[エピローグ]
※犯罪を匂わせる表現があります
※喫煙表現有り
※微グロ、嘔吐表現注意
どうやら今日は全国的に雨だったらしい。起きた時にはまだ太陽も上っておらずおまけに外は土砂降り、部屋の中は逢魔時のように薄暗かった。これは今日も外には出られないな、と思い隣のおそ松とトド松に布団を掛け直してから二度寝をした。
次に目を覚ますと辺りはやはり晴れの時より比べて薄暗かった。やっぱり雨の日は聴覚的には好きだけど、感覚的にはあまり好きではないな。動かなくなった足の古傷が痛むし、何より外に出られない。まあつい最近俺の長年の相棒だった一眼レフがぶっ壊れたので外に出られたとしても絵を描くことくらいしかすることはないのだが。……あれ、そう言えばなんでカメラ壊れたんだっけ?それになんで足が動かないのに外に出たがっているんだ?…と言うより、なんで足、動かなくなったんだっけ…? うーん…ここ最近記憶があやふやなんだよなぁ…元から記憶力クソ底辺だから別にいいんだけどさぁ、流石にこの辺は知ってなきゃ人として終わってる…。
「名松、おはよう」
「あ、チョロ松兄さん。おはよう」
耽っていた思考が急に戻される。上体だけを起こしてそちらを見るとチョロ松がいつものパーカーを着てにこやかに立っていた。手には俺の真新しい黒いパーカーがある。あ、今日はチョロ松なのか。
こちらに近づいてきたチョロ松が俺の頬に手をあて、顔を近づけてくる。俺は特に抵抗するでもなしにその行為を受け入れた。 ちゅ、と軽いリップ音の後に何事もなかったかのように俺の頭を撫でるチョロ松。
「じゃ、着替えようか。バンザイして」
「ん」
大人しく両腕を上にあげる。これが相手が十四松やおそ松だと要注意だ。腋に手を突っ込んでこそばしてくる。因みに一松相手だと二度寝か三度寝に引きずり込まれる。
上半身くらいは自分でできるんだけどなあ…と思いながらもそれを口にすることはない。なぜだかしてはいけない気がした。
チョロ松は機嫌良さそうに俺の着替えを済ませていく。
きっちりとズボンを履いて手櫛で髪の毛を整えてもらったら完全装備である。チョロ松は満足げに頷いて俺を抱き上げた。
「今日夕飯なに?」
「いやまだ朝だけど!?今から朝ごはん食べるんだけど!?」
百点満点のツッコミが帰ってきた。慎重に階段を下りながら激しいツッコミだなんて本当にチョロ松は器用だなぁ。効果音だけで笑うとチョロ松も仕方ないなあ、と言った風に呆れたように笑う。
居間に入ると兄弟は皆揃っていたようで口々におはよーと声を掛けてきた。どうやら俺が最後らしく、十四松とおそ松とカラ松は既に食べ終わっているようだった。
「おはよ〜名松」
「名松兄さんおはよーさん、しー、ごーろくのすけー!」
「おはよう」
チョロ松が一旦おそ松に俺を預け、俺とチョロ松の分の朝食を取りに行く。
その間に最初はおそ松、次にカラ松、その次が一松…と兄弟順に次々に朝の挨拶をしていく。チョロ松は一番最初に終わらせてある。…これよく考えたら間接ちゅーじゃん…クソ萌える…。
「今朝はチョロ松兄さん担当だったんでしょ?」
「うん」
「どうだった?シコ松にセクハラされなかった?」
「誰がシコ松だクソ長男」
「おごぉっ!?」
メコォ゛、とおそ松の頭が沈む。その衝撃がダイレクトに伝わってくる前に一松が俺をおそ松の腕からひょいと抱き上げた。ありがとうと言うと別に、とぼそっと告げられる。ツンデレカワイイデス。
チョロ松は両手にお盆を持ちながらおそ松を足蹴にしていた。器用すぎるぜうちの兄貴は…。
「来んの早すぎだろ!もっとキッチンでゆっくりしてろよ」
「知るか。一松、名松こっち頂戴」
「へいへい」
「お兄ちゃんのこと無視しないで!」
「あ、野球?」
「そー!」
「野球はいいんだけど、延長されると番組までずれるからそこなんとかなんないかな〜」
「まあ仕方ないさ」
賑やかな居間。
俺はチョロ松が口元まで運んでくる食事をもしゃもしゃ咀嚼しながら十四松がつけたテレビを見る。
偶にチョロ松に口元を拭われながら、トド松や十四松なんかと何気ないやり取りをして、ちょっかいを出してくるおそ松がチョロ松に殴られながら朝の時間は過ぎていく。
「今日はどうする?」
「どうしよっか」
ほかほかのたまごやきを食べながらチョロ松が今日の予定を聞いてくる。特にやりたいこともしなきゃならないこともない。なんたってニートだし。
うーん、と唸っているとおそ松が窓を開けて煙草に火をつけながらこちらを向いた。
「外行く?」
「行かない」
俺はすぐにそう答える。
おそ松たちは満足げに笑った。
さて、今日は何をしよう?
(side_osomatsu)
さてさて、何から話そうか。
ここ数週間で随分と俺たちの環境が変わった。一遍に話すにしても順序良くしないと俺自身でさえ混乱してしまいそうだ。
まず名松が襲われた日、カラ松とチョロ松を除いた俺らは最初に汚物の下処理に勤しんだ。デカパンに頼んで「死んでも生き返る薬」だったり「どれだけ痛みを感じても死なない薬」みたいなものを貰おうと思っていたのだが、一松と十四松が「俺らそこらへんの匙加減全部分かってるから…管理は任せてくれて大丈夫だよ」と直々に言ってくれたので任せることにした。なぜ理解しているのかは聞かないでおいた。
言葉通り、あいつらは死なないが死にたいほどの苦痛を与えられるギリギリをいつも攻めて、俺たちにSTOPやGOサインを的確に出していった。お蔭で獲物を完全に仕留めることなく大分楽しめた。何より序盤では退場してもらっていたカラ松とチョロ松が楽しそうだった。それだけがお兄ちゃん心配だったんだよね〜。あ、ノコギリは最後の最後で使ったから特にこれと言って目立った出番はなかったかな。本当、最後までどうにも奴はうるさかった。トド松なんかイヤホンで音楽聞きながらやってたし。まあ俺ら人の言葉しか理解できないから無理はないか。意味の分からない人外の言語に耳を傾ける必要はない。
あの時トド松が言った「面白いもの」というのは一冊の日記帳だった。その中身はどうやら奴が書いたものだったようで、字を目で追いながら「日本語書けるんなら日本語喋れよな〜」と醜い音が出る肉塊を踏みつけて言った覚えがある。
そこには最初は愚痴ばかりだったが、途中からすべてある一人の少年のことについてしか書かれていなかった。名前こそ出ていなかったがどう考えても俺の可愛い可愛い弟、名松のことだった。メシアだのなんだのと勝手につらつら書き殴っていて、そこで初めてこいつが数年前名松を誘拐し暴行した犯人だと知ったときには身体が震えた。怒りでじゃない。もちろんそれもあったんだろうけど、殆どは狂喜と呼んでいい感情だった。
やっと見つけた。やっと、やっと見つけたんだ。十四松なんて狂喜のあまりに殆ど原型を留めていない右下半身にバットを何度も何度も叩きつけていたくらいだ。余談ではあるが、処理用に新しいバットを買ったらしい。流石にいつも使っている野球用の物を使用する気にはならなかったんだと。
まあ、後の話は本当に特別取り上げることがないので割愛する。よいこが聴くお話でもないしな。…え、他の奴らの反応はって?んー…別に、普通だったかな。あ、でも一個だけムカついたのが、カラ松とチョロ松に名松のことを任せた時! 一旦処理が終わった後に家に帰ったら妙に艶々したあいつらが和やかに名松を間に挟んで布団の中で談笑してたのはむちゃくちゃ腹立った。
「え、何?いれたの?」って聞くと、「いれてねえよ死ね」って枕投げられた。よかった、名松の処女は俺の物だからって懇々と言い聞かせていた(物理)のが功を成したわけだ。
結局その日は名松は一度も目覚めることなく、しかし顔色は段々と良い色に戻りながら次の日を迎えることになる。因みに就寝ポジションは俺とトド松の間になった。もう名松を端で寝かせることは一生ないだろう。
次の日起きたら隣に居た名松が居なくなっていた。大慌てで弟を踏んづけながら部屋から出ると、トイレの扉が若干開かれているのに気付いた。そっと開けるとそこには名松が胃酸を吐き出していた。真っ青な顔色で今にも死にそうな名松の背中を擦ろうと手を肩に置くとバシン、と弾かれてしまう。今まで名松に拒否されたことがなかった俺は恐らくアホ面を晒していただろう。
名松はガタガタと震え、真っ黒な瞳を涙で歪ませていた。
「ごめ、ごめんなさ…おれ、きたないから、ごめん、なさい…っ」
必死に謝罪と拒否の言葉を紡ぐ名松に俺はゆっくりと、怯えさせないように手を伸ばした。しかしそれでもだめだった。名松はパニックを起こして暴れ出したのだ。元々力が強い方ではなかったが、わき目もふらず自分の身体が傷つくのも厭わない名松に事態は思ったよりも深刻だということに今更気づいた。
一度十四松が絞め落として名松の意識をなくし、緊急兄弟会議が開かれた。特に時間がかかることなく満場一致で内容は決まる。
"名松の記憶をある程度ごっそり無くす"ことと、"二度と名松が一人で外に出られないようにする"こと。 前者はデカパンに頼んで薬をもらい、後者はこれまたデカパンに麻酔をしてもらい足の腱を切断した。デカパンがお願い をちゃんと聞いてくれる奴でよかった。それと、名松のカメラを粉々にすることも忘れなかった。アレがなければ名松は外に行きたがらないだろう。流石にメモリーカードごと壊すのは可哀想だったので、それを非難させた後本体だけを原型無く壊すだけにしておいた。
そこまで来て俺たちはあることを思いついたんだ。記憶障害を患った今の名松なら俺たちだけが記憶の上書きをし放題なのでは?と。
記憶を失うと言っても何も数年分も飛ぶ訳じゃないし、その薬を使った後は記憶と共に意識もあやふやで正常な判断が付きにくいらしいから。元来名松は俺たち兄弟の言う事を疑うことなんて絶対にしない性格だ。なら、もう二度と名松が傷つかないように今までの蓋をして隠してきた感情を使ってでも名松を守るべきだ。
経過は驚くほど上手くいった。
まず目覚めた記憶があやふやな名松に順番に唇にキスをしていけば、少しだけぼーっとした後戸惑ったように「…おはよう?」と言ったのだ。それから「いつも通り、着替えようか」と言って着替えを誰か一人が担当する。状況がよく理解できていない名松はそれでも抵抗はせずにされるがままだった。そのあと足が動かないことに珍しく焦りを現している名松を抱き上げて居間に行き朝食を食べさせる。もちろんこの時も名松の一切手足を動かせようとさせてはいけない。
名松が一人で何かをできるようにしてはいけない。囲わなくてはいけない。俺たちに依存させて、俺たちがいないと生きていけない、そんな身体に書き換えなくてはいけない。
努力が実って名松は今では俺たちには全く逆らわない、一人では何もできない「よいこ」になってくれた。
兄弟が六人もいるので相手が大変だし苦しそうだけど、最後は絶対気持ちよさそうにしてるからきっと大丈夫だろう。初めてもちゃんとお兄ちゃんが貰えたしね。
今まで散々お預け食らってたんだから、これくらいは別にいいだろ?
「よいこ」も「わるいこ」も揃ってちゃーんと"大団円"ってね。
※喫煙表現有り
※微グロ、嘔吐表現注意
どうやら今日は全国的に雨だったらしい。起きた時にはまだ太陽も上っておらずおまけに外は土砂降り、部屋の中は逢魔時のように薄暗かった。これは今日も外には出られないな、と思い隣のおそ松とトド松に布団を掛け直してから二度寝をした。
次に目を覚ますと辺りはやはり晴れの時より比べて薄暗かった。やっぱり雨の日は聴覚的には好きだけど、感覚的にはあまり好きではないな。動かなくなった足の古傷が痛むし、何より外に出られない。まあつい最近俺の長年の相棒だった一眼レフがぶっ壊れたので外に出られたとしても絵を描くことくらいしかすることはないのだが。……あれ、そう言えばなんでカメラ壊れたんだっけ?それになんで足が動かないのに外に出たがっているんだ?…と言うより、なんで足、動かなくなったんだっけ…? うーん…ここ最近記憶があやふやなんだよなぁ…元から記憶力クソ底辺だから別にいいんだけどさぁ、流石にこの辺は知ってなきゃ人として終わってる…。
「名松、おはよう」
「あ、チョロ松兄さん。おはよう」
耽っていた思考が急に戻される。上体だけを起こしてそちらを見るとチョロ松がいつものパーカーを着てにこやかに立っていた。手には俺の真新しい黒いパーカーがある。あ、今日はチョロ松なのか。
こちらに近づいてきたチョロ松が俺の頬に手をあて、顔を近づけてくる。俺は特に抵抗するでもなしにその行為を受け入れた。 ちゅ、と軽いリップ音の後に何事もなかったかのように俺の頭を撫でるチョロ松。
「じゃ、着替えようか。バンザイして」
「ん」
大人しく両腕を上にあげる。これが相手が十四松やおそ松だと要注意だ。腋に手を突っ込んでこそばしてくる。因みに一松相手だと二度寝か三度寝に引きずり込まれる。
上半身くらいは自分でできるんだけどなあ…と思いながらもそれを口にすることはない。なぜだかしてはいけない気がした。
チョロ松は機嫌良さそうに俺の着替えを済ませていく。
きっちりとズボンを履いて手櫛で髪の毛を整えてもらったら完全装備である。チョロ松は満足げに頷いて俺を抱き上げた。
「今日夕飯なに?」
「いやまだ朝だけど!?今から朝ごはん食べるんだけど!?」
百点満点のツッコミが帰ってきた。慎重に階段を下りながら激しいツッコミだなんて本当にチョロ松は器用だなぁ。効果音だけで笑うとチョロ松も仕方ないなあ、と言った風に呆れたように笑う。
居間に入ると兄弟は皆揃っていたようで口々におはよーと声を掛けてきた。どうやら俺が最後らしく、十四松とおそ松とカラ松は既に食べ終わっているようだった。
「おはよ〜名松」
「名松兄さんおはよーさん、しー、ごーろくのすけー!」
「おはよう」
チョロ松が一旦おそ松に俺を預け、俺とチョロ松の分の朝食を取りに行く。
その間に最初はおそ松、次にカラ松、その次が一松…と兄弟順に次々に朝の挨拶をしていく。チョロ松は一番最初に終わらせてある。…これよく考えたら間接ちゅーじゃん…クソ萌える…。
「今朝はチョロ松兄さん担当だったんでしょ?」
「うん」
「どうだった?シコ松にセクハラされなかった?」
「誰がシコ松だクソ長男」
「おごぉっ!?」
メコォ゛、とおそ松の頭が沈む。その衝撃がダイレクトに伝わってくる前に一松が俺をおそ松の腕からひょいと抱き上げた。ありがとうと言うと別に、とぼそっと告げられる。ツンデレカワイイデス。
チョロ松は両手にお盆を持ちながらおそ松を足蹴にしていた。器用すぎるぜうちの兄貴は…。
「来んの早すぎだろ!もっとキッチンでゆっくりしてろよ」
「知るか。一松、名松こっち頂戴」
「へいへい」
「お兄ちゃんのこと無視しないで!」
「あ、野球?」
「そー!」
「野球はいいんだけど、延長されると番組までずれるからそこなんとかなんないかな〜」
「まあ仕方ないさ」
賑やかな居間。
俺はチョロ松が口元まで運んでくる食事をもしゃもしゃ咀嚼しながら十四松がつけたテレビを見る。
偶にチョロ松に口元を拭われながら、トド松や十四松なんかと何気ないやり取りをして、ちょっかいを出してくるおそ松がチョロ松に殴られながら朝の時間は過ぎていく。
「今日はどうする?」
「どうしよっか」
ほかほかのたまごやきを食べながらチョロ松が今日の予定を聞いてくる。特にやりたいこともしなきゃならないこともない。なんたってニートだし。
うーん、と唸っているとおそ松が窓を開けて煙草に火をつけながらこちらを向いた。
「外行く?」
「行かない」
俺はすぐにそう答える。
おそ松たちは満足げに笑った。
さて、今日は何をしよう?
(side_osomatsu)
さてさて、何から話そうか。
ここ数週間で随分と俺たちの環境が変わった。一遍に話すにしても順序良くしないと俺自身でさえ混乱してしまいそうだ。
まず名松が襲われた日、カラ松とチョロ松を除いた俺らは最初に汚物の下処理に勤しんだ。デカパンに頼んで「死んでも生き返る薬」だったり「どれだけ痛みを感じても死なない薬」みたいなものを貰おうと思っていたのだが、一松と十四松が「俺らそこらへんの匙加減全部分かってるから…管理は任せてくれて大丈夫だよ」と直々に言ってくれたので任せることにした。なぜ理解しているのかは聞かないでおいた。
言葉通り、あいつらは死なないが死にたいほどの苦痛を与えられるギリギリをいつも攻めて、俺たちにSTOPやGOサインを的確に出していった。お蔭で獲物を完全に仕留めることなく大分楽しめた。何より序盤では退場してもらっていたカラ松とチョロ松が楽しそうだった。それだけがお兄ちゃん心配だったんだよね〜。あ、ノコギリは最後の最後で使ったから特にこれと言って目立った出番はなかったかな。本当、最後までどうにも奴はうるさかった。トド松なんかイヤホンで音楽聞きながらやってたし。まあ俺ら人の言葉しか理解できないから無理はないか。意味の分からない人外の言語に耳を傾ける必要はない。
あの時トド松が言った「面白いもの」というのは一冊の日記帳だった。その中身はどうやら奴が書いたものだったようで、字を目で追いながら「日本語書けるんなら日本語喋れよな〜」と醜い音が出る肉塊を踏みつけて言った覚えがある。
そこには最初は愚痴ばかりだったが、途中からすべてある一人の少年のことについてしか書かれていなかった。名前こそ出ていなかったがどう考えても俺の可愛い可愛い弟、名松のことだった。メシアだのなんだのと勝手につらつら書き殴っていて、そこで初めてこいつが数年前名松を誘拐し暴行した犯人だと知ったときには身体が震えた。怒りでじゃない。もちろんそれもあったんだろうけど、殆どは狂喜と呼んでいい感情だった。
やっと見つけた。やっと、やっと見つけたんだ。十四松なんて狂喜のあまりに殆ど原型を留めていない右下半身にバットを何度も何度も叩きつけていたくらいだ。余談ではあるが、処理用に新しいバットを買ったらしい。流石にいつも使っている野球用の物を使用する気にはならなかったんだと。
まあ、後の話は本当に特別取り上げることがないので割愛する。よいこが聴くお話でもないしな。…え、他の奴らの反応はって?んー…別に、普通だったかな。あ、でも一個だけムカついたのが、カラ松とチョロ松に名松のことを任せた時! 一旦処理が終わった後に家に帰ったら妙に艶々したあいつらが和やかに名松を間に挟んで布団の中で談笑してたのはむちゃくちゃ腹立った。
「え、何?いれたの?」って聞くと、「いれてねえよ死ね」って枕投げられた。よかった、名松の処女は俺の物だからって懇々と言い聞かせていた(物理)のが功を成したわけだ。
結局その日は名松は一度も目覚めることなく、しかし顔色は段々と良い色に戻りながら次の日を迎えることになる。因みに就寝ポジションは俺とトド松の間になった。もう名松を端で寝かせることは一生ないだろう。
次の日起きたら隣に居た名松が居なくなっていた。大慌てで弟を踏んづけながら部屋から出ると、トイレの扉が若干開かれているのに気付いた。そっと開けるとそこには名松が胃酸を吐き出していた。真っ青な顔色で今にも死にそうな名松の背中を擦ろうと手を肩に置くとバシン、と弾かれてしまう。今まで名松に拒否されたことがなかった俺は恐らくアホ面を晒していただろう。
名松はガタガタと震え、真っ黒な瞳を涙で歪ませていた。
「ごめ、ごめんなさ…おれ、きたないから、ごめん、なさい…っ」
必死に謝罪と拒否の言葉を紡ぐ名松に俺はゆっくりと、怯えさせないように手を伸ばした。しかしそれでもだめだった。名松はパニックを起こして暴れ出したのだ。元々力が強い方ではなかったが、わき目もふらず自分の身体が傷つくのも厭わない名松に事態は思ったよりも深刻だということに今更気づいた。
一度十四松が絞め落として名松の意識をなくし、緊急兄弟会議が開かれた。特に時間がかかることなく満場一致で内容は決まる。
"名松の記憶をある程度ごっそり無くす"ことと、"二度と名松が一人で外に出られないようにする"こと。 前者はデカパンに頼んで薬をもらい、後者はこれまたデカパンに麻酔をしてもらい足の腱を切断した。デカパンが
そこまで来て俺たちはあることを思いついたんだ。記憶障害を患った今の名松なら俺たちだけが記憶の上書きをし放題なのでは?と。
記憶を失うと言っても何も数年分も飛ぶ訳じゃないし、その薬を使った後は記憶と共に意識もあやふやで正常な判断が付きにくいらしいから。元来名松は俺たち兄弟の言う事を疑うことなんて絶対にしない性格だ。なら、もう二度と名松が傷つかないように今までの蓋をして隠してきた感情を使ってでも名松を守るべきだ。
経過は驚くほど上手くいった。
まず目覚めた記憶があやふやな名松に順番に唇にキスをしていけば、少しだけぼーっとした後戸惑ったように「…おはよう?」と言ったのだ。それから「いつも通り、着替えようか」と言って着替えを誰か一人が担当する。状況がよく理解できていない名松はそれでも抵抗はせずにされるがままだった。そのあと足が動かないことに珍しく焦りを現している名松を抱き上げて居間に行き朝食を食べさせる。もちろんこの時も名松の一切手足を動かせようとさせてはいけない。
名松が一人で何かをできるようにしてはいけない。囲わなくてはいけない。俺たちに依存させて、俺たちがいないと生きていけない、そんな身体に書き換えなくてはいけない。
努力が実って名松は今では俺たちには全く逆らわない、一人では何もできない「よいこ」になってくれた。
兄弟が六人もいるので相手が大変だし苦しそうだけど、最後は絶対気持ちよさそうにしてるからきっと大丈夫だろう。初めてもちゃんとお兄ちゃんが貰えたしね。
今まで散々お預け食らってたんだから、これくらいは別にいいだろ?
「よいこ」も「わるいこ」も揃ってちゃーんと"大団円"ってね。