[02]
休日だ。待ちに待った休日だ。
ケータイを見るとまだ八時半だったので、もう少し寝られるなともぞもぞと布団の中へと逆戻り。この二度寝の瞬間が休日だと一番実感できる。二度寝最高。布団と結婚したい。
再びうとうとと気持ちの良い眠気が襲って来た。それに身を委ねて夢の中へと行こうとした瞬間、スパーン!と開かれた障子の音と勢いに意識が持ち上げられる。
薄らを目を開ければそこには満面の笑み(いつもだが)を浮かべた十四松兄さんが立っていた。
「……なに?」
「名松おはよう!!」
「おはよう…どったの」
「お見送りして!!!」
「みおくり……」
しょぼしょぼする目を擦っていれば、どかどかと入り込んできた十四松兄さんに抱えられて俺は部屋の外へと連行される。ああ、愛しの布団…。がっくんがっくん揺れる乗り心地の悪い十四松列車に連れられて玄関まで来てしまった。
そこには兄弟たちが全員余所行きの服を着て集まっていた。珍しく一松兄さんまでちゃんとかちっとした服を着て兄弟の中に紛れている。猫背は治ってないけど。
「お、名松おはようー!」
「ごめんな、朝から起こしちゃって…」
「や、べつにいいけど…なに?どっかいくん…?」
「仕事だよし・ご・と!」
「就活だよこのバカ!」
チョロ松兄さんによれば、どうやらやっと就職活動に本気で乗り込むらしい。へえ、珍しいこともあるもんだ、と少しだけ覚めた頭で思った。ハロワに行く前に俺に見送りしてほしいとおそ松兄さんが駄々を捏ねたらしい。まあそういうことなら理不尽に起こされた怒りは鎮めておこう。
今だ完全に覚醒しない脳を回転させてよろよろと両腕を上げる。「ん」と言えばおそ松兄さんが嬉しそうにぎゅっと俺に抱き着いた。これが偶に見送りの儀式のようになってしまっている。いつもではないが、何か大きなことがある時や家から離れる時間が極端に長いときはこうやって兄弟たちを見送ったり見送られたりしている。
兄弟一人ひとり抱きしめて行けばどうやら満足したようだった。行ってきますと玄関を潜る彼らに少しだけ笑って頑張れ、と手を振れば嬉しそうにそれに応えてくれた。
皆が出て行った後、暫く立ったまま目を閉じてこっくりこっくりと船を漕いでいたが、やっとずるずる足を引きずって自分の部屋へ戻る。もうお察しの通り、朝は物凄く低血圧です。アラームも本当に起きなければいけない時間の二時間前から五分おきに仕掛けてます。
****
兄たちが就活に行った日から一週間程が過ぎた。未だに一度も家に帰ってこない。そろそろ俺も暇になってきた。一人っ子はこんな気持ちなのだろうか。
トド松兄さんからの『就職先見つかったかも〜(*'ω'*)』というメッセージ以降、全く動いていない兄弟のグループを一日一回チェックするのが俺の日課になっている。兄たちは大丈夫だろうか。ブラックな企業や何かヤバい企業に巻き込まれてなければいいのだが。
だが流石にこれ程までに帰って来ずほったらかしにされ、あまつさえ連絡もないとなれば俺も段々と寂しさを通り越して拗ねる。
一松兄さんに懐いている猫も寂しそうにニャーニャー鳴いていた。
「お前も寂しい?」
「にー」
「極端だよなぁ。最近までずーっと家に居たのに、今じゃ全く家に帰って来ない。
……あ、そうだ。かあさーん」
名案を思い付いた俺は猫を抱きかかえて母さんの元へと小走りする。母さんに手伝ってもらおう。
「そんなに心配しなくても、あの子たちのことだもの。死んではいないわよ」
「心配は心配だけど、それよりも一回も戻ってこないことに俺は大変憤ってる」
「相変わらずお兄ちゃんっ子ねえ。撮るわよー」
「何とでも言えー」
カシャ、と設定変更の仕方が分からないままの大音量のシャッター音が鳴った。俺が猫の両手を持ち上げて抱き抱えている写真を撮ってもらった。女子がやればあざといんだろうが、男の俺がやっても正直うーんという思いがある。
母さんにお礼を告げて俺は兄弟のグループにその写真を貼った。
名松:<写真>
名松:『偶には帰って来ないと拗ねるにゃーヽ(=^・ω・^=)丿』
次の日の朝起きると、兄たちは帰って来て全員死んだように眠りについていた。目の下には隈が出来ており、無精髭も生えていたあたりやはり面倒なことに巻き込まれていたのだろう。
通算二十四回目のアラームでやっと活動し出した俺は、兄たちの部屋の障子を少しだけ開けて彼らの寝顔をぼーっと見ていた。六人ちゃんとそろって少し窮屈そうな布団を見て、ほんの少しだけ笑い俺は居間へと降りていく。
ケータイを見るとまだ八時半だったので、もう少し寝られるなともぞもぞと布団の中へと逆戻り。この二度寝の瞬間が休日だと一番実感できる。二度寝最高。布団と結婚したい。
再びうとうとと気持ちの良い眠気が襲って来た。それに身を委ねて夢の中へと行こうとした瞬間、スパーン!と開かれた障子の音と勢いに意識が持ち上げられる。
薄らを目を開ければそこには満面の笑み(いつもだが)を浮かべた十四松兄さんが立っていた。
「……なに?」
「名松おはよう!!」
「おはよう…どったの」
「お見送りして!!!」
「みおくり……」
しょぼしょぼする目を擦っていれば、どかどかと入り込んできた十四松兄さんに抱えられて俺は部屋の外へと連行される。ああ、愛しの布団…。がっくんがっくん揺れる乗り心地の悪い十四松列車に連れられて玄関まで来てしまった。
そこには兄弟たちが全員余所行きの服を着て集まっていた。珍しく一松兄さんまでちゃんとかちっとした服を着て兄弟の中に紛れている。猫背は治ってないけど。
「お、名松おはようー!」
「ごめんな、朝から起こしちゃって…」
「や、べつにいいけど…なに?どっかいくん…?」
「仕事だよし・ご・と!」
「就活だよこのバカ!」
チョロ松兄さんによれば、どうやらやっと就職活動に本気で乗り込むらしい。へえ、珍しいこともあるもんだ、と少しだけ覚めた頭で思った。ハロワに行く前に俺に見送りしてほしいとおそ松兄さんが駄々を捏ねたらしい。まあそういうことなら理不尽に起こされた怒りは鎮めておこう。
今だ完全に覚醒しない脳を回転させてよろよろと両腕を上げる。「ん」と言えばおそ松兄さんが嬉しそうにぎゅっと俺に抱き着いた。これが偶に見送りの儀式のようになってしまっている。いつもではないが、何か大きなことがある時や家から離れる時間が極端に長いときはこうやって兄弟たちを見送ったり見送られたりしている。
兄弟一人ひとり抱きしめて行けばどうやら満足したようだった。行ってきますと玄関を潜る彼らに少しだけ笑って頑張れ、と手を振れば嬉しそうにそれに応えてくれた。
皆が出て行った後、暫く立ったまま目を閉じてこっくりこっくりと船を漕いでいたが、やっとずるずる足を引きずって自分の部屋へ戻る。もうお察しの通り、朝は物凄く低血圧です。アラームも本当に起きなければいけない時間の二時間前から五分おきに仕掛けてます。
****
兄たちが就活に行った日から一週間程が過ぎた。未だに一度も家に帰ってこない。そろそろ俺も暇になってきた。一人っ子はこんな気持ちなのだろうか。
トド松兄さんからの『就職先見つかったかも〜(*'ω'*)』というメッセージ以降、全く動いていない兄弟のグループを一日一回チェックするのが俺の日課になっている。兄たちは大丈夫だろうか。ブラックな企業や何かヤバい企業に巻き込まれてなければいいのだが。
だが流石にこれ程までに帰って来ずほったらかしにされ、あまつさえ連絡もないとなれば俺も段々と寂しさを通り越して拗ねる。
一松兄さんに懐いている猫も寂しそうにニャーニャー鳴いていた。
「お前も寂しい?」
「にー」
「極端だよなぁ。最近までずーっと家に居たのに、今じゃ全く家に帰って来ない。
……あ、そうだ。かあさーん」
名案を思い付いた俺は猫を抱きかかえて母さんの元へと小走りする。母さんに手伝ってもらおう。
「そんなに心配しなくても、あの子たちのことだもの。死んではいないわよ」
「心配は心配だけど、それよりも一回も戻ってこないことに俺は大変憤ってる」
「相変わらずお兄ちゃんっ子ねえ。撮るわよー」
「何とでも言えー」
カシャ、と設定変更の仕方が分からないままの大音量のシャッター音が鳴った。俺が猫の両手を持ち上げて抱き抱えている写真を撮ってもらった。女子がやればあざといんだろうが、男の俺がやっても正直うーんという思いがある。
母さんにお礼を告げて俺は兄弟のグループにその写真を貼った。
名松:<写真>
名松:『偶には帰って来ないと拗ねるにゃーヽ(=^・ω・^=)丿』
次の日の朝起きると、兄たちは帰って来て全員死んだように眠りについていた。目の下には隈が出来ており、無精髭も生えていたあたりやはり面倒なことに巻き込まれていたのだろう。
通算二十四回目のアラームでやっと活動し出した俺は、兄たちの部屋の障子を少しだけ開けて彼らの寝顔をぼーっと見ていた。六人ちゃんとそろって少し窮屈そうな布団を見て、ほんの少しだけ笑い俺は居間へと降りていく。