4.チャンスは作るもの


仮入部してから早数日、やっとマネージャー業にもなれてきた、とかそんなうまくはいかない。

「マネージャァ!!ドリンク回ってねぇぞコラァ!!」
「すみませぇーんっ!」

鷲匠先生めちゃくちゃ怖い。
仮入部とはいえマネージャー、容赦なく怒られるので朝も放課後も半泣きになってる。でもこんな怖い先生がいる部活やめてやるぅ!とはならない。
自分が本当に失敗してる所を怒ってくれてるだけだし、理不尽に怒ったりはしない。だから怖くてやめるとかそんな事にはならない!!

「若利ばっかり見てねぇで仕事集中しろ!!」

……はず。多分。
ていうか見てるのバレてた。





放課後の部活も終わって、練習着から制服に着替えて外に出れば、茜色の空が広がっていた。
今日も結構怒られたな、なんて考えつつバレー部の先輩達が次々と帰るところを眺めつつ、時々お疲れ様です、なんて声をかける。

「…やっぱり牛島先輩だけ他の先輩達と一緒に出てこないな。」

何で終わったのに先に帰らず、帰っていくみんなを眺めていたかというと、これを確かめるためだった。
数日マネージャーをやってて気づいたけど、牛島先輩は他の部員の人と一緒に出てこない。何でか気になって赤毛の先輩、もとい天童先輩に聞けば、練習が終わったあとも自主練は個々の範囲でしていいらしく、若利君はほぼ毎日遅くまでしてるよ〜!と丁寧に教えてくれた。最後にそれに気づくとか若利君見すぎじゃない〜?なんてめちゃくちゃいい笑顔で言ってた気がするけど私は何も見てない聞いてない。

これはチャンス…?なんて考えが出てきた単純な頭は、自主練してる牛島先輩にドリンクとか渡そう!みたいな事を思いついたのだった。
別に練習の邪魔はしないし、応援は心の中でならするかもしれないけど声を出してうるさくするつもりもないし、なんなら本当こっそりドリンクとかタオルとか置いてちょっと練習見てすぐに帰るから!下心なんて少しも……あるけど。
チャンスは待つものじゃなく作るもの!って誰かしらが言ってたから早速有言実行だ!
あれ?有言はしてないな、不言実行だ!

そんなことを自分に言い聞かせながら、謎の気合を入れて足早に体育館に向かった。


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