くん)